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ショートストーリー

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3~5分程度で読める、オチがあるようでない感じのお話です。
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#猫

好奇心で猫は動く

猫と散歩するのが好き。 ふらりと帰宅した飼い猫が催促するので、今夜はちょっと(猫的に)遠出して、近所の公園に行くことにした。 普段は我が物顔に闊歩する猫も、見知らぬ場所へ行く時は足取りが重い。 それでも、猫特有の好奇心には勝てないのか、私の後をのったりと付いてくる。 時計はとうに0時を回り、冷え込みは相当。 出掛けに着てきたコートのポケットに、コーヒー缶を入れて暖をとりながら、歩くこと7分。 公園に入ると、何だか人の気配がする。 警戒しながらも、猫と同じ位の臆病さと好

マトリョーシカの猫

その、猫にしては大きな体躯のメンデルは研究室で飼われている人懐っこい雑種で、胴の中程から前後できっちりと毛色が違う。 彼がみつゆび座りするとそのラインが、体を上下二分割するように見えることから、マトリョーシカのように上下にカパッと開いて、中から一回り小さい猫が出てくるのだと、研究室ではまことしやかに言われていた。 私が研究室に入った時から成猫だったので、一体いくつなのかもわからない。いつも研究室の中を自由に闊歩して、気ままに人にちょっかいを出しては、可愛がられたり疎まれた

雨の日、雨の時間。

『今年も梅雨本番、連日の雨に気持ちもすっかり滅入っていませんか?  今日はそんな雨の日を、楽しく過ごせるアイデアを募集しています』 朝から点けっぱなしのラジオから流れてくるパーソナリティの喋りだしに、何言ってんの雨だからこそ楽しく過ごせるでしょ、と思いつつ、寧ろ一向に進まない帳簿整理を軽やかに進められるゴキゲンなナンバーを掛けてくれよDJ、って気持ちになってる。 続けて流れてくる罪のないイージーリスニングにも悪態を突きそうになりながら、コーヒーでも淹れようかなと席を立つ。