むかしばなし『ペンタブのペンの替え芯の替わりに素麺を突っ込んで破壊した女』
👦<ママー、寝る前のおはなししてー!
👩<あらあら、そうねぇ……じゃあ、今日は……
『ペンタブのペンの替え芯の替わりに素麺を突っ込んで破壊した女』
のおはなしをしましょうね……
👦<わーい!きゃっきゃっ!
👩<ほらほら、良い子にして聞くのよ……
むかしむかし、あるところに……
遊び人の豆太郎という無職がいました。
豆太郎は毎日絵を描いて、たまにその絵でお金をもらいながら暮らしていました。
遊び人の豆太郎は毎日へらへら遊び回っていましたが、ふと、自分のスケジュールが無職にあるまじきヤバさになっていることに気づきました。
そう、豆太郎はただの自称無職で、本当はフリーランスの絵描きなのです。
納期ヤバ男と化した豆太郎は、ヤバいヤバいと泣き叫びながらますますたくさん絵を描きました。
「ガリッ。」
突然、ペンタブのペンから何かに引っかかったような音がしました。
それは削れすぎた芯がタブレットを引っ掻く音でした。
🤪「ああ、そういえばもう長年芯を替えていなかった。さすがに使いすぎて限界みたいだ」
そう言って豆太郎はペン先の芯を替えようとしますが、替えの芯がありません。
wacomの箱をいくら探しても、替えの芯は見つかりませんでした。
🤪「まずいなあ。納期がヤバいんだけどなあ」
焦った豆太郎は、家にあるもので芯の代わりになりそうな物を探します。
だけどペン先は思ったよりも細く、なかなかちょうどいい棒は見つかりません。
🤪「困ったなあ困ったなあ。」
すっかり冷静さを失った豆太郎の目に、いつ買ったのかももはや分からない(少なくとも2年以上前)素麺が飛び込んできました。
🤪「これだ。これしかない。かつてのインターネットではパスタを突っ込んでカビさせた者がいたとも聞くが、まあ急場を凌ぐくらいならセーフだろう」
茹でる前の素麺は、まるでそれが正しい使い方とでもいうようにペン先にぴったりと収まりました。筆圧も正しく感知しています。
🤪「これで仕事が出来るぜ!!!素麺最強✊‼️素麺最強✊‼️」
すっかり機嫌を良くした豆太郎は、肝心の純正品の替え芯の注文を忘れたまま、三日三晩素麺で絵を描き続けました……。
豆太郎が素麺のことをほぼ忘れかけていたその時、事件が起こりました。
「ポキッ。」
🤪「えっ……?」
素麺の芯は、豆太郎のバカ筆圧に何日も耐えられるはずがなく、不幸にもペンの中で折れてしまいました。
🤪「おいおいおい、中に素麺が取り残されてるじゃねえか。どうすんだこれ」
どうしようもありません。
🤪「うーん、針で適当に引っ掛けたらなんとか出てきてくれないだろうか」
手先が不器用な豆太郎が格闘すること約30分。なんとかペンの中に取り残された素麺を取り出すことが出来ました。
🤪「マジで最悪だよ。でも素麺しかないしもう一度次の素麺を芯にするしかねえんだよな」
愚かな豆太郎は、再び素麺をペン先に突っ込みます。
「メキメキメキッ」
素麺は、劣化していたのか最初よりも早く、そしてどうしようもないくらい折れまくりました。それはまるで、ズボラで愚かな豆太郎を嘲笑うかのように……。
🤪「おいおいおいおい。」
いくら針でつついても、振ってみても、爪楊枝を削って突っ込んでみたりしても、素麺はもう出てきません。ペンを分解しようとしてみても、上手くいくことはありませんでした。
素麺が中に取り残されてしまった影響で、筆圧感知が完全に壊れてしまいました。もしかしたら、素麺を取り出そうとペン先の中を雑にガチャガチャやったのが悪かったのかもしれません。
とにかく、ペンタブは壊れ、もう元には戻りません。
豆太郎は、泣きながらwacomショップで新しいペンを注文しました。届くまでには一週間ほどかかりそうです。ああ、あらかじめ純正品の替え芯をストックしていれば……。
豆太郎は、己の無力さと、無能さと、あとWacomの公式ショップで注文するよりヨドバシで買った方が早いことに後から気付いた愚かさで、絶望してしまいました。
その後、豆太郎がクッキークリッカー以外に何をしているのか、何処へ行ったのかは、誰にも、分かりません……
👩<……おしまい。
👦<豆太郎ってばかだねー。ペンタブのペン先に素麺を入れちゃダメだって、ぼくでも分かるのに!
👩<そうね、坊やはこんな風にはならないでね。
👦<うん!遊び人で無職でスケジュール管理能力ゼロでペン先に素麺を突っ込んで破壊するような大人にはぼくはならないよ!
👩<そうね、坊やは……こんな風には……なるなよ……俺みたいに、なるなよ
👦<ママ、ママ……?え、泣いとんの……
ペンタブのペンの替え芯が手元にない時は慌てずお店に行くなり注文して届くのを待って、焦って素麺を入れるのはやめよう!おじさんとの約束だよ!!
お前は、俺みたいには、なるなよ