さようならは5文字で終わる

さよならも言えなかった、
なんていう終わり方はしたくない。

同じ布団の中で目覚める朝に
顔見合わせて「おはよう」
と言い合うみたいに
お別れする時に言う台詞が
「さようなら」なら
2人向き合ってきちんと言おう?
さよならって言ってお別れしよう。


2人の長い月日。
一緒に居たり離れたり
笑ったり怒ったり
拗ねたり泣いたり黙ったり。

叩いたり蹴ったり背中向けたり
飛びついたり抱きついたり
右肩噛んだり

キスしたりキスしたりキスしたり。

何度も閉じ込めたいって思った。
何度も自分の中に
取り込んじゃいたいって思った。

何度も入りたいって思った。
君の中に同化したい、ってまで思ってた。


一生懸命愛した。
全力疾走で愛した。
身体の細胞の隅々まで愛した。

愛し切って
少し疲れて
判断力が鈍ってしまった。

さよならする選択。
きっと間違った判断をしてる。
きっと後から死ぬほど後悔する。
涙が溢れてきっと溺れてしまうくらいに
後から後悔する。

始めるのは2人なのに
終わるのはどちらか1人の比重の方が
大きいなんて、そんなの理不尽。

でも決めたのね。
決めたのは2人だね。

時間差で、だけど。

君がそう決めたから
あたしも数秒遅れて
そう決めることが出来た。

長かった2人の月日は
俗に言う「想い出」っていう
チープな台詞に押し込められて
いつかその箱の開け方も忘れて

気付けば君の隣りに
またコロコロ笑う可愛い誰かが
きっと居てくれると思う。


さようなら。

長かった2人の月日は
たったの5文字で終わるの。

それでも大事な儀式。
その5文字を
少し勇気を振り絞って発音する。

泣き声に聞こえないように
最大の注意を払って
全神経をそこに集中させて

さようなら、って言う。

あたしはそんなに強くないけど
最後に君のためなら強くなる。

ずっとその両腕で守ってくれた君に
最後の恩返しをする。

泣かないでさよならする。

でも、君が泣くなら
あたしも泣くよ。
数秒経ってから時間差で。


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