ビジョンファンド2が投資するデジタル薬局ユニコーン「Alto Pharmacy」の創業ストーリーからビジネスモデル
EVのムラカミです。(@yu8muraka3)
先日SoftBank Vision Fund2等から2.5億ドルを調達して、ユニコーンになったデジタル薬局の「Alto Pharmacy」について調べたので、まとめてみました。
単に薬をデリバリーしてるだけだと思ってましたが、違いました。
Altoは新しい薬局
Altoは自らが薬局となり、アプリから薬をデリバリー・薬剤師に相談・薬の管理ができるサービスを提供しています。
なので小さな町の薬局を多数所有したりネットワークしてデリバリーしているわけではなく、大きな物流センターのような拠点を数カ所所有し、バックエンド業務をデジタル化することで、高効率なデジタル薬局を運営しています。
サンフランシスコ拠点だけで700万人の患者に対応できるそう。
このモデルは主に3つのプロダクトから構成されています。
患者向けアプリ「Alto Patient」
まず患者向けのアプリです。
ユーザーはこのアプリを使うことで、知識のある薬剤師に副作用など心配ごとを相談したり、配達のスケジュールを設定したり、薬を管理したり、薬の詳細を知ることができます。
さらにAltoは患者が最も安く薬が手に入れられるよう、クーポンを自動的に探したり、処方薬が保険でカバーされていない場合に医師と協力して代替薬を見つけてくれます。
これまでに節約した薬の費用は2300万ドルで、しかも配送手数料は無料です。
医師向けシステム「AltoMD」
AltoMDは、医師がAltoを使用している患者を簡単に管理できるようにする医師向けシステムです。
AltoMDの優れた点は、医療行為のワークフローを簡素化できること。
通常の病院では、薬局向けのワークフローだけで、医師ごとに週平均20時間の管理時間が費やされますが、Altoはペーパーワークを無くしたりと管理タスクを減らすことでヒューマンエラーの可能性を減らし、毎日平均3時間医師の時間を削減することができるようです。
さらに、Altoは治療の順守と全体的な医療体験の改善にもつながるので、医師と患者の双方にとってメリットがあります。
実際、業界平均30%しか患者は治療を順守しないところ、Altoを使用すると77%も順守します。
医師がこのシステムを導入するのに掛かる費用もゼロ。
社内システム「Wunderbar」
Wunderbarは、薬剤師とケアチームがワークフローを管理するために使用する社内システムです。また処方箋の注文を処理し、薬を用意するロボットも制御します。
創業ストーリー
Alto Pharmacy(当初Script Dash)は、Facebook傘下のデベロッパープラットフォーム企業Parseでソフトウェアエンジニアとして働いていたマッチュー・ガマッシュ・アッセリンとジェイミー・カラカーによって2015年に設立されたデジタル薬局スタートアップです。
彼らのバックグラウンドはヘルスケアとは無縁でしたが、技術を利用して人々の役に立つ領域は何かと探した結果、ヘルスケアに辿り着き、その中でも消費者に近い薬局産業でトライすることに決めました。
2人は早速Facebook広告を回し、処方箋を受け取り薬を届けるというシンプルなサービスを始め、最初の週に有料の顧客を獲得しサービスを提供することに成功。
さらにもっと薬局について学ぼうと、サンフランシスコにある地元の小さな薬局でインターンを始めます。
そこで薬剤師のビビアンから医師や保険会社、患者など薬局のバックエンドの作業の現場を教えてもらいました。
そしてある日、ビビアンが素晴らしい患者ファーストの仕事をし、患者もそれに感謝しているのを見て、この体験を何百万人の患者に広めるべきだと気付き、本質は薬のデリバリーではなく、本格的な薬局であると行き着きました。
ここでとった行動が面白く、彼らはシードラウンドで資金調達をした直後に、この50年以上ある小さなビビアンの薬局AG Pharmacyを買収します。
買収後、彼らは薬局で働きながら専門知識を深めることで、最初の年に薬局向けのOS・医師のコラボレーションツール・患者向けのアプリを作り上げました。
それから、シリーズA・Bと一年ごとにファイナンスを重ね2300万ドルを調達したシリーズBのときには、12,000人の患者に100,000件の処方箋を提供するまでに成長し、Script DashからAlto Pharmacyにブランド変更しました。
ファイナンスと各数字の時系列
2015年6月:ScriptDash設立 & シード調達
2015年8月(?):AG Pharmacyを買収
2016年6月:シリーズAでJackson Square Ventures等から6万ドル調達
2017年6月:シリーズBでGreenoaks等から1200万ドル調達(患者数1.2万人)
2018年12月:シリーズCでGreenoaks等から5000万ドル調達(患者数5万人)
2020年1月:シリーズDでSVF等から2.5億ドル調達(患者数10万人)
ビジネスモデル
Altoの事業モデルを見て分かるように、彼らが取り組んでいるのは高効率な薬局です。
単に薬をデリバリーしているわけではなく、バックエンドの効率化に強みを持ち、薬局の処方業務全体をデジタル化し運営しています。
なのでビジネスモデルは薬局と同じで、患者が支払った薬の価格と保険会社から支払われるお金の差額で儲けます。
ここでマネタイズをし、かつ薬局の物理店舗を持たない(数カ所の配送拠点だけ持つ)ことで、患者からの配送手数料や医師からのシステム利用料を取ることなくサービスを運営できています。
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