メキシコペソ 6月3週目 為替介入も辞さず


ペソホルダーにとって今チャートを見るのは非常に苦痛だと思います。今のペソはテクニカル無視、完全に政治的発言に左右される状況で博打になっています。今週のメキシコ中銀の介入発言で底を打った気もしますが、まだまだ新大統領の不用意な発言で一気に崩れる可能性もあります。個人的には買い増しする気満々なのですが、もうしばらく政治的なことに注意していきたいと思っています。

ただ、メキシコ大統領選でこれならトランプ大統領誕生後はもっと阿鼻叫喚な気がしてなりません。今回買い増したとしても、米国大統領選前には一旦清算するつもりです。

為替介入準備

今週も激しい為替相場ですが、バンコ・ベースは司法改革が極度の社会不安を引き起こすこととなれば1ドル=20ペソの可能性もあると警告しましたが、他の記事を見た限りではこれが最悪のパターンでした。

ドルペソが19目前のタイミングでメキシコ中銀セハ総裁は「市場のボラティリティが高ければ、メキシコ中銀は介入の可能性もある」(Banxico podría intervenir en el mercado ante alta volatilidad)と発言しました。介入資金については為替ヘッジ資金の300億ドル、必要なら外貨準備高の2200億ドルを割り当てること、目標はドルペソ17台安定とのことです。

表向きはペソ安によるインフレ加速懸念ですが、本音は企業公共団体のドル建て債務返済の救済と思われます。

介入の件に関しては、利下げハト派のセハ総裁とメヒア副総裁が介入も視野に入れていると発言しているのとは反対にヒース副総裁は現時点ではペソ安が即インフレに影響しないと介入を否定しています。経済界視線か庶民視線かの立場の違いが分かり面白く思います。

個人的にはセハ総裁の今回の非常に素早い対応、決断は秀逸で、メキシコ経済が沈静化することを願うばかりです。

メキシコ経済のファンダメンタル

現在のメキシコ経済については、
・海外直接投資が2024年1~4月で127件で投資予定額は391億ドルと好調を維持
・中国に代わりアメリカの工場として対米輸出額トップを維持
・自動車生産台数は5月まで162万台、ペース的に考えれば年内400万台ペース、韓国ドイツを抜いて、中国、アメリカ、日本、インドの次の5番目も射程圏内
・GDPは2.02兆ドルで為替次第で10位カナダ2.24兆ドルを追い越すわずかな可能性あり

という明るい話題も多く見受けられます、一部過激な意見もありますが、個人的にはAMLOの憲法改正から内乱を誘発まで飛躍するとは思えません。私は日本から経済ニュースを見ているだけでそう思うのかもしれませんが、犯罪動画だけを見てメキシコのやばさを語るより健全だと思っています。

米国CPI低下も利下げは年内1回

5月の米国CPIは3.3%と予想より低かったものの、年内利下げは1回のみとの見方が強くなりました。インフレを牽引しているのが住宅4.6%、サービス3.8%なのですが、食料品は2.1%と低めでした。メキシコが熱波の影響で野菜果物、砂糖が値上がりしてインフレ再燃しているので、アメリカも影響受けるのかどうかが非常に気になっています。

年内アメリカの利下げが難しいことと、日本が利上げしても為替的には軽微な影響しかないことが確実になってきたので、トランプ大統領前までは、いろんな意味でやりやすい環境になった気がしています。

トピック

通貨:
先週18.41から週末は18.46
ドルペソ19目前でメキシコ中銀の介入準備発言。しばらくは高ボラティリティ相場

年末ドルペソ予想
財務省・・・17.80
メキシコ中銀・・・18.53
シティ・・・18.80

メキシコ株:
週末株価は54.4から52.2
大統領選挙後市場は混乱中

メキシコ中銀:
現在政策金利11.00%:次回の政策金利は6月28日
5月10日の政策金利会合は全会一致で金利据置
ペソ暴落で次回政策金利会合で利下げ据置濃厚

バークレイズ:年内利下げの可能性なし
バノルテ:年末政策金利10.00%から10.50%へと下方修正
モルガン:ペソ暴落は過剰反応、中長期的投資にはかえって魅力的

セハ総裁:為替の動向次第では為替ヘッジ資金300億ドルの介入も検討
メヒア副総裁:これ以上のペソ大幅下落には為替介入もやむなし
ヒース副総裁:ペソ安がインフレへの影響は少なく現状は懸念する必要なし

INEGI:2024年4月の経済成長率は0.3%増、年率で1.6%

メキシコ2024年末経済成長率予想
3.0%・・・メキシコ財務省
2.5%・・・OECD、BBVA
2.4%・・・IMF
2.3%・・・メキシコ中銀、ムーディーズ
1.9%・・・シティ

金融:
第一四半期の総利益は693億ペソで4年ぶりで前年同期比より減少
4月の消費者信用残高は1兆5,040億ペソ、前年同期と比べて13.9%増加

消費者物価指数:
5月の年間インフレ率は4.69%、前月4.65%より0.04悪化
5月の年間コアインフレ率は4.21%、前月4.37%より0.16改善
3度目の熱波で野菜果物価格が懸念

貿易収支・経常収支:
2024年度貿易収支は累計64.5億ドルの赤字
貿易収支 4月:-37.5億ドル、3月:21.0億ドル、2月:-5.8億ドル
輸入額 4月:550.7億ドル、3月:486.5億ドル、2月:513.1億ドル
輸出額 4月:513.1億ドル、3月:507.5億ドル、2月:507.2億ドル

4月送金額は54.2億ドル ドルベースでは47ヶ月連続増加
1~4月累計は195.5億ドル 前年同期189.8億ドルと比べ1%増加

小売り売上:
ANTAD:3月までの累計小売り売上3663億ペソ、前年同期比6.9%増加
BBVA:消費は2ヶ月減退後、5月は2.7%増加
5月の消費者信頼感指数は46.7で前月より0.5悪化

雇用・失業率:
INEGI:4月失業率は2.6%
INEGI:第1四半期の失業率は過去最低更新の2.5%
IMSS:メキシコの平均賃金は日給573.4ペソ

製造業・自動車:
5月の輸出台数は31.1万台で年間累積142.6万台で前年同期比12.3%増加
5月の生産台数は36.6万台で年間累積165.2万台で前年同期比5.5%増加
自動車産業は2023年の生産台数370万台から2024年400万(韓国、ドイツレベル)以上と予測、そのうち輸出は300~350万台を想定

4月の景況感は前年同月比54.2%で好況を維持

食品:
6月初旬、今年3度目の熱波により農作物不作懸念
第1四半期の農業輸出は193.8億ドルで史上最高
酒類(ビール、テキーラなど)が輸出を牽引
同じく輸入は154.5億ドルで前年同期比3.8%増加

エネルギー:

メキシコバスケットは70.46から73.35
ソノラの天然ガスをアジアへ売り込み

USMCA:
エネルギー国有化は引き続き論点
米国遺伝子組換えトウモロコシの使用を禁止するメキシコを提訴

USMCA以外:

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