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物書きとマジシャン#28

「ふぅ、ひどい道のりでしたね。」

 ねぇ、せっかくいい気分でお店を出たのに。


 一応、窓の外から周囲に誰かいないか警戒をしておくが、特に変わった様子はなさそうだ。

 よほどの人数で取り囲むように監視でもしていない限り、この家に入ったことを悟られることは無いだろう。

 アンナさんの身に何かあっても困るし。


「どうでしょう、僕たちが狙いだったのでしょうか。」

 そうね、もしそうなら無事でいられなかったでしょう。

「そうなると…。」

 多分、警告だろうね。
なにか気に入らない連中がいるのは確かでしょうね。

「なにが気に入らないんでしょうね、
原因がわからないと外も普通に歩けません。」

 銃相手は厄介だよねえ、でもまあ

「なんです?」

 酒場に入るまで何もなかったから、多分ヴォルフさん絡みでしょう。
店を出て少し歩いた後だったし、そこまでは追ってきてたってことだから、連中は酒場を中心に監視をしているのかもね。

「え?じゃあヴォルフさんが危ないのでは?」

 んー、そんなに簡単に手は出せないでしょう。
仮にも評議員の一人だし、何かあればメイサの体制に対して都合の悪い連中の仕業ってことになるから、そんなんじゃまずノスが疑われるでしょうね。

「それはそれで戦争になると?」

 すぐにはそうはならないと思うよ?あらかじめメイサから物資や資産を引き上げる必要があるだろうし。大したものが無ければわからないけど。

「うーん、そもそも狙いはなんなんでしょうね」

 さあねえ。
だとすれば、バランスを崩したいんでしょう。

「バランスですか?」

 メイサってさ、もうすっかり当たり前なようだけど、ものすごく不自然な場所だと思うんだよね。

「なぜです?」

 だって、どこの国でもないんだよ?
しいて言えば、商人の国みたいになってるじゃない。

「そういえば、王様みたいな人もいませんしね。」

 昔、師匠が言ってたけど、商人の中から代表を決めようとしてたんだって。でも出身国がみんなどこかしらあるから、実質その国の支配になるんじゃないかって反対だ、じゃあ戦争だって揉めて決まらなかったってさ。

「もう戦争だって言葉がただの脅しになってますね。」

 だから、経済的に厳しいけども圧政で力を持つ国が、メイサから税金を取るために支配したいんじゃないかって話は昔からあるんだよね。

「そうなるとみんな逃げだすんでしょうね。」

 そうだねえ、朝起きたら知らない兵士が街中に溢れてるかもしれないし。

「ええ?」

 あり得なくはないでしょう?
でも幸いにして、ここまでそうなっていないからまだ現状のままの方が利益があるんでしょうね。

「まるで毎日が綱渡りみたいですね。」


※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は架空であり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。


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