メキシコペソ 12月5週目 来年ペソは上がるのか?

今週はクリスマスと年末でほぼ休み状態です。

メキシコ的には税収が過去最大を更新中と年間と通して失業率3%以下、BOLSA指標が年初50からシリコンバレー銀行のとばっちり、空港株危機など紆余曲折があったものの年末57と18%増加、ドルペソは19.4から17.0割れと13%増加と経済的にはいい1年だったと思います。治安犯罪問題がなければ、間違いなく来年も進撃を維持するのでしょう。

来年は、メキシコ、アメリカも大統領選挙で経済は荒れまくると言われています。昔みたいな危機の円買いがあれば安全確実にコバンザメするのですが、今は期待できないので残念です。日本的には政治が壊滅的、(サメの脳といわれた)森政権以来の低空飛行で、万一自民党が割れたらトランプショック以上になるかもしれません。来年の日本は政策面から内需が期待薄で、一部輸出向け製造業とインバウンドのみが好調なのかもと想像しています。

ペソは上がる?(あくまで個人的意見です)

※便宜上1ドル=18ペソ、1ドル=140円と換算します。

USMCA経済共同化による賃金格差の是正からドルに対してペソは上がると思っています。
両国とも貧富の差が激しいので、庶民の中央値的なサンプルとして非正規最低賃金と自動車工場の平均賃金を比較します。

最低賃金

現在メキシコの最低賃金は一番低い州の日給で207ペソ(≒時給1.5ドル)、一番高いアメリカ隣接州でも日給320ペソ(≒時給2.2ドル)です。もし、アメリカの日雇い農場収穫の時給が最低20ドル程度なので10倍以上の差があります。
メキシコ国民なら手続きをとれば合法的に就労でき、言葉もカリフォルニア、テキサス、フロリダなどのメキシコ近接州は普通にスペイン語が通じるので、出稼ぎのハードルは低いと思います。ちなみにアメリカで労働するメキシコ人の平均年収は4万ドルぐらいという統計もありました。
最近のInstituto Mexicano para la Competitividadの統計によれば、15~24歳の45%が月給5200ペソ(=290ドル)、アメリカ農場15時間分とのこと。
経営者目線ではメキシコは人件費が安いのですが、労働者目線では近くで桁違いに稼げる場所があれば自国で働きたいとは思わないでしょう。
そういうことで、インフレを伴うサービス価格上昇よりは通貨上昇で、格差は是正されていくことと想像しています。

自動車工場の平均賃金

次は最低賃金でなく、平均的な労働者の賃金です。同一労働で同一品質、販売価格も同等の自動車が一番わかりやすいので調べてみました。
2022年のGMのメキシコ工場の平均賃金は時給3.25ドル、一方でアメリカは時給18~32ドルと最低を比べても5倍ぐらいの差があります。

ドルペソの空想

今年1ドル17ペソを割って5年来の高値更新したぐらいから、2014年来の1ドル12ペソラインを目指すと言われていました。正直、うさんくさいと思っていましたが、アメリカとの格差是正を考えれば可能性はないとは言えません。
例えば、メキシコの最低賃金を年間12%、ドルペソが1.00上がっていくとすればドル建て最低賃金は下図のようになります。

アメリカの賃金上昇は無視ししていますが、それでも5倍以上の差です。
メキシコは低失業率で人手不足ですが、それなりの賃金にならないと出稼ぎに行くばかりで自国には移民すら集まらないと思います。

ペソ円はわかりません

ペソが上がるというのはドルに対してであり、円のことはわかりません。
円安の原因は日米金利差と言われることが多いですが、この一般論には疑問を感じています。個人的には、貿易黒字+インバウンドが絶対的な黒字にならないので、実需のドル売り円買いが進むとは思えません。投機で一時的に動いても、最終的にはそれほど円高になるとは思えません。
そうはいっても、ドル円が110円ぐらいまで戻る可能性もないわけでもなく、反対に内需低迷、中国韓国の経済問題のとばっちりで150円台の円安に振れる可能性、どちらに転んでもおかしくないと思います。

正直、ペソ円ロングは急激な円高のリスクを考えていた方が良いと思いますが、現実的には
 ドル円=135円 ー ドルペソ=17.00 でペソ円8円割れ
 ドル円=130円 ー ドルペソ=16.40 でペソ円8.0円前後
 ドル円=130円 ー ドルペソ=17.00 でペソ円7.5円前後
 ドル円=130円 ー ドルペソ=18.40 でペソ円7.0円前後
ぐらいが目安になるかもと思っています。

トピック

通貨:
先週16.98から週末は16.97
2023年末のドルペソは17.00割れで終了
年初から13%上昇で対ドル上昇率はコロンビアに次いで世界2位

メキシコ株:
週末株価は57.6から57.4
空港株ショックがあったにもかかわらず年初から18%株価上昇

メキシコ中銀:
現在政策金利11.25%:次回の政策金利は2月8日
12月14日の政策金利会合は全員一致で据置
インフレ再発の懸念あり、シティは利下げは早くても3月21日と予測
外貨準備高は12月15日時点で2109億ドル、1995年来の最高水準を更新
メキシコ財務省、中銀は来年の成長率を2.1%から3%へ上方修正

INEGI:第3四半期は年率3.3%、10月も年率3.3%
INEGI:11月の経済成長は月次で0.4%、最終的には3.4~3.5%を予想

メキシコ年末経済成長率予想
3.6%・・・JPモルガン
3.5%・・・ムーディーズ、パリバ、メキシコ財務省
3.4%・・・XP、シティ、ゴールドマンサックス、BBVA
3.3%・・・OECD、メキシコ中銀
3.2%・・・バークレイズ、BoA、IMF
3.1%・・・フィッチ

非公式の経済活動がGDPの24.4%で2003年以来の最高値
メキシコ、GDP1.8兆ドルで世界12位、10位以内を目指すとブラジル2.1兆ドル、カナダ2.1兆ドル、ロシア1.8兆ドルを抜く必要あり

金融:
10月までの銀行利益が2280億ペソ、前年同期17.4%増加で過去最高を更新中
銀行は高金利で記録的な利益を継続

消費者物価指数:
11月の年間インフレ率は4.32%、前月4.26%より0.06悪化
11月の年間コアインフレ率は5.30%、前月5.50%より0.20改善
12月中間の年間インフレ率は4.35%
12月中間の年間コアインフレ率は5.24%

JPモルガンは年末年間インフレ率を4.3%、これ以上鈍化しないと予想
メキシコ中銀は年末年間インフレ率を4.7%と予想

貿易収支・経常収支:
貿易収支 11月:6.3億ドル、10月:-2.5億ドル、9月:-14.8億ドル
輸入額 11月:496.2億ドル、10月:519.7億ドル、9月:511億ドル 
輸出額 11月:502.5億ドル、10月:522.3億ドル、9月:497億ドル

10月送金額は52.9億ドル 送金額累計は528.9億ドルで前年同時期より9.4%増加

小売り売上:
メキシコ中銀:メキシコの消費者信用総額1.36兆ペソ、実質年率13.5%増加
ANTADの10月までの累計売上は1兆2110億ペソ、10月単月の売上高は既存店で1.4%減少
INEGI:10月の小売り売上は年率3.4%増加
11月の消費者信頼感指数は47.3、前月1.1%増加

雇用・失業率:
INEGI:11月失業率は2.8%、就業人口が124万人(そのうち非正規108万人)減少
第3四半期の経済活動人口は前月より15万人増加で6099万人

製造業・自動車:
11月自動車生産台数は32.9万台、前月より4.9万台減少
11月までの累計生産台数は356.3万台で前年同期比16%増加
2023年の建設業は過去10年で最高売上を記録。鉄道と非住宅建設が牽引。

11月の景況感は前年同月比56.0%で好況を維持
9月総固定投資は年次23.5%、前月比1.5%減少、減少は2022年7月以来
財務省:2023年1~11月の申請ベースの海外直接投資額は1064億ドルを予想

食品:

エネルギー:
メキシコバスケットは70.00から68.54
紅海船舶攻撃で停止されていた海運が再開中

USMCA:
エネルギー国有化は引き続き論点
米国遺伝子組換えトウモロコシの使用を禁止するメキシコを提訴

USMCA以外:
アルゼンチン大統領の政策に全南米が関心
ベトナムを迂回する中国製品も関税強化

観光業:
1~10月までの空路旅行客は1700万人で前年同時期比6.2%増加
観光業従事者は476万人、総雇用の9%


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