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東京女的生活 #011

[インタビュー 池田 美樹 編]

弓月:今回から3回に渡って、東京女的メンバーそれぞれの本質に迫る”特別インタビュー編”をお送りします。トップバッターは池田美樹さん!インタビュアーは私、弓月ひろみです。よろしくお願いします。

美樹:よろしくお願いします!

弓月:編集者であり表現者でもある美樹さんですが今、一番メインにしてるお仕事はどれですか?

美樹:フリーと思っている人もいらっしゃるけれど、実は出版社の社員。一昨年までずうっと雑誌の編集をやってきたんだけど、昨年からは企業との連携を図って誌面にするプロデューサーという立場。

弓月:日本を代表する数々の女性誌に関わったり、雑誌の立ち上げもされてますよね。さらにMCとしてNHKに出演されたり、ワイン業界に深く関わられていたり、活動が多岐にわたるので「社員」と言われると違和感が…(笑) ご自分の中で「本業はコレ!」という肩書きは?

美樹:やはり本質は「エディター」だと思っていて、雑誌の誌面だけに限らず、世界のあらゆるバラバラになっているモノやコトを集めてきて、おもしろいものに作り直して人に楽しんだり喜んだりしてもらいたい、ということかなあ。自分がおもしろい! と思ったことを、とにかく人に伝えたい。

弓月:美樹さんの視点はプロエディター的で、いつも「はっ」とさせられます。それから「ここは、この方が絶対にいい!」といつも「断言」されますよね。長年に渡る、雑誌での経験がベースになっているんだなと感じます。

美樹:断言してるんだ!(笑)気がついてなかった。

弓月:してます。(笑) そして、その裏打ちに正確性がありますよね。「こういう事例があったから」「こんな反応を経験したから」という。だから納得できるんですよ。

美樹:エディターって、現場での最終ジャッジをいつもリアルタイムで求められるから、知らず知らずのうちにそのスキルが身についてきたのかも。たとえ自分に自信がなくても「それはこういこう!」と決めないと、現場はどこに向かっていっていいかわからなくなるから。そういう責任があると思ってる。

弓月: 「編集者に必要なのはリアルタイムの決定力」ですね、見出し決まりました。(笑) 小さい頃は、どんなお子さんでしたか? 

美樹:ひとりっこなので、好き勝手やってた気が…(笑)。親に聞くと、とにかく元気な子で、1人の中に女の子も男の子もいるようだったといわれる。

弓月:美樹さんには「永遠の少女性」を感じるんですよ。洗練された大人からふわっと漂ってくる少女性。それは今も昔も「オリーブ少女」だからなのかなって思いますね。

美樹:少女性って「女」じゃないから、少年性と同義なんじゃないかな、と思うときもあるね。だから私の中に「男の子」がまだいるんじゃなかろうかと。

弓月:自分の性格を人に説明するとしたら、どう言いますか? 

美樹:難しい質問だ…。「元気がよくて前向きです」かな(笑)。

弓月:確かにいつも元気。(笑) 底力のある前向き感がありますよね。パブリックな自分のイメージに違和感をおぼえる事はありますか?

美樹:なんだかすごい立場の人でキャリアウーマン、と思われていることも多いみたいなんだけど、会社では普通にヒラ社員だし、これといった大きな実績があるわけでもないし、生きるために目の前のことに必死に取り組んできたら今に至る、というだけで、本人はずっともがいているままなんだよね。

弓月:えー!大きな実績、あると思うんですけど…。Googleで検索すると、華やかなインタビューがいっぱい出てきますよ。ドラマの舞台にもなるような、女性の憧れの場所にいる「すごい立場のキャリアウーマン」に見えます。 もがいてるまま、いうのは意外ですね。具体的にどういう事ですか? 

美樹:会社で何か肩書きがついているわけでもないし…本当、普通の会社員なんだよね。たとえば今の会社の仕事だったら、編集長を経験している、とか、そういうのがあるわけじゃない。だからコンプレックスに思ったまま。

弓月:「別の分野で実力を発揮しているからいいや」とは思いませんか? 

美樹:うん、自分が楽しくてずっとやっててもいいと思えることがあれば幸せかな、と思うようにシフトしてきたかも。会社員だから以前は肩書きがほしいな、と思ってたことがあるんだけど、それはいいや、でも私じゃなくちゃできないことがあればそれをやろう、という風に変わってきた。

弓月:何故、編集者を目指したんですか?

美樹:私の出身は九州・熊本市で、当時はまだネットもなかったから”世界”を知るにはテレビ、ラジオ、新聞しかなかったの。そんな中で”カルチャー”を教えてくれたのが雑誌だった。だから私もその送り手になりたいなと小さい頃から思っていたの。

弓月:出る方になりたいとは思いませんでしたか?モデルとか。昔から「作り手」視点だったんでしょうか。

美樹:自分がおもしろいと思ったことを自分のフィルターを通して人に伝える、それにはやはり編集者だなと思って最初から作り手視点だったね。だから、雑誌にこだわっているわけではなくて、どんなにプラットフォームが変わっても考えていることは同じ。

弓月:最初から編集者視点なのは珍しいですね。「自分の思いを伝えたい」という「書き手志望」は多いと思いますが…最初から「フィルターを通して広く伝える」を意識しているのは少数派だと思いますよ。 

美樹:小学校に、当時はなかった「壁新聞部」を創設したよ(笑)

弓月:さすが。立ち上げている。(笑) 取材とかしてたんですか? 

美樹:小学校に起こっていることがらを観察したり書いたり人に書いてもらったりしてたなあ。そのうち、輪転機をまわして配る新聞を作るようになったんだよね。1人進化形(笑)

弓月:発行部数を伸ばして…(笑) 

美樹:だんだん知恵がついてきて、中学生では”雑誌”の形に綴じてたな。台割とかつくってた。だからやっぱり”記事”を書きたいんじゃなくてトータルでパッケージ化したかったんだろうね。それが今名乗っているもうひとつの肩書きの”プロデューサー”に繋がっていくわけなんだけれど。

弓月:中学生の時点で既に、スポーツ選手ばりの完成系!そこから夢の舞台に向かって行ったわけですが、大きな挫折を経験したことはありますか?

美樹:大学で仏文科だったから当時はヨーロッパ指向があって、留学したいな、とか漠然と思っていたりはしたんだけれど、とにかく保守的な土地柄なので実家の外に出してもらえない。そこで地元の大学に行って地元の出版社に勤めて、25歳になったときに「もう十分でしょう」と親に宣言して東京に出てきたんだけど、そこから次の勤め先を見つけるまでが大変だった(笑) バイト生活で極貧だったなあ。1 人暮らしも初めてだったし。今はいい思い出だけど。

弓月:地元の出版社は、何を扱っている会社だったんですか? 

美樹:「ぴあ」みたいな地元の情報誌。かなり売れていたよ。そこでヘルメット持ってって街に立って「あなたのバイクのタンデムシートに乗せてください」と言ってどこまで行けるかレポートしたり。阿蘇山にバイクのライダーを集めるイベントのスタッフになってMCをしたり。元気だったね(笑)

弓月:うわっ、体当たり企画!バイト生活で極貧って、まったくイメージにないですね。

美樹:動くと喉が渇くから家でじっとしているとか、出かけると電車代がかかるからどこにも行かないとか、いろいろ工夫したよ。友達もいなかったし。ワープロがそんな私を救ってくれた(笑)

弓月:ほんとに極貧じゃないですか!お部屋で書き物してたんですか? 

美樹:してた! まだ多分フロッピーディスクに残ってると思うけど、取り出す術がないかも。

弓月:今の勤め先である出版社には、どうやって辿り着いたんですか? 

美樹:中途採用の知らせが出るまで3年間、毎週新聞の日曜版の求人情報を見てた。その前にひとつだけ別の出版社にも勤務してるんだけどね。それで、チャレンジして通過、という経緯。

弓月:涙ぐましい努力…。チャレンジに際して不安はありませんでしたか?

美樹:自信しかなかった! 他にこんな人はいないだろうな、と思うくらい、ワークヒストリー的にはその時点でいろいろ経験していたから。

弓月:自ら望んで苦労を重ねて、経験を積んできたからこそ言える台詞ですね。今、自分はどんなポジションにいると思いますか。中堅、ベテラン、アウトロー…表現は何でもいいんですが。

美樹:冒険者。会社の仕事をしながら別のことも同じくらいやっていたりするんだけど、それは会社にちゃんと体当たりで説明してやっている活動だったり、あえて自分のフィールドではなかったIT業界のみなさんのところに出かけていって仲良くしてもらったり、最近では友人のクリエイティブ・ディレクターとクリエイティブ・ユニットを立ち上げて東京と日本各地、日本と世界を結ぶ活動をはじめたり。つねに新しい場所を探して行動していると思う。

弓月:切り開いて創って行く冒険者!ぴったりですね。 

何をしている時の自分が一番好きですか?

美樹:新しいプロジェクトについて打ち合わせしているとき(笑)あと、地方や海外に出かけて取材しているとき! 企画出しをするときより、実際にプロジェクトを進行させていくその課程が大好きなんだよね。だから私は永遠に冒険者なのかなあ、と思う。

"女的一問一答"
Q 自分の好きな所は?
A 元気なところ。

Q 自分の嫌いな所は?
A 元気すぎるところ(笑)

Q 自分にとって「特別」な時間は?
A 昼が夜に変わる時間、夜が朝に変わる時間。間(あわい)が好き。

Q 自分に必要な「仲間」とは?
A ともに冒険できる人たち。

Q 手放せないツールは?
A iPhone、MacBook Air、カメラ。

[編集後記]
・5-6年ぶりに以前行きつけにしていたカフェに行ったら当時新人だった人が店長になっており、私の名前も覚えていてくれた。うれしかった。そんな場所での筆談インタビュー。土砂降りの中、ロングスカートの半分までがびしょ濡れになるまで待たせたゆづちゃんには「ごめん!」のひとこと。(美樹)
・き、緊張しました…(涙)一流の目を持つ編集者であり、表現者であり、憧れの存在でもある人。マンツーマンでお話伺えて光栄です。それにしても、恵比寿で局地的な集中豪雨が私にだけ降り注いだ模様。なんででしょうか…がくり(弓月)

[使用ツール] 
・MacBook Air
・MacBook Pro 

[使用アプリケーション]
・Note
・Googleドキュメント

[Special Thanx]
Ura ebis  / Mr. Shuhei Hori 

 [photos]

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