2019/3/1 J1第2節 川崎Fvs鹿島 レビュー

結果は1-1。
スタメンはこちら。

画像1

・FC東京の川崎戦の守備
 まずFC東京が前節の川崎を相手にどういった守備をしていたのかを紹介する。紹介するのは、撤退守備(ゴール前、ディフェンシブゾーン)まで引いて、ゴールを守る守備になったとき)の2パターン(白が東京)。

画像2


 SHが相手のSBにマンマーク気味についていく形。外側はSHに任せ、SBは内側に絞る。SH(久保、東)も、しっかりプレスバックする献身性がありタスクをこなしていた。

画像3

 もう一つは、ボランチが内側(CB-SB間)を埋める形。上記の図の場面では、高い位置に入った相手(水色)のSBにボールが入り、SBがでてきて、CBとの間にスペースができるが、そこをボランチ(右は橋本、左は高萩)が埋めていた。最終ラインに吸収されたところに逆サイドのボランチとSHが絞って、スペースが狭いエリアを作っていた。
 上記の2つの守備により、内側のスペースを埋め、チャンネルやニアゾーンといわれるCB-SB間を使われるのを防いだ。
 ただFC東京と自分がプレビューの対象とする鹿島の守りの原則(約束事)は違う。鹿島は前節でも書いたが、まず「人」を第一に守備をする。FC東京は、まずボールの状況に応じた「スペース」を第一に守備をするように見えた。
上記のボランチがカバーする守備も、相手についていったという選手の動きではなく、あいたスペースをカバーするといった守備に見えた。
 またこの日東京は、前線からボールを奪いにいくのでなく、ミドルゾーンでブロックを作り、中を使わせないようにコンパクトにしていた。この時もボールの位置に対し全体がスライドし、出ていった選手によりできたスペースに自然とカバー・絞る(原則)守備をしていたので「全体が手をつないでいる」ような守備だった。ただスペースの管理だけでなく、大まかにいうと、
 中央を使わせないポジションをとる
→狭いエリアを作る(サイドに誘導する、中でも)
→人にいく
という守備だった。
 鹿島も原則は違うが、東京同様、相手がボールを持つ時間が増える、また鹿島としても「まず守備から」ゲームを考えていくチームだが、どのようにゲームになったのか。

・川崎のビルドアップ
 この試合では、前線と違って前から追うことはせず、ミドルゾーンでブロックを作り、中盤の間延びやDFライン裏のスペースを使わせないようにしていた。それによって川崎の最終ラインは自由にボールを持つことができ、ボランチに対しては、鹿島の2トップ2人で門を作るようにパスコースを防いだ。
 これに対し川崎は、「3+1or2」の状況を作り、鹿島のファーストラインを越えようとした。2CB(奈良、谷口)・2ボランチ(大島、守田)・2列目の中村、家長が関与してきた。家長と中村は、自由に動き、ボールを位置がDFライン、中盤と前進していくにあたって、フリーマンとして数的優位を作るためのタスクを持っているように見えた。

画像4

図では守田がCB間に降りているが、「誰がどこにポジションをとる」という決まりはないが、なるべくこの「3+1or2」を作ろうとしていた。

鹿島としては一番使わせたくないのが、図でいう大島の位置(2トップの後ろ)で、2トップは間を閉めようとする。そうすると2トップの外側が空くため、川崎はそこを使おうとしていた。
ではなぜそこを使おうとするのか。2トップ脇(2トップの後ろも同様)へ運ばれると、中盤の選手を食いつかせ、対応せざるをえないから。3バック化した両脇の選手がドリブルで運んで、相手を食いつかせることができており、相手を動かせていた。

・先制点の場面
 先制点は、FKからだったが、CKの流れから、左サイドで小林がレオシルバを交わしたが、この時、CBの前のスペースに誰もいないため、後ろから守備した場面だった。CBも目の前の相手(5,9)がいるので出ていけない。ディレイしようもここは真ん中のため、何でもされてしまうが、ここのスペースを埋める意識がなかった。確かにボランチの選手はいなかったが、まず「相手を見る」ことが第一なので、他の選手でも「危ないスペースの管理」の判断が遅れたように見えた。

・鹿島のゴール前の守備
 その後、同点に追いつくも、川崎がボールを持ち、鹿島がカウンターを仕掛ける展開。鹿島はブロックを作っていたが、川崎がフリーマンを活かしながらの攻撃で、なかなかボールを奪う位置も低く、ゴール前まで前進されてしまう。
 川崎は、誰が幅を取り、内側に入るのかが、流動的で、だが被らないようにし、「相手の間、斜めにポジションをとる」ことを選手が行っているように見えた。なので流動的で、規則性がないように見えるが、結果的に5レーンになっているように見えた。
 鹿島は、その攻撃に対し、前回FC東京もボランチの選手が、CB-SB間をカバーしていたように、基本的には、ボランチがCB-SB間に入った選手に「ついていく」形で対応した。基本的にはであって、SHが戻ったりと、近い選手が対応していた(下図、38:15~のシーン)。

画像5

こちらは、ブロックを組んで守っている場面だが、39:56~のシーンでは、相手に対し横幅を広げられているため、いわゆるハーフスペースが空き、CBから一本のパスで通された。

画像6

しっかり横幅を使われ、5レーンに配置されるとこのシーンのようにどうしても内側が空いてくる。FC東京は、まずスペースの管理が第一に見えたので、ブロックを作っても、中や内側を使わせない(外はあける)ブロックのため、このような選手の間を通されることはなく守れた。しかし今の鹿島の守り方だと、どうしても選手の間を通されることはあるので、なかなか相手の攻撃を限定することはできなく、ゴール前まで運ばれるシーンが多かった。

・ボランチが最終ラインに加わることによる問題
 川崎が同サイドで中盤に人数をかけた際も、基本的にボランチが付いていく(下図41:17~のシーン)。

画像7

このシーンの前の場面でも、レオシルバがCB-SB間についていったが、守田がボールサイドによって来たので、永木がついていった。その後、小林にマイナスの折り返しが入るが、鹿島は相手に寄せているため手前が空いて、車屋にシュートを打たれた。
ボランチ1枚がCB-SB間へ入った選手についていくのもそうだが、5レーン(前線5枚気味)の相手に対して、このようにボランチが付いていくことによってバイタル(CBの前)が空く。「ゴールを守る守備」において、ボランチがついていく、という形で近年は落ち着いているが、ということは「4枚では足りない」ということ。いままでもボランチがいなくなったスペースをいままでも使われていたが、個人的には見直す必要があるのではと思っている。

・その後の展開
 後半も、依然として川崎が押し込みつづけ、鹿島は前に行くパワーもなくなっていった。
5枚気味でくる川崎は、鹿島の4バックを動かし穴を作る(下図59:09~のシーン)。

画像8

スローインから、馬渡が家長のランニングをおとりに中村に斜めのボールを入れたシーン。レオシルバが戻ったが、ズレを作られ、決定機に繋がった。

画像9

63:20~のシーンでは、家長がフリーマンとしてボールサイドにより、中盤で数的優位を作られ、相手に食いついたところを使われた。

このように川崎に振り回されてたが、全体が下がって後ろに重心を置いていたため、戻る距離が短くなり、またSHもプレスバックし何とか守ることはできた。ただ守備が攻撃に繋がっていたかというとそうではない。なんとか守ったが、勝ち越し点を取りに行けなかったというより、行かせてもらえなかったといえるだろう。

・おわりに
 読んでくださった方、ありがとうございました。鹿島の守り方が「全体で1つの生き物のように」でなく、「出たとこに対して、個々の頑張りで」守るものなので、振り回されたが、選手は本当に頑張ったと思います。今のチームのやり方を踏まえて「今できることはやった」というのが感想です。今のチームと相手を考えたときに「我慢、割り切って」戦えたことは、鹿島のこれまでの歴史を踏まえても良さといっていいです。ただ割り切ったうえで今回の戦い方では、「守備をするための守備」だけで終わってしまい、攻撃に繋がる守備もプランにいれなければ勝つことはできないでしょう。あとは自分たちがボールを持つ時間で何ができるか、川崎に勝つにはこれが必要だと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?