ちょっと違う「詐欺事件」

●「ロマンス詐欺グループ」の一員になった女性警官が逮捕されたというニュースがありました。佐賀県警捜査2課に詐欺容疑で逮捕されたこの女は大阪府警西成署刑事課薬物対策係の25歳の巡査です。
彼女を含む一味は今年7月24日~8月7日、SNSでカナダ人男性医師を装い、佐賀県小城市に住む50代女性に対し「イエメンの病院で患者の世話をしているが、母が入院したため航空券が必要です」「自分の銀行口座にうまくアクセスできない」「イエメンからカナダまでの航空券は日本円で20万円です」などのウソのメッセージを送り20万円を銀行口座に振り込ませました。さらに8月下旬~9月7日、今度は埼玉県川越市の60代女性に対し日本人男性ファッションモデルに成りすまし、「タイにいて個人的なコンテストで優勝して賞金5億円を手に入れた」「事務所に見つからないようにあなたの家に送りたい」「一時的に運送会社に配送料を払って欲しい」と虚偽のDMを送信し70万円を銀行口座に振り込ませていました。
その後8月21日になり「SNSで知り合ったカナダ人がトルコ警察に拘束された。解放するためにお金が必要だが、どうすればいいですか」と佐賀の女性から県警に相談があり事件が発覚しましたが、自分が騙されているとも知らず実際には存在しないカナダ人男性医師の心配をする女性が哀れでなりません。
警察が調べると佐賀県の女性は20万円を含む約150万円、埼玉県の女性は70万円を含む約1140万円をこのロマンス詐欺グループにだまし取られていたことがわかりました。被害者は50代、60代と一般的には分別のある年齢とされますが、まさに「恋は盲目」とはよくいったものでいちど愛してしまったことによりもう周りは一切見えなくなってしまったのでしょう。それだけに純真な「乙女心」に付け込む卑劣な犯罪は許すことが出来ません。
この手の詐欺事件は、ターゲット探し係、連絡係、現金引き出し係を分業にした上、架空口座でお金の流れをわからなくするなど周到な準備の上で行われますので、被害者が詐欺に気付いてもなかなか犯人を特定できません。ところが今回はいとも簡単に実行犯の女性巡査に辿り着きました。なぜなら、被害女性たちが振り込んだ銀行の口座名義が、なんとこの巡査本人のものだったからです。さらに警察が現金を引き出した日時を調べ、ATMのそばに設置されている防犯カメラの映像を確認すると、現金を引き出す女性巡査の姿がバッチリ写っていたのですからもう逃げられません。
現役警察官が詐欺グループの一員だったことにも驚きですが、事件捜査のイロハを知る立場にありながら、自分名義の口座を使うなんて「犯人は私よ」と自己紹介しているのも同じで間抜けなことこの上ありません。詐欺事件で騙される方より騙す方が“バカ”だったという非常に珍しい事件でした。

百田尚樹のニュースに一言 令和5年12月22日号より

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