メキシコペソ 7月3週目 トランプショック

今週は指標更新もなく、ただただトランプ元大統領に振り回された一週間でした。

今週のトランプ事件はショックでしたが、まさかこの時期にペソ安最大事案発生と思いました。正直まだどっちに転ぶかわからないので静観するしかないと思っています。

トランプ陣営のバンス氏、メキシコの麻薬マフィアには強行的で米軍を出しても根こそぎ始末すべきと主張しているようです。個人的には市民へ損害があっても、放置して最終的な被害が多くなるよりもいいのかもしれませが、メキシコの貧困を解消しないと「(浜の真砂は尽きるとも、)世に盗人の種は尽きまじ」の結論で終わると思います。

また為替介入

またドル円も2回目の為替介入があったかもしれません。ただ、この程度の為替介入では流れを変えるのは難しい気がします。

財務省の今年上半期の貿易統計を見てみると総額では輸出51.5兆円、輸入54.8兆円の3.2兆円赤字、対米だけ見ると輸出が10.4兆円、輸入が6.5兆円で3.9兆円の黒字になっていますが、ここに反映されないGAFAMなどのサービス収支を追記すれば完全に赤字。観光収入は黒字でも、それ以上にキャピタルフライトで円がドルに流れており、実需レベルで円高へのパラダイムシフトはほど遠いと思います。個人的にドル円の適正と言われれば商品価格を考えて1ドル=80円ぐらい、今の150円以上は異常と思っていますが、本当の適正値って想像つきません。

トランプ元大統領ほぼ確実

今週のショッキングな事件で99%トランプ大統領が決まったように思います。民主党はバイデン大統領を下ろして、カマラ副大統領かミシェルオバマ氏を候補者にすげ替えようとしているようですが、彼女たちはリベラルすぎて無理では?個人的に万一勝てるとすれば「第3の候補者」ケネディ議員を民主党統一候補者にするか、飛び道具ならプロレスラーのロック(ドゥエインジョンソン)ぐらいな気がします。

トランプ元大統領は演説の一環としてメキシコとのニアショアリングの脅威を打ち出し、「彼らが私たちに製品を売りたいなら、米国で製造しなければならないだろう」「中国とメキシコは我が国の自動車産業の68%を奪ったが、我々はそれを取り戻すつもりだ」と発言したようです。
また、すべての輸入品に一律10%の関税を課すと表明しているため、輸出の80%がアメリカ向けであることを考えるとメキシコ経済の基盤は崩れるかもしれません。

アメリカの実際がわからないので個人的な想像ですが、大学進学率75%程度で、高い学費を出して奨学金の返済が残っている人は、低賃金ブルーワーカーなど見向きもせず求人と求職のミスマッチ、一部業種での人手不足、人材過多で何らかの修正が必要になると思います。また、自国生産するにしても、工賃が高くなり商品インフレを起こすだけなので、北米の安全保障とリンクした現実的政策をとらざるを得ないので結局メキシコとのニアショアリングは続くだろうと考えています。

移民排斥しても製造業のブルーワーカーは必要です。アメリカの消費量を製造するだけの労働者の募集はアメリカ国民だけで足りるとは思えないので、シンガポール型の厳格な期限付き、ある程度の賃金保障の外国人雇用を選択するしかないと思います。そう考えるとメキシコの壁といいながらも合法のメキシコ人雇用と送金は現状維持か微増と思います。

GDP下方修正

IMFは今年のメキシコ経済成長率を2.4%から2.25%へ下方修正、フィッチは投資格付けをBBB- と適格以上との判定しながらも、経済成長率を2.2%から2%と下方修正しました。今週のペソ安はトランプ効果もあると思いますが、この辺りにも敏感になっているかもしれません。またフィッチは、世界的サプライチェーンへの参加、製造能力を多様化する大きな機会とポジティブな点と、アメリカがUSMCA関係なくメキシコに10%関税かけた場合におこる貿易摩擦のネガティブな点を指摘していました。

資本家的には、経済原則に対して早めの利下げを期待していると思います。ノンコア上昇は庶民生活を直撃していますが、コアインフレは落ち着いてきているので政策金利11%から利下げするのは自然かもしれません。ただなかなか決断できないとも思います。

トピック

通貨:
先週17.62から週末は18.06
トランプショックによるリスク回避とトランプ政権への不安からのペソ売り

年末ドルペソ予想
財務省・・・17.80
メキシコ中銀・・・18.53
シティ・・・18.80

メキシコ株:
週末株価は54.4から53.2

メキシコ中銀:
現在政策金利11.00%:次回の政策金利は8月8日
6月28日の政策金利会合は4:1で金利据置

メキシコ中銀:次回から利下げ議論を前向きに行う
ヒース副総裁:利下げ前に良質のインフレデータが必要
AMLO:安易な利下げには反対
トランプ:選挙前のFRB利下げは反対

メキシコ2024年末経済成長率予想
3.0%・・・メキシコ財務省
2.5%・・・OECD
2.3%・・・メキシコ中銀、ムーディーズ、世界銀行
2.25%・・・IMF
1.9%・・・シティ
1.8%・・・モルガン、BoA

金融:

消費者物価指数:
6月の年間インフレ率は4.98%、前月4.69%より0.29悪化
6月の年間コアインフレ率は4.13%、前月4.21%より0.08改善

6月のノンコアインフレ率は7.67%と前月6.19%から1.5%上昇
農産物価格は年間10.36%、野菜果物価格は年間19.73%の上昇で生活環境は悪化

貿易収支・経常収支:
2024年度貿易収支は累計44.6億ドルの赤字
貿易収支 5月:19.9億ドル、4月:-37.5億ドル、3月:21.0億ドル
輸入額 5月:536.8億ドル、4月:550.7億ドル、3月:486.5億ドル
輸出額 5月:556.7億ドル、4月:513.1億ドル、3月:507.5億ドル

BBVAは2024年の送金総額を前年633億ドル割れすると予想
5月送金額は56.2億ドル 送金額は鈍化
1~5月累計は251.3億ドル 前年同期246.6億ドルと比べ1.9%増加

小売り売上:
ANTAD:6月までの累計小売り売上7674億ペソ、前年同期比6.4%増加
INEGI:4月の小売り売上は前月比0.5%増加
6月の消費者信頼感指数は47.5で前月より0.6改善

雇用・失業率:
INEGI:5月失業率は2.6%

製造業・自動車:
6月の輸出台数は29.6万台で年間累積172.2万、前年同期比10.7%増加
6月の生産台数は34.4万台で年間累積199.6万台、前年同期比5.2%増加
自動車産業は2023年の生産台数370万台から2024年400万(韓国、ドイツレベル)以上と予測、そのうち輸出は300~350万台を想定

6月の総固定投資は年次18.1%で順調
6月の景況感は前年同月比53.0%で好況を維持

食品:
6月初旬、今年3度目の熱波により農作物不作
世界的な小麦価格下落はソノラの農家を直撃
清涼飲料水のアルカの四半期益が15%、フェムサが13%増益

エネルギー:

メキシコバスケットは76.61から76.45

USMCA:
エネルギー国有化は引き続き論点
中国、ロシア、イランで鋳造された鉄鋼アルミはUSMCA適応除外、アメリカ側の関税は最大25%
メキシコは2026年USMCA条項見直しまで鉄鋼など544品目を最高50%まで関税引上げ

USMCA以外:

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