見出し画像

やさしい麦茶全然やさしくない

バスを降りたところから歩いて3分、絶対に人と合わない路地がある。そこを10分ほど歩いて大学に着く。この路地は大学に通い始めて5日目くらいに発見した。色んな道を通ってみたけど、一番人に合わなくて涼しい風が通るのがこの路地だった。多分みんなが通る道よりは遠回りだけど、私はこっちが良かった。気を使って近道を選ぶより遠回りでも人と合わない方を優先する。これまでの人生を振り返っても全体的にそんな感じだったと思う。

その道にあるもの。book cafe、本を読みながらご飯が食べられるらしい。興味津々。今度入ってみたい。幼稚園、いつも園庭で元気に遊ぶ色とりどりの子供たちが見える。変質者だと思われないようにあんまりじっと見ないように通る。緑がいっぱいの庭を構える豪邸、ジブリの世界に出てきそうなほど色んな植物が群生する素敵なお庭。足を踏み入れてみたくなる不思議な引力がある。

少し早めに家を出てその道をゆったり歩くのがお気に入りだ。学校に着くまでの心を整える時間だと思ってる。私は不器用だから、毎日のルーティンだとしても心の中で色々と準備しておかないと失敗しちゃう気がする。

日によっては肌に汗が滲む微妙なこの季節。いつも道中の自販機で飲み物を買う。ところがその自販機、私がいつも通る道とみんなが通る道のちょうどぶつかり合う地点にある。なぜかは分からないけど、そこで飲み物を買う時はいつも焦ってしまう。飲み物のボタンをピって押してからSuicaをかざすのか、Suicaをかざしてからボタンをピっとするのか、何度も使っているのにどうも分からなくなる。

冷や汗をかきながらやさしい麦茶を買った。歩きながら飲んだら口の端からこぼれて服にかかった。わんちゃんが3匹プリントされたお気に入りの白いスウェットを着ている時に限って。ああ、もう。もっとやさしくしてよ。

もうすぐ学校に着く。やさしい麦茶を小脇に抱えて、世界がやさしくあるように願いながら、ゆっくり歩く朝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?