雑音と同じ周波数

「姉ちゃんの声ね、雑音と同じ周波数なんだって」

なんてことのない、帰省中のJRの中、同伴していた姉がなんの突拍子もなく言ってきた。


「なんかね、話してるといきなり声が消えるんだって。相手からしてみると口をパクパクとしているようにしか見えないの」

「なにそれ、そんなことあるのかよ」


姉の発言に思わず笑う。

なかなか想像しにくいが、なんて滑稽なのだろうか。

そんな姉の姿を想像するだけで笑ってしまうのだが。


姉の話にニヤついていたが、私の胸内を察するかのごとく姉が続けた。


「言っておくけど、奈都も同じだからね?」

「マジか」


どうやら滑稽なのは彼女だけではなかったらしい。


――これから書いていくのは、そんな雑音に紛れて消えるくらいどうでもいい話。

これまで経験した悲しかったこと、楽しかったこと、不思議だったこと、忘れたくないこと……。

誰の記憶にも残らないような、私の記録。


――雑音と同じ周波数。

2020.10.2〜


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