【すたヲタ】2019年USで最も大きく調達したスタートアップ7選
EVのムラカミ(@yu8muraka3)です。
今回は年末ということで、すたヲタ番外編でCrunchbaseがまとめてるこちらのレポートから、「2019年に最も大きく調達したスタートアップ」という項目があったので、この中から興味あるものを7社抜粋してまとめてみます。
Crunchbaseは僕が2019年最もアクセスしたWebサイトです。笑
有名なところも多いですが、意外と詳しく調べてなかった会社もあって面白かったです。
Knock - iBuyer型不動産取引プラットフォーム
Knockは不動産の即時買取サービスで、近年Opendoorを始め盛り上がっているiBuyer領域のスタートアップです。
iBuyerは不動産の売却プロセスを簡略化し、最短2日で取引成立を可能にするビジネスモデルで、「借金・離婚・死別・相続」等の安くても早く売りたい人を主なターゲットにしています。
従来のやり方で不動産を売却しようとすると、売り手と買い手の間にエージェントを立てて、「訪問査定・販売・内見・申込・交渉」といったプロセスが発生するので、平均3ヶ月の時間を要します。
それに対しiBuyer方式だと、売り手と買い手の2者が直接取引になります。これによって間のプロセスが「訪問査定・条件提示契約」となり、これだけで平均1ヶ月に縮まります。
ただ、これはこれまでにも存在する買取再販型と同様で、iBuyerが優れているのは査定をAI化することで、訪問査定も簡略化して最短2日で取引が成立するようになったことです。
そしてややこしいのですが、Knockは上記のiBuyerとはまた少し異なっており、買取保証に近い形です。(Opendoorはまんま上記のiBuyerモデル)
基本はiBuyerのモデルですが、
・ユーザーは即時買取してもらう前に6週間一般の販売活動も行うことができ、その間により高値で買ってくれる所を追求することができる
・売れる前からユーザーはお金を受け取れるので、すぐに新しい家に住むことができる
という特徴があります。
もしより高値の買い手が現れればそっちに売ることを選んでもよく、現れなければKnockが買取をします。
つまりKnockがセーフティネットになりつつ、高値での売却にもチャレンジできる方式となっています。
Knock 収益モデル&資金調達
OpendoorのようなiBuyerは、物件を取得してそれを転売をすることで、取得価格と売却価格の差額で収益をあげるモデルで、Knockも自らが物件を取得した場合はこの方法で稼ぎます。
また、より高値の買い手にユーザーが売ることを選んだ場合は、手数料で3-6%を徴収し、稼ぎます。
今年1月にシリーズBでFoundry Groupがリードで4億ドルを調達しました。
事業数値
売上高(2018年):4,000万ドル
取引数(2018年):2,000件以上(アトランタのみ)
Compass - テクノロジー不動産仲介会社
まずCompassの説明をする前に、USの不動産取引について軽く触れます。
USでは不動産取引をする際、買い手と売り手双方がエージェントを立てて取引をし、取引が成立すると両エージェントに2.5%ずつ仲介手数料を支払います。
エージェントは、その仲介手数料のうち15%ほどをエージェントを管理している、「Brokerage」と呼ばれる仲介会社に支払うといった二重構造になっています。
この構造に対して様々なアングルから参入している企業があって面白いのですが、Compassはその中でもエージェントからマージンを取らないモデルです。(REMAXという会社が元々近いモデルで存在。詳細は以下ブログ)
中でも集めるエージェントは、高額エリアのトップエージェントで、待遇がREMAX等よりも群を抜いて良く、マージン0に加えて
・億単位の移籍金の支払い
・ストックオプションの割当
・各都市にGoogle顔負けのオシャレなオフィス
を提供しています。
こうした高待遇が実現できるのは、VCから膨大な額を調達しているからですが、その調達はテクノロジー企業という軸で行っています。
しかし調達時点では、エージェント向けの業務システムすらもままならないテック企業とは程遠かったそうですが、トップエージェントを採用した事とテック企業的なブランディングで調達をし、その調達で評価額を引き上げSOでさらにトップエージェントを集めるという好循環を生み出したといいます。
Compass 収益モデル&資金調達
ただ、マネタイズに関しては「どうするのか」という声もあり、「Powered by Compass」というCompassのシステムをCompassが展開していない地域のエージェント向けに解放する試みもしましたが、抱えているエージェントから反発が生まれ頓挫したりしました。
今年6月にシリーズGでSoftbank Vision Fund等からPre60億ドルの評価額で3.7億ドルを調達しました。
事業数値
売上高:9億ドル
取引高:350億ドル
エージェント数:8000人
オフィス数:238箇所
展開エリア数:122都市
Flexport - フレイト・フォワーダーのデジタル化
まず前提として国をまたぐ商品輸送は、船舶・航空・鉄道・トラック等の手配から税関の手続きがありプロセスが複雑です。
そのため、世界には荷主から商品を預かり一連のプロセスを代行するフレイト・フォワーダー(貨物利用運送業者)という業者が万単位で存在していますが、彼らは紙や電子メール、スプレッドシートで管理していたり、各プロセスが分断されていて非効率です。
それに対しFlexportはデジタル化を進め、
・運送事業者や通関事業者の受託条件を検索可能なデータベースとして構築
・倉庫業者や輸送業者間のコミュニケーションや荷物のリアルタイムのトラッキングにも対応
といったシステムを荷主にWeb上で無料で提供しています。
こうしたデジタル化と依頼の受け付けから配達までを一気通貫で提供した結果、Flexportは大まかな配達予定日ではなく正確な配送日を提供できたり、データベースを用いることでもっとも安く、早く、手間のかからない輸送ルートを簡単に探し出せます。
また従来、物流会社への電話の40%が顧客からの問い合わせだったところ、デジタル化によってその40%を削減できます。
Flexport 収益モデル&資金調達
収益モデルは、上記のソフトウェアは無償で提供し、実際に品物が輸送されたときに料金を請求することで収益を稼ぎます。
さらに出荷データからリスクを算出し、代金回収までのつなぎ資金を融資する貿易金融も行っています。
今年2月にシリーズDでSoftbank Vision FundリードでPre22億ドルの評価額で10億ドルを調達しました。
余談ですが、FlexportとVision Fundは2年に渡り交渉していて、2017年に発表された孫正義の300年計画にファウンダーのPetersenが共鳴し、そこから一気に話が進んだらしいです。
Flexport 事業数値
売上高(2018年):4.41億ドル(YoY+95%)
顧客数:15,000以上
従業員数:1,066人
DoorDash - フードデリバリー
もはや説明不要のフードデリバリーのスタートアップです。
アプリから食事を注文でき、注文が入ると「Dasher」と呼ばれる配達員がレストランに取りに行き、注文者のもとに届けてくれるサービスです。
1月時点でマーケットシェアでは、GrubHubやUber Eatsを超えて27.6%と爆伸びし、現在では以下のようなシェアに。
この伸びの要因として挙げられるのが、積極的にパートナーシップを食事以外の様々な会社と結んでいることです。
2018年にはWalmartと提携し日用品のデリバリーを始めたり、宿泊施設と提携して宿泊者は無料でDoorDashを利用できるようにする等の取り組みをしています。
今年5月にシリーズGでDarsana Capital PartnersリードにPre120億ドルの評価額で6億ドルを調達しました。
事業数値
売上高(2019年):9億ドル
営業損失(2019年):4.5億ドル
GMV(2019年):80億ドル
Convoy - 運送のマッチングプラットフォーム
トラック版Uberと呼ばれる、トラックの運転手と荷物を運んで欲しい人をマッチングするプラットフォームです。
仕組みとしては、荷主がアプリ上にリストした運んで欲しい荷物の一覧から運転手が選び、ピックアップして運送が完了するとお金が支払われるといったものです。
全米の輸送トラックの走行距離の約35%が積荷がゼロの状態で、有効活用できていない現状を、モバイルアプリをベースにGPSやデータを使用し、従来のメールや電話で手配していた取引を自動化することで効率的にマッチングします。
Convoy 収益モデル&資金調達
Convoyの収益は、取引手数料から得ています。
YC出身で、Bill GatesやJeff Bezos、Marc Benioff、Drew Houston、Kevin Systromであったり、Baillie GiffordやT. Rowe Priceなど出資者のクオリティが高いです。
今年11月にシリーズDでT. Rowe PriceなどをリードにPre24億ドルで4億ドル調達しました。
事業数値
売上高(2018年推定):3億ドル
Knotel - 成長企業向けのレンタルオフィス
50人以上の企業向けにフレキシブルなレンタルオフィスを提供するサービスです。入居企業には、スターバックスやマイクロソフトなどの
従来だと10年以上の長期で賃貸する必要があったところ、Knotelは6ヶ月〜契約することができ、規模に合わせて柔軟に拡大・縮小もできます。
また、テナントに入る企業の代わりに内装や設備も設計・管理してくれます。物件に関しては、他の事業者と同様にKnotelが一括で借り上げて、貸し出すサブリース形式です。
WeWorkとの違いは、Knotelはフリーランスや超小規模の会社はターゲットから外れており、断っている点です。
事業数値
売上高(2018年):3,520万ドル
営業損失(2018年):2,320万ドル
オフィススペース数(2019年):224拠点
Root Insurance - 次世代自動車保険
以前自分が取り上げたので、これを元にまとめます。
Root Insuranceの特徴は、保険料の決め方です。
Root Insuranceのユーザーはアプリをダウンロードし、GPSをオンにした状態で2-3週間ほど車を運転します。
その間にRoot Insuranceがユーザーの運転データを収集することで、運転習慣や技術を測定。
それを元に運転の能力や頻度等をスコア化し、データに基づいて一人一人に最適な保険料を決定します。
トップ10%に入るくらい良い評価を獲得すると、最大52%自動車保険料が節約でき、平均的なユーザーは20%ほど、年平均1187ドル安くなるなど、不当に高い保険料を払わずに済みます。
収益モデルは、一般的な保険料をとる形です。
今年8月にシリーズEでDST Global等をリードにPre33億ドルの評価額で3.5億ドルを調達しました。
事業数値
保険収益(2018年):1.06億ドル
純損失(2018年):5,830万ドル
・・・
以上です!
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