精神を刻む者_ジェイ

【モダン】精神を刻め!青白コントロール


 本日は、本当に今更ながらGP横浜で使用してトップ8に入賞した青白タッチケイヤの話と、『灯争大戦』加入後の現在使用している青白コントロール、そして『モダンホライゾン』加入後の青白コントロールの話をしていきたいと思います。
 今回も長くなりますが、どうか最後までお付き合いください。


■モダン環境における青白コントロール


「《意志の力》がないレガシー」と揶揄されることのあるモダン。《意志の力》という対コンボへのキラーカードが存在しないモダン環境は、とにかく最速コンボデッキが強く、それゆえにやりたいことを一方的に押し付ける環境だと言われています。


 トロン、ドレッジ、アミュレットタイタン。そして《新生化》が入った『灯争大戦』以降はネオブランドなど、様々な押しつけデッキが環境に存在していることから、いかに現在のモダンが押しつけ環境かわかりますね。

 そんなコンボ同士の刺し合いが日々行われているモダンにおいて異質なデッキ。それが青白コントロールです。
 
 青白コントロールは打ち消しと除去、そしてアドバンテージを取るカードの3種で構成された、古来よりマジック界に存在する、由緒正しきコントロールデッキです。
 コンボデッキに対しては打ち消し、ビートダウンには除去と、環境のあらゆるデッキに対して有効なカードをメインから採用し、またそれらのカードを手札に集めるために、ドローが大量に入っています。
 …と聞くと「最強のデッキじゃないか!」と思うかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。青白コントロール、というかコントロール全般が抱える悩みとして、一貫性のある初手をキープできないという問題があります。
 例えば貴方がトロンを使用しているとしましょう。《ウルザの鉱山》、《ウルザの魔力炉》、《ウルザの塔》、《解放された者、カーン》」という初手が来たとします。この初手はほぼ間違いなくキープするでしょうし、貴方が先手の場合、このゲームに勝つ確率は非常に高いでしょう。対戦相手がどんなデッキであれ。


 ですが、青白コントロールは違います。2枚の《流刑への道》と《至高の評決》、《瞬唱の魔道士》、3枚の土地という初手はイゼットフェニックスや人間にはぜひキープしたいですが、相手がトロンの場合はほぼ100%敗北するでしょう。逆に2枚の《否認》、《謎めいた命令》、《瞬唱の魔道士》、土地が3枚の手札で相手が5c人間だった場合も、やはり敗北します。


 すべての相手に対して有効なカードを入れているということは、マッチアップ次第で役に立たないカードを引いてくるリスクがあります。そしてそれは、運が悪いのではなく、デッキのウィークポイントなのです。
 
 勝つために必要な土地の枚数が多いのも、青白コントロールの弱点と言えます。
 人間やトロン、イゼットフェニックスなどは3枚の土地があればデッキが回りますし、ドレッジに至っては2枚です。一方の青白コントロールはというと、ストレートに4マナまでは伸びてほしいです。これはそのまま、マリガンした時の弱さにも繋がります。そしてたくさんの土地が必要なゆえに、25枚の土地を入れているというのも、弱点です。マナフラッドとマナスクリューが他のデッキより構造上起きやすいのが、青白コントロールです。

 さて、今度は一転して、青白コントロールが使いたくなくなったのではないでしょうか?
 安心してください。ここからまた、魅力について語っていきます。


■青白コントロールの魅力


1.劇的な対策カードを入れられづらい
 ドレッジに対する《安らかなる眠り》、トロンへの《減衰球》など、コンボデッキはサイドボード後に必ず対策を受けます。そしてそれを乗り越えられるかどうかが命題となります。


 一方、青白コントロールに対しては劇的なカードはありません。《思考囲い》は効きますが、コンボパーツを抜かれるよりはだいぶマシです。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》など一部厳しいカードはありますが、入っているデッキはほとんどありません。
 今更言うまでもありませんが、マジックはメインボード戦よりもサイドボード戦の方が多いです。そのため、サイドボード後にクリティカルなカードをサイドインされづらいというのは思いの外メリットとなります。


2.《精神を刻む者、ジェイス》が強い
 突然カードの強さの話になりますが、《精神を刻む者、ジェイス》というものすごく強いカードがモダンにはあります。


 スタンダードで一強環境を生み出してしまい禁止となり、モダン制定当初からずっと禁止されていました。2018年2月に使用可能となったのですが、このカードの強さはとにかく凄まじい。「生き残っているだけでアドバンテージを稼いでいく」なんて言葉では生ぬるく、「プレイしてターンが帰ってくる=勝利」と言っても過言ではないカードです。
 そしてこのカードを最も上手く使えるのが青白コントロールというわけです。コンボデッキ相手に打ち消し呪文をかき集めたり、アグロには除去で失った手札を回復する手段に使えます。手札が整ってしまえばそのままフィニッシャーにもなります。改めてこのカードの強さを書いてみると、本当に恐ろしい。
 《精神を刻む者、ジェイス》のおかげで青白コントロールは成り立っていると言えます。このカードの強さを十二分に引き出せるのが青白コントロールの魅力です。


3.コントロールにも関わらず、ブン回りがある
 自ら攻めていくビートダウンやコンボと違い、青白コントロールはどうしても相手に対応していくリアクションデッキです。1ターン目から3ターン目までクリーチャーを展開し続けて圧殺、などといったビートダウンならではの良さを、コントロールは通常持ちません。
 ですが、この青白コントロールにはそれが存在します。すなわち妨害からの4ターン目の《精神を刻む者、ジェイス》着地です。アグロには除去から《精神を刻む者、ジェイス》、コンボには打ち消しから《精神を刻む者、ジェイス》です。《精神を刻む者、ジェイス》が《ドミナリアの英雄、テフェリー》を呼び込み、大マイナスまで辿り着く。これを最速で目指すのが明確なゲームプランです。


 これは従来のコントロールにはない魅力です。「妨害する」「アドバンテージを稼ぐ」「フィニッシャーで殴り切る」というコントロールが踏むべき3つの工程の内、2つ目と3つ目を《精神を刻む者、ジェイス》がひとまとめにしてくれているのです。
 
 このブン回りがあるという特性は、そのまま弱点の克服にもつながります。
 先ほど、「一貫性のあるハンドをキープできないのが青白の弱点」と言いましたが、御覧の通り《精神を刻む者、ジェイス》はアグロ、コンボの双方に強く、どんな相手に対してもキープしたいカードになります。そのため、《流刑への道》、《否認》、《選択》、《精神を刻む者、ジェイス》のような手札はどんなデッキにも対応ができる一貫性のあるブン回りハンドとなるのです。


4.あらゆるデッキがコントロールを意識したデッキ構成にしていない
 これは、スタンダードを例に出すとわかりやすいでしょう。
 例えばあなたがグルールアグロを使用する場合、《ケイヤの怒り》を打たれることをどれぐらい想定するでしょうか?正直言って、それなりに意識すると思います。そのためデッキのプレインズウォーカーの枚数は増えるかもしれませんし、《成長室の守護者》のような、除去に強いカードの採用に踏み切ることもあるでしょう。また、プレインズウォーカーをサイドボードに取るなど、全体除去に対応したサイドボードプランも用意するはずです。


 ですが、モダンにおいてその戦略は取りづらいです。というのもコントロールデッキは環境にほとんど存在しておらず、プレインズウォーカーは対アグロやコンボには無力です。《流刑への道》や《終末》がつらいデッキにも関わらず、ほとんど対抗策をサイドから講じることはできません。
 人間デッキはメインボードの《翻弄する魔道士》や《帆凧の掠め盗り》で、サイド後に入るカードは《民兵のラッパ手》ぐらいですし、イゼットフェニックスは《紅蓮術士の昇天》というからめ手こそあるものの、《氷の中の存在》と《弧光のフェニックス》に攻めの大部分を頼っているのは変わりありません。大きくプランを変えて来ることはできないのです。

 コンボもそうです。ネオブランドなどが顕著ですが、《新生化》を打ち消した瞬間に勝利できます。カウンター対策をメインから搭載する余裕はありません。モダンのコンボはみな、早いデッキ同士の刺し合いにすべてのリソースを割いているためです。

 このように、モダンのメタゲーム上で確実に存在感を示しているにもかかわらず、青白コントロールはきちんと意識されたデッキではないのです。


■GP横浜で使用したデッキ


土地(25)
5《島》
2《平地》
1《沼》
2《神聖なる泉》
1《湿った墓》
3《溢れかえる岸辺》
3《汚染された三角州》
4《天界の列柱》
4《廃墟の地》

クリーチャー(3)
3《瞬唱の魔道士》

呪文(32)
4《選択》
4《流刑への道》
4《終末》
4《精神を刻む者、ジェイス》
3《謎めいた命令》
2《マナ漏出》
2《否認》
2《ドミナリアの英雄、テフェリー》
2《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
1《大祖始の遺産》
1《失脚》
1《拘留の宝球》
1《至高の評決》
1《呪文嵌め》


サイドボード(15)
2《外科的摘出》
2《斑岩の節》
2《天界の粛清》
2《漂流自我》
2《ヴェンディリオン三人衆》
1《変遷の龍、クロミウム》
1《儀礼的拒否》
1《払拭》
1《機を見た援軍》
1《軽蔑的な一撃》


■青白ではなく、エスパーの理由


 このデッキを見てまず思うことは、
「純正青白をあえてエスパーカラーにする価値が、《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》にはあるのか」
 まずこれでしょう。

 そしてずばりお答えしますと、《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》というカードは非常に強力極まりないものの、これだけでエスパーカラーにする価値があるほどではないと思っています。
 《漂流自我》、そして《変遷の龍、クロミウム》。そして《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》。この3種類のカードがすべて使えて、初めてエスパーカラーにする価値が生まれます。

 これらの内1種類のカードの採用を見送るのであれば、わざわざ色を足さず、純正な青白コントロールで良いのではないかと考えています。

 とはいったものの、このデッキをよく見てもらえばわかりますが、実は純正の青白コントロールと比べて、そこまで土地で無理をしているわけではありません。フェッチランドの枚数こそ増えていますが、ショックランドは《湿った墓》が増えただけで、《廃墟の地》で持ってこられる基本地形の枚数にはほとんど変わりありませんし、青マナと白マナも十分に確保できています。だから、そもそも青白に黒を足すことに、そこまでリスクを感じていません。


 だからそもそも、「《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》・《漂流自我》・《変遷の龍、クロミウム》の3種のカードのために土地に負担を掛けている」とは考えていないのです。「あえてエスパーカラーにしている」というよりは、「青白コントロールに合う黒いカードが3種あり、それを無理なく入れられるため、エスパーカラーになった」だけの話なのです。

 その上で、それぞれの黒いカードの役割についてお話しましょう。


・《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》

 青白コントロールには《外科的摘出》や《大祖始の遺産》、場合によっては《安らかなる眠り》など、様々な墓地対策がメインから入っています。これはイゼットフェニックスとドレッジがメタゲーム上で上位を占めており、青白コントロールが墓地戦略を苦手とするデッキだから、当然ですね。
 ただ、僕は青白コントロールに入っている墓地対策が気に入りませんでした。《外科的摘出》はアグロ相手に腐りますし、《安らかなる眠り》は劇的ながら効く相手の方が少ないぐらいで、しかも《瞬唱の魔道士》とアンチシナジー。《大祖始の遺産》はドローになるため腐りづらいですが、それでも2マナで1ドローのこのカードを使いたくはありませんでした。

 市川 ユウキさんと高橋 優太さんによるプロ同士の青白コントロール対決が話題となった第12期モダン神挑戦者決定戦。その結果を見て、青白コントロールの強さを再認識したものの、「やはり墓地対策の部分だけが気に入らなかったのです。
 
 そんな時に、友人の吉野君が僕に見せたのが、この青白タッチケイヤでした。そしてこの《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》が、僕の求める墓地対策の条件をすべてクリアしてくれました。

1.アグロ相手に強い墓地対策である
 墓地対策でありながら、人間の《霊気の薬瓶》や《貴族の教主》、《教区の勇者》を対処できるのは素晴らしいポイントです。

2.メイン戦での貴重なライフ回復手段である
 《機を見た援軍》を1枚採用したくなるほど、青白コントロールはメイン戦でライフゲインを欲しています。親和に対する主な負けパターンは、序盤にダメージを食らいすぎてからの《感電破》ですし、バーンに対しても盤面を掌握しきる前に焼き切られてしまいます。ライフ回復手段はメインボードにほしかったのです。

3.プラス連打が勝ち手段になりうる
 これは、ゲームを長引かせたくない対トロン戦で主に有効でした。トロンとのGAME 1は相手が《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を10枚の土地から唱える前にこちらがゲームに勝利できるかがカギとなります。
 しかし、こちらに攻める手段が《ドミナリアの英雄、テフェリー》の大マイナスと《天界の列柱》しかないため、しばしば10マナまで辿り着かれてしまいます。
 そこで、《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》の出番というわけです。本来墓地対策枠のカードは、トロンに対しては何もしません。(例外的に《外科的摘出》だけは、《廃墟の地》で破壊したウルザ地形を破壊することで、トロンを揃わないようにできますが。)
 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》はトロンに対して唱えて、最速で大マイナスを目指すことで、速やかにライフを削り切れます。《彩色の星》などを追放していけば、大マイナスで10点程度は与えられるでしょう。
 トロンに対しての速やかな勝ち手段として、《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》は重宝しました。

 
 以上の3点が、《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》の強さです。ユーティリティに優れた墓地対策だと思いましたし、除去が大量に入っている青白コントロールとプレインズウォーカーの相性が良いことを再認識しました。特に3マナというのは軽く、唱えやすくて素晴らしいですね。


・《漂流自我》

 コンボデッキに対して打ち消しと置物(《石のような静寂》、《減衰球》)しか持たない青白コントロールの、言うなれば飛び道具。そしてこれは全くケアされません。仮にケアされたとしても、サブの勝ち手段を潰してしまえるのが青白コントロールです。
 《瞬唱の魔道士》との相性も良く、《漂流自我》で見た次なる脅威を抜いて、完全に勝ち手段を奪うこともできます。トロンに対して先手3ターン目ならばトロンランドを指定することで、揃わせないことが可能ですし、揃われた後でも《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を指定し、後は《解放された者、カーン》などを打ち消すだけでイージーウィンです。このデッキは《漂流自我》のおかげでトロンに対して比較的勝率が良かったです。


 タイタンシフトのようなデッキにも《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を指定すれば即死がなくなり、アミュレットタイタンには《召喚士の契約》や《原始のタイタン》と、コンボ全般に安心の1枚です。
 ミラーマッチでも《精神を刻む者、ジェイス》を抜くことで、相手のデッキを大幅に弱くできます。《精神を刻む者、ジェイス》さえ抜いてしまえば相手のデッキに入っている強いカードは《ドミナリアの英雄、テフェリー》だけですし、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を出されてもこちらが《精神を刻む者、ジェイス》を出せば、まず負けることはありません。


・《変遷の龍、クロミウム》

 こちらは青白コントロールミラーマッチでの最終兵器として。
 ミラーマッチは通常《精神を刻む者、ジェイス》をめぐる戦いになります。一度《精神を刻む者、ジェイス》を定着させた方が手札を充実させ、次なる《精神を刻む者、ジェイス》や打ち消しに辿り着き、勝利します。
 そんな概念を根本から覆してしまうのが《変遷の龍、クロミウム》です。《ヴェンディリオン三人衆》のために相手は《流刑への道》を残してきますが、《終末》はほぼ確実にサイドアウトされます。ある程度マウントを取られた状態でも、《変遷の龍、クロミウム》は1枚で逆転できる可能性のある1枚です。
 その他、グリクシスシャドウやイゼットフェニックスに対してもサイドインしますが、劇的に効くマッチはやはりミラーです。

■カード、枚数チョイス


・4《精神を刻む者、ジェイス》


 このカードを4枚にした市川 ユウキさんは本当に天才だと思いました。シミックネクサスに《悪意ある妨害》を入れたチューンといい、本当に市川さんのチューニング力には頭が下がります。
 《精神を刻む者、ジェイス》は一度4枚にしたら、減らすことなど決してありえないと思うようになりました。手札に2枚抱えることがよくありますが、それは全然構いません。2枚目が腐る状況では場に《精神を刻む者、ジェイス》が出ているということで、それ即ち勝利なのです。《精神を刻む者、ジェイス》は場に残った瞬間にアドバンテージという概念を壊します。手札にカードが腐っていようとも関係ないのです。
 また、対トロンなどでは4ターン目に《精神を刻む者、ジェイス》を唱えられるかどうかが勝敗にそのまま直結します。トロン戦では打ち消しと《廃墟の地》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》以外のすべてのカードは必要ありません。そして的確にそれらのカードを手札に集め続けるには、《精神を刻む者、ジェイス》の力は不可欠です。《流刑への道》が3枚手札に来るようではトロンに勝つのは厳しいですが、それでも《精神を刻む者、ジェイス》ならなんとかしてくれるのです。
 
 1枚目を使い捨てることができるのも、4枚にした強みでした。人間デッキ相手に《終末》を複数枚引いた時に、ライブラリートップに積むために《精神を刻む者、ジェイス》を使い捨てることがよくあります。これはデッキに《精神を刻む者、ジェイス》が2枚しか入っていないリストではやりづらいですし、3枚でも躊躇します。しかし4枚ならば遠慮なく使い捨てるプレイができます。
 

・2《ドミナリアの英雄、テフェリー》

 非常に強力なカードで、勝ちに直結する1枚ですが、2枚に押さえました。《精神を刻む者、ジェイス》が4枚で《ドミナリアの英雄、テフェリー》も3枚はさすがにデッキが重すぎますし、《精神を刻む者、ジェイス》で《ドミナリアの英雄、テフェリー》を探してくればよく、3枚は必要ないと判断しました。
 結局、《ドミナリアの英雄、テフェリー》の大マイナスで勝つためにはたくさんの除去や打ち消しが必要であり、《精神を刻む者、ジェイス》なしでは成立しません。そして《精神を刻む者、ジェイス》が残る前提なら、《ドミナリアの英雄、テフェリー》は2枚で良いだろうと判断しました。


・4《終末》/1《至高の評決》


 全体除去枠。《精神を刻む者、ジェイス》4枚との相性を考えて《終末》は4に。
 そもそも、《終末》は入れるのであれば4枚のカードだと考えています。初手に引いてしまうリスクはありますが、単純に4ターン目までに奇跡したい場面もありますし、その際にデッキに4枚と3枚では大きく違います。
 《精神を刻む者、ジェイス》で積み込んで《終末》も強力なアクションですし、一度奇跡すれば、2枚目は6マナでも十分に打てます。
 一時期は《至高の評決》を大量に入れて《糾弾》まで入れ、《終末》を抜いたリストも流行っていましたが、やはり奇跡で唱えた時のバリューと、4マナに強いカードが集まっていることから《至高の評決》に4ターン目を費やしたくないと思うことが多く、結果的に《終末》に軍配が上がりました。
 白緑オーラの各種クリーチャーや《最後のトロール、スラーン》、《搭載歩行機械》など、《終末》でしか流せないカードもあります。


・2《マナ漏出》/2《否認》/3《謎めいた命令》


 青白コントロールの《否認》が僕はとても好きです。このデッキには打ち消しよりも除去の枚数の方が多いため、《否認》が腐るマッチを気にするよりも、《否認》が劇的に効くマッチを意識するべきなのです。2マナで完全にコンボデッキをシャットダウンできる打ち消しは《否認》しかありません。
 《マナ漏出》は《論理の結び目》と枠を争いますが、《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》を出すために沼を持ってくることがそれなりにあったため、シングルシンボルの《マナ漏出》を優先しました。
 《謎めいた命令》については特筆すべき点はありません。《精神を刻む者、ジェイス》が4枚で4マナ過多と言えど、《謎めいた命令》は必要なカードです。あらゆる場面に対応できる柔軟さと単純なカードパワーの高さを兼ね備えた素晴らしいカードです。


・2《ヴェンディリオン三人衆》

 ミラーマッチ、コンボ全般で必要なカードです。サイド後は青白コントロールに対して、コンボはゆっくりとカードを集めて、打ち消しをかいくぐりながらコンボを決めてきます。
 そのため、カードを揃える時間を奪うというのがこのカードの一番の役割となります。そして万が一安全確認ができたならば、速やかに《精神を刻む者、ジェイス》を着地させ、一気に主導権を握ることも可能。

 コンボやミラーマッチでのサイド後のゲームプランを考えると、2枚はほしいと感じました。


・2《斑岩の節》


 対人間での勝率を上げるために入れました。
 人間に負ける時のほとんどは早いターンでの《スレイベンの守護者、サリア》と《帆凧の掠め盗り》、《翻弄する魔道士》によるハメであり、必要なのは重い全体除去ではなく、軽い除去でした。
 《斑岩の節》は1、2ターン目にアクションをされてもきちんと2対1交換を取ってくれる素晴らしいカードです。


■青白のプレイについて


 このデッキはプレイが基本的には簡単です。相手の攻め手をさばくか、打ち消しを構えるかしかありませんからね。説明が必要なのは下記の2項目でしょう。

・《選択》

 《選択》は、ほしいカードが明確ではない状態では打つことをオススメしません。2枚しか初手に土地がなくて3枚目を求めている場合はもちろん打ちますし、トロン相手に《否認》が必要な場合も打ちます。しかし、マナが余ったから打つというプレイは禁物です。
 例えばこちらが先手。手札は3枚の土地、《選択》、《流刑への道》、《マナ漏出》《精神を刻む者、ジェイス》、。対戦相手は《沸騰する小湖》を置いてエンド。さて、この状況で《選択》でほしいカードはなんでしょうか?
 まず相手のデッキは何かわかりません。ドレッジかもしれませんし、イゼットフェニックスの可能性もあります。ドレッジならば《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》がほしいですし、イゼットフェニックスには《流刑への道》が必要でしょう。
 この状態で《選択》を打つことに意味はありません。《選択》は文字通り、引くカードを選択できます。その選択権を放棄するに等しいのです。
 仮にこの手札に《マナ漏出》がない場合は、《マナ漏出》or《否認》を探しに行くという目的があるのならば、《選択》を打っても良いでしょう。(実際に打つかどうかは別ですが)

 とにかく、《選択》というカードはなるべく打たないで持っておく方が強いのです。例えば5ターン目に最速で《ドミナリアの英雄、テフェリー》を出すために土地を探しに行くかもしれませんからね。


・《精神を刻む者、ジェイス》

 このカードの使い方で毎ターン悩む方が多くいますし、ミスを目撃することもよくあります。
 《精神を刻む者、ジェイス》は、プラスか0能力の2択の時、ほとんど0能力を使います。2~3回使用した後にプラス能力を使うプレイヤーが多いですが、僕は誤りだと思います。《精神を刻む者、ジェイス》は《ドミナリアの英雄、テフェリー》を探しながら絶対に負けない手札を作るための手段であり、フィニッシャーとしての役割はないと考えています。だからプラス能力を使うことはほとんどありません。(もちろん、《稲妻》に耐える目的でプラスから入ることもありますが)
 
 《精神を刻む者、ジェイス》の大マイナス=勝ちということに囚われすぎて、手札が完全な状態でないにもかかわらず、《精神を刻む者、ジェイス》のプラスをすぐに始めるのは、間違いです。《精神を刻む者、ジェイス》は生き残ったら常に0能力のみを使いましょう。プラス能力で検閲したところで、相手に有効牌を引かれる確率はそれなりにあります。《精神を刻む者、ジェイス》の0能力による3ドローで相手の有効牌に対する解決手段を見つけた方が早いですし、《ドミナリアの英雄、テフェリー》が見つかれば、そちらはカードを引きながら大マイナスを目指せるのです。
 わざわざ《精神を刻む者、ジェイス》で勝つ必要はありません。


■サイドボーディングプラン


 ところで、今回のデッキリストのサイドボードを見て、気付いたことがないでしょうか?
 そう、このデッキには定番の《安らかなる眠り》、《石のような静寂》、《減衰球》、《黎明をもたらす者ライラ》が入っていません。特に《安らかなる眠り》と《石のような静寂》は、白を使う理由ともいわれるほどの強力なサイドカード。これらをなぜ採用しなかったのかというと、決してメタから完全に切っていたからではありません。

 ではなぜ入れなかったのか。それは、サイドボード後のゲームで有利に立つことができるからです。

 トロンを例にあげましょう。青白コントロールに対してサイドから入ってくるカードは《スラーグ牙》と《自然の要求》を入れる程度です。《スラーグ牙》は、トロンランドを破壊された際に5ターン目に出せて、かつ《精神を刻む者、ジェイス》に睨みを利かせるために入っています。そして《自然の要求》は、《石のような静寂》対策です。
 そう、入っているかわからない《石のような静寂》をトロン側は対策してきます。それはなぜかというと、「《石のような静寂》は強力なカードすぎて、貼られて対処できなければ敗北してしまうから」です。1枚で負けるカードだからこそ、《石のような静寂》対策は必ずしてきます。《石のような静寂》以外にも《減衰球》も厳しいため、そのどちらかを割れる《自然の要求》を、トロンは必ずサイドインするのです。


 
 前述したように、青白コントロールを相手にした場合、相手はクリティカルなカードをサイドから用意することはほとんどありません。だからこそ、《自然の要求》など置物対策をサイドに用意しているデッキは、ほぼ100%サイドインしてきます。サイドに置物対策を用意しているということは、《減衰球》・《石のような静寂》・《安らかなる眠り》のどれかが劇的に刺さるデッキである可能性が高いですからね。

 そしてこれは利用できると考えました。青白コントロール側にとって《自然の要求》は何もしないカードです。こちらが《減衰球》や《石のような静寂》をサイドインしなければ。むしろ《拘留の宝球》を抜いてしまえば、デッキに効くカードはなんと0枚です。つまり完璧に《自然の要求》を腐らせることができるのです!

 だからこそ、このデッキのサイドボードにはただの1枚のエンチャント・アーティファクトも入っていないのです。《漂流自我》の強さもそこにあります。《自然の要求》が効かない、クリティカルなサイドカードだからです。

 ちなみに《黎明をもたらす者ライラ》を採用しなかったのも、サイド後のゲームを有効に進めるためです。通常、《黎明をもたらす者ライラ》と《悪残の天使》は合わせて2枚、または1枚入っている場合が多く、対戦相手は《四肢切断》を入れてきます。やはりサイドインするカードがほとんどないからです。それを嫌って、《黎明をもたらす者ライラ》も抜くことにしたのです。

 とにかくこのリストは、サイド後に明確にこちらが有利に立つことを意識しています。白というサイドボードが強いカラーだからこそできる幻想を武器にし、相手のデッキを弱体化させて、サイド戦を戦うのです。

■対Tier1簡易ガイド


VS人間
 マッチとしては五分か、やや不利です。
 というのも後手を取ると《スレイベンの守護者、サリア》で簡単にハマります。ハマってる間に《帆凧の掠め盗り》or《翻弄する魔道士》から《幻影の像》でどんどんハメられます。《霊気の薬瓶》スタートされると本当に厳しい。
 そのため、サイドボードには《斑岩の節》という軽めな除去を取っているというわけです。


 負け手段の一つである《霊気の薬瓶》を《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》で潰せるのは大きく、3ターン目にこれができる展開は大体勝ちます。
 《天界の粛清》と《斑岩の節》を増やすサイド後はそれなりに勝てます。相手は大したカードをサイドインしてこないので、メインは少し不利で、サイド後はほんの少し有利といったところです。その上でこちらが事故る可能性の方が高いので、マッチとしてはやや不利といったところですね。
 《精神を刻む者、ジェイス》はどんどん使い捨てます


VSトロン
 とにかく最速で《精神を刻む者、ジェイス》を置くことが命題。先手で《廃墟の地》から《精神を刻む者、ジェイス》という展開はかなり勝てます。


 《精神を刻む者、ジェイス》着地→打ち消しと《ドミナリアの英雄、テフェリー》と《廃墟の地》を集める、というのが主な勝ちパターン。《ドミナリアの英雄、テフェリー》の大マイナスで基本的には勝ちます。
 プラス能力はほとんど起動せず、常に0能力でカードを引いていきましょう。
 サイド後は《スラーグ牙》や《難題の予見者》などで、トロンが揃わずとも脅威を展開してきます。《自然の要求》を確実に複数枚入れてくるので、手札ではよくそれが腐っています。相手の展開が悪い時はまず《自然の要求》を持っていると思って良いでしょう。ほくそ笑みましょう。
 《終末》は抜きつつ《流刑への道》は残し、《精神を刻む者、ジェイス》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》を守り続けましょう。《忘却石》で《精神を刻む者、ジェイス》は流れますが、4枚入っているので次を用意できるでしょう。
 《漂流自我》の指定は《絶え間ない飢餓、ウラモグ》か、先手3ターン目ならばウルザ土地です。特にウルザ地形を指定する意味は大きく、サイド後にトロン側が取るランプ戦略に対して、デッキの土地の総数を減らすことがそもそも有効打になるのです。そもそもトロンが揃わなくなりますし、先手3ターン目はぜひ指定したいです。


VSイゼットフェニックス
 相手の攻め手は《弧光のフェニックス》と《氷の中の存在》だけ。こちらは《流刑への道》と《終末》で対処ができる。つまり有利です。
 特にメイン戦では相手に打ち消しが入っていないので、《終末》で複数交換が簡単に取れます。《精神を刻む者、ジェイス》を使い捨てて《終末》を積んで5ターン目で流して勝ち、ということが多いです。


 負ける時はほとんどが《紅蓮術師の昇天》です。このカードは本当に本当に厄介です。そのため《拘留の宝球》はできれば取っておきたい。《謎めいた命令》で打ち消す対象はほとんどがここになります。
 また、《否認》は《信仰無き物あさり》に当てるのがおすすめです。《弧光のフェニックス》が全然帰ってこなくなりますからね。《魔力変》を通して《信仰無き物あさり》を打ち消すと、フラッシュバックしつつ3回の呪文を唱えるには4~5マナ必要となるので、かなり余裕ができます。
 サイド後は《紅蓮術士の昇天》に対して《天界の粛清》を入れられますし、相手からは大したカードが入ってきません。《外科的摘出》で《弧光のフェニックス》にも対処できるのでかなり有利です。


VSドレッジ
 メイン戦ではとにかく《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》を引くことです。《終末》で流しながら《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》で結構勝てます。なければすぐに負けます。


 ドレッジ側は《這い寄る恐怖》による12点をクリーチャーでバックアップしてきます。そのため《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》のライフゲインは非常に大きく、《恐血鬼》だけ《流刑への道》で対処すれば《秘蔵の縫合体》が場に戻る回数は《ナルコメーバ》の枚数に等しくなるので、かなり楽になります。

 サイド後の《外科的摘出》では《恐血鬼》をまずは狙います。《恐血鬼》と《ナルコメーバ》を抜いて《秘蔵の縫合体》を完全に腐らせてしまうのが簡単です。《這い寄る恐怖》を抜くこともありますが、やはり《恐血鬼》の方が良いです。最終的な打点を稼ぐのは《恐血鬼》と、それによって戻る《秘蔵の縫合体》なので。
 発掘カードとして落としてきたのが《壌土からの生命》だった場合は、《壌土からの生命》を《外科的摘出》するのもグッドです。《壌土からの生命》を追放することで《恐血鬼》と《燃焼》は強さが半減しますからね。それをケアして、大体は《臭い草のインプ》を発掘されますが。


 ちなみに《臭い草のインプ》を《外科的摘出》するのはオススメしません。結局、発掘によって落ちたカードを抜くのが最も有効的です。例外的に《安堵の再会》で2枚の《臭い草のインプ》を捨てられた場合は、発掘を阻止する目的で《外科的摘出》を使用してしまっても良いでしょう。


VSアミュレットタイタン
 メインは《原始のタイタン》を《流刑への道》で対処していくと勝てます。意外となんとかなるマッチアップ。恐れずに《精神を刻む者、ジェイス》を出すのが大事です。
 サイド後は《外科的摘出》で《トレイリア西部》を狙い、《漂流自我》で《原始のタイタン》を対処します。《召喚士の契約》からの《女王スズメバチ》はそれなりに負け手段になるので、途中で出てきた《魂の洞窟》は早めに処理し、出されても大丈夫なように《至高の評決》は残しましょう。

 ちなみに《大いなる創造者、カーン》が入っているリストは、メイン戦はかなり厳しいです。トロンよりも相性が悪いと思います。


VSバーン
 メイン戦では相手の《焼尽の猛火》を腐らせることが最も重要です。そのため、《天界の列柱》を絶対にクリーチャー化してはいけませんし、《瞬唱の魔道士》も出しません。


 《瞬唱の魔道士》を出せるタイミングは、相手の場にフェッチランドがなく、相手がこのターンにまだセットランドをしていない場合のみです。または2ターン目に《ゴブリンの先達》を受け止めるために出すなど。
 メイン戦で勝つほとんどのパターンは《焼尽の猛火》を腐らせて《精神を刻む者、ジェイス》の0能力です。
 バーン相手には、《精神を刻む者、ジェイス》はどんどん0能力を使いましょう。《稲妻》があっても0から入ります。むしろ相手には《稲妻》で《精神を刻む者、ジェイス》を対処してきてほしいのです。
 サイド後は打ち消しやライフゲインが増えるので、かなり有利です。マッチで負けたことはほとんどありません。サイド後にも大したカードは入ってきません。
 相手は《焼尽の猛火》を抜いている可能性が高いのでサイド後は《瞬唱の魔道士》を出すタイミングがそれなりにあります。ただ、《黎明をもたらす者ライラ》をケアして少し残っている場合があるので、頭の片隅には入れましょう。
 また、《機を見た援軍》は絶対に《頭蓋割り》をケアしてください。


■灯争大戦後の青白コントロール


土地(25)
6《島》
2《平地》
4《溢れかえる岸辺》
4《廃墟の地》
4《天界の列柱》
3《神聖なる泉》
2《氷河の城砦》

クリーチャー(3)

3《瞬唱の魔道士》

呪文(32)

4《流刑への道》
4《選択》
3《謎めいた命令》
3《至高の評決》
3《精神を刻む者、ジェイス》
2《時を解す者、テフェリー》
2《覆いを割く者、ナーセット》
2《ドミナリアの英雄、テフェリー》
2《マナ漏出》
2《呪文貫き》
1《ドビンの拒否権》
1《否認》
1《呪文嵌め》
1《失脚》
1《糾弾》


サイドボード(15)
2《ドビンの拒否権》
2《ヴェンディリオン三人衆》
2《夢を引き裂く者、アショク》
2《天界の粛清》
2《機を見た援軍》
2《斑岩の節》
2《外科的摘出》
1《軽蔑的な一撃》

 大きく変わったのは3マナの2種のプレインズウォーカー。この2種が入ったことで、デッキ構成が多少変わっています。
 まず、3ターン目にプレインズウォーカーをプレイして隙を作るため、4ターン目に全体除去を打てるよう、《終末》ではなく《至高の評決》に。そして3ターン目のプレインズウォーカーの着地を安定させられるように、《呪文貫き》に《糾弾》と、軽いカードを増やしています。

■灯争大戦のカード解説


・《時を解す者、テフェリー》


 スタンダードで大活躍の《時を解す者、テフェリー》。モダンでもその力は健在です。
 《紅蓮術士の昇天》をはじめとしてちょっとした置物に触ることができなかったこれまでの青白コントロール。それゆえに《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》を入れていたわけですが、このカードのおかげで非常にデッキが器用になりました。と同時に《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》はお役御免となりました。《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》は墓地対策を兼ねるユーティリティカードでしたが、《時を解す者、テフェリー》は単なるユーティリティカードで留まるような強さではありませんでした。

 《否定の契約》で呪文を無理やり通されなくなりましたし、《瞬唱の魔道士》を《謎めいた命令》でバウンスするコンボが安全に行えるようになりました。《精神を刻む者、ジェイス》をより安全に着地させられるようにもなりましたね。

 ドローについているおまけとしては優秀すぎます。


・《覆いを割く者、ナーセット》


 そして《時を解す者、テフェリー》と双璧を成す3マナプレインズウォーカーが《覆いを割く者、ナーセット》。というかカードとしてはこちらの方が強いです。
 《覆いを割く者、ナーセット》の常在型能力は、モダン環境においてすさまじい強さです。イゼットフェニックス、ネオブランド(アロサウルスコンボ)、トロンは《覆いを割く者、ナーセット》が出るだけで機能不全に陥ります。ただ場にいるだけで。その上、2ターンかけて8枚デッキを掘れるので、実質《時を越えた探索》です。

 これまでの青白コントロールにも《精神を刻む者、ジェイス》と《謎めいた命令》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》と、ドロー+αのカードは入っていましたが、ここにドローを封じる《覆いを割く者、ナーセット》と動きを制限する《時を解す者、テフェリー》が加わり、デッキの強さは飛躍的に上昇しました。単純にドロー手段が増えたことでマナフラッドが更に緩和され、安定感も増しています。

 《精神を刻む者、ジェイス》を減らそうと考えたのは、《覆いを割く者、ナーセット》の強さに惚れ込んだからでした。このカードがあれば《精神を刻む者、ジェイス》が早めに落とされても、次の《精神を刻む者、ジェイス》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》をすぐに供給できますし、3ターン目に《精神を刻む者、ジェイス》を手札に加えられます。
「《精神を刻む者、ジェイス》を使い捨てた結果、ドロースペルがなくなって敗北する」という負けパターンが、《覆いを割く者、ナーセット》のおかげで減りました。
 以前よりも《精神を刻む者、ジェイス》への依存度が僅かに下がったのです。


・《ドビンの拒否権》


 《廃墟の地》を引いた場合に2ターン目にプレイできないため、メインボードこそ《否認》と散らしていますが、サイドはすべて《ドビンの拒否権》で統一しています。カードの強さがそもそも違いますし、サイドインする相手の多くは2ターン目に必ずしも構えなければならないというわけではないからです。

 確実に《精神を刻む者、ジェイス》を打ち消せるので、ミラーマッチでは特にプレインズウォーカーでの仕掛けはしづらくなりました。
流行りのネオブランドに対しても《否定の契約》構えの上から勝てるようになりましたし、このカードの強さはすさまじいです。


・《夢を引き裂く者、アショク》

 そしてこのカードこそが、青白に黒をタッチすることをやめた最後の理由となります。《夢を引き裂く者、アショク》は《漂流自我》と墓地対策を兼ねたスーパーカードです。
 《漂流自我》をサイドインする相手はトロン、タイタンシフト、アミュレットなどです。そう、それらの相手すべてに《夢を引き裂く者、アショク》はすさまじい強さです。トロン相手に置けば《森の占術》と《探検の地図》は機能しなくなり、アミュレットとタイタンシフトは機能不全となります。 その上、ドレッジに対してもサイドインできるのです。
 対トロンだけでいえば《漂流自我》に軍配が上がりますが、その他のデッキに対しては《夢を引き裂く者、アショク》の方がより強力です。しかもプレインズウォーカーのため相手は置物破壊で対処することができないため、場持ちが非常に良いのです。
 《夢を引き裂く者、アショク》加入のおかげで青白コントロールのサイドボードはまた一つ、グレードアップしたと言って良いと思います。


■モダンホライゾン加入後に試すリスト


土地(25)
6《冠雪の島》
2《冠雪の平地》
4《溢れかえる岸辺》
2《虹色の眺望》
4《廃墟の地》
4《天界の列柱》
2《神聖なる泉》
1《氷河の城砦》

クリーチャー(3)

2《瞬唱の魔道士》

呪文(32)

4《流刑への道》
3《薄氷の上》
4《選択》
3《否定の力》
3《謎めいた命令》
2《至高の評決》
1《神の怒り》
4《覆いを割く者、ナーセット》
3《精神を刻む者、ジェイス》
2《時を解す者、テフェリー》
2《ドミナリアの英雄、テフェリー》
2《呪文貫き》


サイドボード(15)
3《ドビンの拒否権》
2《ヴェンディリオン三人衆》
2《夢を引き裂く者、アショク》
2《天界の粛清》
2《機を見た援軍》
2《外科的摘出》
1《否定の力》
1《薄氷の上》


 こちらが、次に試そうと思っているリストです。今これを書いている瞬間はGP台北前なので、モダンはまだできていないのですが…。
 ベースはほとんど変わりませんので、モダンホライゾンでの加入カードの説明を。


■モダンホライゾンからの新戦力


・《薄氷の上》


 ついに《流刑への道》の追加が来ました。回している内にもしかしたら、《薄氷の上》を4枚にするかもしれません。それぐらい期待しています。
 《闇の腹心》や《貴族の教主》など、《流刑への道》を打ちたくないカードに対しても、《薄氷の上》は完ぺきな回答となります。特に人間相手には軽い除去というだけで貴重であり、このカードの加入でメイン戦での相性が良くなるのではないかと睨んでいます。
 このカードのためにマナベースを調整しました。8枚の冠雪基本土地に加えて《虹色の眺望》、そして4枚のフェッチランドに《廃墟の地》で20枚が冠雪土地にアクセスできます。まず《薄氷の上》がプレイできないということはないでしょう。


・《否定の力》


 そしてなんといってもこのカードです。《意志の力》のモダン版と言われるこのカードは、そのまま《意志の力》級の活躍をするだろうと確信しています。
 このカードによって青白は返しのターンの恐怖に怯えることなく、プレインズウォーカーを着地させることが可能となりました。《精神を刻む者、ジェイス》を出して0能力を起動して《解放された者、カーン》を打ち消せるのです!まさに夢のよう。
 
 前述のように、キラーカードの役割を担う《覆いを割く者、ナーセット》が3ターン目の行動としてとても強いため、青白コントロールは様々な手段で手札を供給できます。そのため、《否定の力》で手札を失うことがあまりデメリットにならないのではないか、と考えています。《意志の力》と違い3マナと比較的軽いですし、場合によってはメインから4枚入るかもしれません。むしろ入る可能性が十分あります。


■青白コントロールで試してみたいモダンホライゾンのカード


・大魔導師の魔除け

 書いてあることはなかなかに強いです。打ち消しはもちろん、1マナで《霊気の薬瓶》を奪えるので、人間に腐らない打ち消しなのですよね。
 ただネックなのがマナコスト。青のトリプルシンボルを3ターン目に捻出するのは非常に厳しい。《廃墟の地》が入っている以上はまず無理ですからね。そのため、このカードを使うなら根本的にマナベースかデッキを練り直す必要がありそうです。
 同じマナ域の《覆いを割く者、ナーセット》を出されると2ドローモードが死んでしまうのもちょっと痛い点。


・永劫のこだま

 墓地にカードを落とす要素があれば採用を検討しても良い1枚。ハンデスデッキには普通に強いですし、《覆いを割く者、ナーセット》ともコンボ。
 再録された《嘘か真か》と併用すればチャンスがあるかもしれません。


・嘘か真か

 《覆いを割く者、ナーセット》が場にいても打てるのが強い点。もしかしたらミラーマッチ用にサイドに入るかもしれません。少なくともメインでは《精神を刻む者、ジェイス》を押しのけるのは厳しいでしょう。
 お互いに打ち消しを大量に入れ合って構え合うゲームになるミラーマッチのサイド後に真価を発揮するカードかなとは思います。


・マリット・レイジのまどろみ

 土地を置くと占術ができるので、単純に事故防止に使えて良さそうだなと思いました。後半引いたらすぐに20/20が出ますし。
 ただ、出して次のターンに20/20で、殴れるのはその次のターンになるので、そのラグが懸念材料ではあります。なかなか面白いカードではありますが。

・狼狽の嵐

 言わずと知れたコンボ対策カード。
 しかし、モダンのコンボデッキと言えばトロン、そしてトロンに《狼狽の嵐》が効かないため、今回は採用していません。
 ただ、同型の打ち消し合戦には便利ですし、それこそURストームが流行り始めたらまた出番があるでしょう。ネオブランドにも強いですからね。
 《払拭》のほぼ上位互換です。


■おわりに


 というわけで今回はGP横浜で使用した青白タッチケイヤと、灯争大戦加入後の今使用しているリスト、そしてモダンホライゾン加入後の想像のリストを、それぞれ紹介しました。
 青白コントロールはモダンホライゾンでかなりの強化を受けたアーキタイプで、これから更にその数が増えてくるのではないかなと思っています。
 次にモダンのことをここに書くのは、ミシックチャンピオンシップ・バルセロナが終わった後になると思います。
 その時に良い報告ができるよう、頑張ります。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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