見出し画像

第1回鯛巻めきめ記念杯結果発表

1.初めに

 2017年8月19日から年9月18日まで、一ヶ月の期間をもって作品が募集されたこの第1回鯛巻めきめ記念杯ですが、なんとも嬉しいことに5点もの魂溢れる熱い作品が集まっており、主催者である私、大変うれしく思っております! ありがとうございます。

 本当にどの作品も半端な気持ちで書かれていないことがとてもよく伝わってくる文章で、この賞を開催して間違いなかった、と心から思っております。

 優勝作品の発表は最後のセクションで行われます。まずは各作品への講評をどうぞ。


2.講評

 講評の順番は応募順です。なお、作者名についてはいずれも敬称略とさせていただいております。

(1)『strange-orange』(作者:山盛り怪文書)

 一発目の応募作品がこれであったというだけで、マジで相当に救われました。ありがとうございます。「ポストパンク的小説」などというこちらのわけのわからない募集要綱を奇跡的にもよく理解していただいた、肉体的なリズム感に溢れる文体が特徴の小説です。今回の応募作の中ではおれが思うポストパンク度ナンバーワンです。

 """"クソ""""ひどい田舎に住む〈おれ〉がある日出会うエロティックな男、彼と出会うまで、そして彼が失われてから、それを描いたお話なわけですが、畳み掛けるような勢いでブチ込まれるバロウズめいた不条理「田舎」の描写がたまりません。好き。相当にドラッギーな感じがします。ていうか↓の解説を読むとこれおおむねノンフィクションだって? まじ?

 ウッソでしょー!! え? マジ?


(2)クローサー(作者:王見 実 真実)

 これはあのー、あれなんですよ、どう考えても登場人物の一人である蔓押 寧(づるおし ねい)のモデルが私なんですよ。参っちゃったなあ。あと郵便ポストをパンクさせるというネタを本当にやったのも参った。本当にやるやつがいるとは思わなかった。

 ということでお話のほうなんですが、ポスト・パンクだけを流す音楽バー『クローサー』(恐らく店名の元ネタはJoy Divisionのアルバムから)を中心に、社会からはみ出したちょっと変な奴らが音楽について語り合ったり、ドラッグをキメたり、社会への怒りをブチ撒けたり自己表現したりと、そういう感じなんですが、とにかくヤバい系の人間の描写が生々しくてヤバい。多分大体実体験です。これもある意味ノンフィクションなのでは?


(3)ウィキ・ザ・デスペディア(作者:マツモトキヨシ)

 これです! ニンジャソンやオリジナルSF小説「われ思うゆえに猫である」でも活躍されているマツモトキヨシさんからの応募なんですが、あの流れるような文体でニューウェーブSFキメてくれました。

 脳幹HDDにウィキペディアの全知識を格納した男が、秘密組織から逃げながらも狂信的ウィキペディア荒らしを追い込みに行くというSFです。猫SFでも思ったんですけど本当こういうのがうまいですよね……いやー参った。うめえ。


(4)真・電撃結婚 地球廻しノ段!!(作者:SS)

 笑いました。ひどい。ルーディ・ラッカー的パンクいSFを講談調の文体でブッ込んできました。パチンコ玉のシーンは本当に勘弁して欲しい。超電磁セックスアポカリプスSFです。

 上のリンクからチラッと見える文章からいきなり膣痙攣ですからね……。膣痙攣といえばSFですよ! いや本当割とマジで! 結構あるんですって!

 型破りさで言えば間違いなくナンバーワンです。ブッ飛んでます。


(5)朱に交わるほど邪な(作者:薮睨)

 ということで最後に応募されたのがこちらの作品なわけですが、いやーーーーこれは参った。すげえ。二大国間での戦争が集結した後の、目的を失ってしまった自律兵器についてのお話なわけなんですが、もうガッツリSFです。ハードSFしてます。

 フレシェットガンとかのガジェットが説明無しにポンポン出てくるのもいいですね! 大変好みです! 一貫した乾いた文体でグレゴリイ・ベンフォードの『大いなる天井の河』めいた乾いた世界を描きつつ締めるところはウェットに締めていく、というスタイルも素晴らしい。かなりの技術を感じます!



3.優勝作品は?

 選考についてはかなり悩みました。ある作品が一番すぐれている、と思ってみても、視点を変えてみれば別の作品の輝く部分が見えてくる、というわけで、実際のところかなり難航したことは隠しようもありません。ですが決めるところは決めねばなりません。(全員一等賞というわけには(経済的にも)いきませんので)

 ということで栄えある第1回鯛巻めきめ杯の優勝作品は……

朱に交わるほど邪な(作者:藪睨)

に決定しました! おめでとうございます!

 決め手はやはり総合的な出来の良さでしょうか。文体、構成力、オチなど全てが高いレベルで纏められていました。これほどツボに来るレベルのSFを読むことはなかなか出来ません。

 ちなみにこれおそらくどなたかの匿名アカウントかと思うんですが、もし差し支えなければ本体をお教えいただけると……カクヨムとかあれば是非他の作品も読ませていただきたいですね!

4.最後に

 本当に皆さん面白い作品をありがとうございました。企画を始めた当初は3点届いてそのうち1点でも当たりがあれば御の字かな? と思っていたんですが、蓋を開けてみれば5点中5点が大当たりという状況で、どの作品もとても楽しく読ませて貰いました。「おれが読みたい小説を読むおれのためのコンテスト」間違いなく大成功、という結果にでございます。

 なお、特に主催者の経済状況に大きな変動がなければ、12月頃に第2回が開催される予定です。詳細は恐らく11月頃に、ということで、応募作などを読みながら、またしばらくお待ちいただければと思います。

 それでは!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?