名古屋大学法学部 編入体験記

はじめに

 皆様こんにちは。令和3年度名古屋大学法学部編入試験合格者のざぶとんです。この度、編入体験記を書くことにしました。編入を選択肢に入れている方のご参考になれば幸いです。
 なお、試験に合格したのは2年以上前のことなので、記憶が曖昧な部分もあります。予めご了承くださいませ。

1.編入を目指した理由

 僕が編入を目指した理由は、以下の5点に大別されます。

(1)学歴コンプレックス

 学歴コンプレックス解消のために編入を目指した、というのはあまり褒められたことではないでしょうか(笑)。編入を考える人の大半は学歴コンプを抱えているような気がします。ご多分に漏れず僕もそうでした。
僕は愛知県の出身で、地元の名古屋大学を目指していましたが、センター試験で思うように点が取れず(=実力不足で)、志望を変更し、金沢大学法学類を受験し、そこに入学しました。
 入学しても、名古屋大学への憧れは増すばかりでした。何とかならないかと色々探っていたところ、編入という制度を知りました。「英語と小論文と面接で名大を狙える、これならいけるかもしれない」と思いました。文章能力や、社会科がカバーする範囲には自信がありました。苦手な英語さえ何とかなれば、十分勝機があると感じたのです。しかも、落ちてもそのまま大学に残れる。浪人よりもはるかにローリスク・ハイリターンです。これは挑戦しない手はない、と思いました。

(2)政治理論への関心

 もちろん学問的な理由もありました。政治「理論」への関心です。
元居た大学には計量政治学系の教員や、政治思想史の教員はいましたが、政治理論を直接専門にした教員はいませんでした。
 ちょうど僕が関心を持った分野の第一人者が名古屋大学法学部のある教員でした。その先生の元で政治学を深く学びたいというのも、編入を目指した理由の一つでした。

(3)地元に帰りたかった

 見知らぬ地・金沢に一人放り込まれて、結構寂しい思いをしました。そういう一人暮らしの大学生が久々に実家に帰ると何だかほっとするものです。地元の友達も遊んでくれますしね。ここにずっと居られたらいいのに、と思いました。これもまた、編入への思いを強めました。
 こういう事情もあって、併願校はなかったです。

(4)コロナ禍

 新型コロナウイルスが流行しなければ、僕は編入しなかったかもしれません。2020年度の前期、講義はオンライン、サークルは活動休止で、かなり時間ができました。「この間に編入の勉強をしなさい!」と言われているように感じました。
 結果的に疫病の流行が僕の背中を押したのです(流行してよかったとは言っていません、念のため)。世の中何があるかわかりませんね。

2.勉強法

(1)英語

 大学1年生の前期に編入制度を知って、僕はひとまず英語の勉強を始めました。英語には苦手意識があり、真っ先に始めなければと思ったからです。
 高校時代に使っていた英単語帳を使って単語を覚えたり、英文和訳のテキストの問題を解いたりしました。
 直前期には過去問の英文を和訳しました。本番と同じように、紙の辞書を見ながら、時間制限をかけて演習しました。
 
※余談ですが、大学1年生で編入を迷っているという方は、英語の勉強から手を付けるのがいいと思います。編入しなくても英語は役に立ちますので…

(2)小論文

 小論文対策は、過去問を解き、N先生に添削していただくという形を取りました。
 後述の方法で過去問を手に入れ、ひたすら過去問を解きました。もちろん時間制限をかけました。普段はWordで答案作成をしていましたが、今思えば原稿用紙に書く練習もしておいた方がよかったように思います。
 N先生のアドバイスを読み、知識を増やしたり、加点ポイントを探ったりしました。

(3)知識面

 小論文を書くにも基礎知識がないとどうにもなりません。僕の場合は、以前ご紹介した本を使って知識をインプットしていました。
 人文社会系の新書や古典を読むことも多かったです。半分趣味でしたが…
 大学の講義を真面目に受けたのも良かったと思います。講義のおかげで法学や政治学の基礎知識は割と頭に入っていました。同じ学部への編入を目指す方は講義をきちんと受けておくのがいいと思います。

3.過去問入手法

 大学入試と異なり、編入試験の過去問はほとんど出回っていません。
 京都・北海道・神戸は、(著作権に引っかからない範囲で)HPに公開しています。これはかなりラッキーな例です。
 名大法学部編入試験の過去問を閲覧するには、大学まで出向かなければなりません。出向いたところで閲覧できるのみです。メモは取れますが、コピーは取れません。
 近場の学生なら通って過去問を解くこともできます(よく見る風景です)が、遠方の大学に通う学生はどうすべきか…?
 これはサロン生限定公開の情報にしてありますので、これ以上は言えないのですが、ヒントを出しておくと、最低限何をメモするのが効率的か? 何をメモしておけば後で過去問を再現できるか? を考えてメモを取るのがいいと思います。奥歯にものが挟まったような言いまわしですみません…

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手前味噌で恐縮ですが、政治学の過去問演習でお困りの方は、拙著『編入試験対策 政治学』をおすすめします。太字の部分がそのまま語句説明問題として出題されることも…?

4.自主ゼミについて

 春になると自主ゼミ設立の機運が高まりがちです。大抵は機能不全に…なんでもありません。
 かくいう僕は自主ゼミに所属していました。週1・オンラインで答案を見合うなどしていました。新聞記事の論評なんかもしたことがあります。秋口まで活動していました。
 自主ゼミは、いいペースメーカーになっていたと感じます。

5.試験内容変更

 試験直前期の9月下旬、突如として試験内容の変更が発表されました。英語・小論文の筆記試験は中止し、志望理由書と面接のみで選考するというのです。
 対策はしていたものの、まだ英語に苦手意識があった僕にとっては、千載一遇の好機が到来したように感じました。また、志望理由書の重要度が増すということで、より力を入れて執筆しようと考えました。

6.志望理由書

 志望理由書もN先生に見ていただきました。3枚分もあったので、一般的な志望理由に加えて、やや学問的な話もしました。文献からの引用も行ないました。
 N先生に最初に見ていただいたとき、「先方があなたを応援したくなるようなものを書いてください」とのご指摘をいただきました。指摘を受け、読み返してみると、自分の志望理由書には熱がないと感じました。そこで、なぜ先方が僕を採らないといけないのか? 政治学に関心を持った原体験は何か? など真剣に考え、書き直しました。
 再提出したところ、N先生から「格段によく仕上がっている」との講評をいただき、それをそのまま提出することにしました。
 志望理由書などを参考にした書類審査を無事突破し、僕は二次試験(面接)に進むことになりました。

7.面接

(1)面接対策

 面接対策もN先生にお願いしました。お世話になりっぱなしです。
 練習は、zoomで2回行いました。問答とフィードバックを繰り返し、様々な角度からの質問に的確に答えられるよう練習しました。練習あるのみです。
 この頃は、面接練習以外の時間も、「これ聞かれたらこう返そう」みたいなことをずっと考えていました。

(2)面接試験本番

 この時は、事前にzoomのネットワークテストが実施されました。面接・事前テストともzoomで行われました。一次試験合格者には当日・準備日のzoomのURLが事前に送付されました。なお、zoomに不備があった場合、Skypeを用いて面接を行うことになっていました。
 服装はスーツです。
 時間は、15〜30分が相場です。
僕はなぜか33分もかかりました。遊ばれてたのかな。
 面接官の配置はこんな感じでした。

  B C(主任)
 机机机机机机
A 机
 机

   カメラ

 それにしても緊張しました。緊張して何を話したかあまり覚えていません(直後にメモを取ったので、記録には残っています)。
 一回トンチンカンなことを言ってしまいましたが、それでも受かっています。あと、一回面接官が納得の表情を浮かべた時がありました。
 憶測ですが、ホームラン1発打つというよりは、堅実に何回かヒットを打つことができれば合格点に達するのかなと思います。

 面接は午前で終わったので、昼ご飯に家系ラーメンを食べに行きました。あの時のラーメンは美味しかったです。

8.合格

 合格発表までは、普通に過ごしていました。不合格でも大学生であることに変わりはないので、そこまでナーバスにはなりませんでした。
 合格発表当日。HPから合否を確認しました。自分の番号があった! 部屋で見ていましたが、思わず「おおっ!」と声が出たのを覚えています。
 そして、この大学も、金沢も、一人暮らしもあと半年か…としみじみ感慨に浸るのでした。

9.金沢との別れ

 編入にあたって、金沢を離れることになりました。来たときはあんなに嫌だった金沢も、いざ離れるとなると寂しかったです。
 編入することがなんとなく後ろめたく、周囲にはぎりぎりまで言えずにいました。読者のみなさんは早く言いましょう。結果が分かったら、こんな記事読んでないで早く伝えてください。僕は伝えるのが遅れて周囲にたいへん迷惑をかけてしまいました。
 金沢には何か大きな忘れ物をしてきてしまったような気がします。ただ、後悔はしていません。後悔するのは、金沢の人にも、名古屋の人にも失礼な話でしょうから。私にできるのは、名古屋大学への編入を良縁に転じていくことだけなのです。

10.名古屋大学での学び

(1)恩師との出会い

 当初、僕は政治学系のとあるゼミに所属していましたが、入ってから僕の興味関心とゼミのテーマがズレている気がして、半年で辞めてしまいました。そして、前期から聴講参加していた別のゼミに正式に所属することにしました。そちらのゼミの方が僕の興味関心に合致する内容を扱っていたためです。
 今のゼミの先生は、僕に「真に学問するとはどういうことか?」ということを教えてくださりました。本当に有難く思っています。今となっては、この先生に教わるために編入したのではないかと思うくらいです。

(2)単位について

 名古屋大学法学部には、キャップ制という制度があります。原則、一期で24単位までしか取得できないという制度です。
 これは編入生にとっては悩みの種でした。3年前期で単位を取りまくって、就活に備える、といったことができなくなるからです。
 僕自身も、随分キャップ制に悩まされましたが、毎期ほぼ限界まで単位を取得し、何とか卒業できることになりました。

11.就活

 僕は公務員志望でしたので、3年の6月から、勉強を始めました。
 単位取得と公務員試験対策の両立は、やや大変でしたが、全く不可能ではないと思います。勉強習慣が身についていたことは、むしろプラスに働きました。
 面接対策や自己分析が疎かになった点は反省しています。「編入の面接できたし、いけるやろ」と思っていたら酷い目に遭いました。編入での成功体験に自惚れないことが大事ですね。
 結果としては、ある所から内定をいただき、来年4月から公務員として働くことになりました。本当にホッとしています。

12.編入してどうだったか?

 結論から申し上げますと、僕は編入して良かったです。
 そう思うのは、第一には前述の恩師と出会うことができたからです。また、実家から通える大学に転じたことで、両親の経済的負担を軽くできたのもよかったと感じています。
 ただ、万人にとって編入が良い選択肢だとは思いません。
 同じ大学に4年間通い続けることで得られるものもあったように思います。編入するとは、4年間、一箇所で腰を据えて何かに取り組むという選択肢を捨てることでもあるように思います。もちろん、編入で得られるものも大きいのですが、編入で失うものもあるということは頭の片隅に留めておいていただければと思います。準備に時間もかかりますしね。
 大学を変わるというのは人生の一大事ですから、よくよく検討すべきだと思います。そのうえで、私の人生に編入が不可欠だ! と思ったならば、挑戦したらいいのかなと思います。

13.合格した方へ

 合格おめでとうございます! 編入までしばらく時間があると思います。ぜひ有意義に使ってください! ご自身の活力となることに時間をかけてください!
 あと、早く周りに伝えてくださいね!
 編入したら、また勉強の日々です。就活・公務員試験・大学院入試対策等もあります。まずはゆっくり休んで、次なる舞台での活動に備えてくださいね。

14.惜しくも結果が出なかった方へ

 まずはお疲れさまでした。SNSを見ていると気が滅入ると思いますので、スマホを置いて、どこかに出掛けてしまいましょう。その気力がなければ、布団の中でごろごろするのもいいですね。これ、二つとも僕が無い内定だったころにやっていたことです。ご参考まで。
 編入の勉強をここまで続けられるあなたは相当粘り強いはずです。この継続力は、必ずやどこかで活きてくることと思います。
 編入の結果が思うように出なくても、大学院入試や就活で結果を残した人はたくさんいらっしゃいます。また、在籍校で学問を愉しんでおられる方もたくさんいらっしゃいます。合格して浮かれてしまった僕より、その方々のほうが余程かっこよく見えます。大人に見えます。
 編入に挑んだ経験は、きっとあなたの糧になります。
 合格者の僕が何を言っても響かないかもしれませんが、これが僕なりの精一杯のエールです。

おわりに―編入は通過点

 ここ最近感じることは、編入は通過点に過ぎなかったということです。
 いまの僕の目標は、編入「の」人から編入「も」した人になることです。まだ社会になにも貢献できていませんから、早くお役に立てる人間になりたいなと思っています。

 最後になりますが、僕を教え導いてくださったすべての方々に心からの感謝を申し上げます。また、読者の皆様に素敵なご縁がありますよう、心より願っています。





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