2019/3/9 J1第3節 鹿島vs湘南 レビュー

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 湘南は基本3-4-2-1。攻撃は、まず前(縦、裏)を見るというのが選手の原則として見える。ボールを失うことを恐れず、どんどん狙ってくる。湘南の曺監督はある記事で、
「サッカーに正解はないと言いますけど、『王道はある』のではないかと。ゴールは真ん中にあるわけで、そこに最短で行けば速いし無駄がない。それを直球とすると変化球も必要となります。けれども直球があっての変化球だと思うのです。直球で勝負できるのに走らない、パスを出さないのは違うだろうと。」(フットボール批評 2019 issue23)
とコメントしており、チームとして表現されています。
上記でいう「変化球」とは、「直球」前(縦、裏)に出せない時で、つなぐ場合は、WBが高い位置を取り、前線が5枚気味に。ビルドアップでは3バックでだけでなく、ボランチが1枚下がり、3CBの両脇のCBが幅を取り、WBが内側に入ったりと流動的にポジションを取る。5枚気味になり相手のDFの間にポジションをとってズレを作ろうとする。つないでる時も選手の頭には、「まず前」があり、つなぐことに固執せず、どんどんスペースを使うというのが原則として見られた。
守備では、前の試合(この試合も)でも、5-2-2-1のような形になり、5-4-1で守備的にというより、シャドーがあまり下がらず、前からプレッシングに行くときもあり、ブロックを引くときも内側のレーンを閉めるようにポジションを取る。そうなると中盤が2枚になり外側のスペースが空くが、そこはWBやボランチが出ていき、後ろがスライドする。ボランチ(菊地、齋藤、松田)の守備範囲が広範囲になるが、運動量、機動力があり成立させており、このように攻撃的に守備も行うといえる(下図:緑が湘南)。

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・立ち上がりからの鹿島の守備
 鹿島はこの日も、ミドルゾーンでブロックを作り、中を閉め、外回りで前進させようとしていた。FWはボランチへのパスコースを切り、相手のDFにはプレスをかけない。鹿島の2トップの外側へ、3CBの両脇の選手の持ち上がりには、SHが出ていく形をとった。
 対し湘南は、まず山崎がターゲットとなり、安西と競ろうと流れたり、安西の裏のスペースを狙ってきた。鹿島は、相手のビルドアップ、ゴールキック時は町田がマンマーク気味についていき対応していたが、ついていけなくとも安西が競り負けなかったり、裏への対応もできていたと思います。
つないでくる場面では、ロングボールをけるときもそうだが、鹿島の2トップに対し3枚のDFのため、幅をとり前進することができ、SHを食いつかせ、WBへのパスコースを作れていた。連動してプレスをするならば、WBに鹿島のSBが出ていく場面だが、WBもSBが出ていずらい(距離がある)位置に立ち、前を向け前進することができていた。
 鹿島としては遅れてでていくため、できたスペースを使われたりと、ゴール前まで相手の前進を許していた。湘南にDFラインとWBのところでミスマッチを上手く生かされていたと思う(下図、40:30~のシーン)。

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このシーンでは安西が遅れて出ていき、その裏に入った武富→岡本→野田がシュート。安西が出ていきレオシルバがボールサイドの相手を見ているが、岡本がクロスをあげた先は、バイタルに人がいなくなっている。
これが今の鹿島の問題の1つだと思っており、前節のレビューでも書いたが、鹿島はCBとSBの間に入った選手に対し、ボランチが下がり5枚気味になる、もしくはCBがででボランチが空いたスペースに入る選手につく形で対応している。そうなるとボランチが一枚外に弾かれるのでバイタルが空きやすい傾向があり、そこ使われたシーンだった。

上記のシーンの永木が遅れて戻った位置に少なくとも一人はいるべきだと個人的には思っている。これまでは残っていたボランチ1枚の両脇をつかわれることもあったが、jリーグでも前線5枚気味で、相手の間にポジションを取るチームも増えているので、鹿島は今後もボランチが一枚降りる形で対応していくことになるであろうが、今後の対戦相手もこの守り方を対策し攻めてくるかもしれない。

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鹿島としては、ゴール前まで前進はされるが、跳ね返し長い距離のカウンターでゴール狙う。湘南は3バックの両脇のCBやボランチ1枚がどんどん前に出てくるので、スペースがあり、一気にゴール前まで前進するシーンもあった。

・後半開始から先制点の分析
 湘南の岡本が退場し、後半からボールを持つシーンが増える。湘南は守備時5-2-2の形で、鹿島ボールになると一気にゴール前までラインを下げ、ゴールを守る守備から相手を前へ引き出した。
 鹿島としては、ボックスの脇をねらい、ぺナ角、サイドの深い位置を取ろうとするのが、原則でありプレーモデルのようなものだ。相手が2トップで中を閉めているので、外経由で攻撃になってしまい、外ばかりで相手を動かせづつまってしまう。
相手が引いたなか、まず前進するにあたって、2トップの外側のスペースがとれない。2トップの後ろに入る選手がいなく、相手の2トップが開けるからだ。
そんな中の先制点は、前の場面から、中盤で中央につけたりと相手のFW、MFの4枚を動かしている。この場面では(57:23~)、レアンドロが降りて来て、外に開いたレオシルバがリターンし、レアンドロが相手の2トップの後ろをとる→降りてきた伊藤へ縦パス→安部→レオシルバへ。ペナルティの角あたりから逆の大外の安西へのクロスからだった。
2トップの後ろはなかなかボールが入らないので、外側を取るべきと個人的には思っているが、今まであまり使っていなかったので、逆に相手の2トップが開いたのでそこを使うことができた。そこから縦につけたことで、相手の中盤が中に食いつき外側が空いた。

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レアンドロが細かいが相手を引き付け、伊藤の受けに来るタイミングもよかった。相手の中盤が2枚なのでスライドが間に合わなかったのもあるが、ペナ角で持てば、相手の体の向きがそちらに向くので、安西がでてきたところは相手にとって死角になる。山本脩人も同じ形で得点を取ってきたが、あの形が鹿島にとって目指しているプレーなのだろう(下図、上記の図の続き)。

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ここで言いたいのは、結果的にであるが、「相手を引き付ける」、「縦につける」、「幅をとる」といった攻撃の原理ができていたといたということ。レアンドロが流れの中で降りたのも、本人は考えていないでしょうが、ビルドアップで相手からしたら嫌な位置で受け、運び、縦につけた、伊藤が深さをつくった、SBが幅をとったことによる得点だと個人的には思っている。
鹿島は相手が引いたときに、DFラインから相手を引き付けスペースを作っていくことをせず、とりあえずSBにつけての外一辺倒の攻撃がこれまであったと思う。これでは相手の意識、視線が変わらないので崩れていかない。今回は相手の2トップに対し2CBのままで2トップの後ろにも選手がいないので、幅が取れず、ボールを運べないのでパスした先で攻撃が詰まっていた。今回はレアンドロがビルドアップの起点となってくれたが、それも偶発的というか個人の発想によるもので再現性があるかといえばそうでない。再現性をあげるには攻撃の原理を「結果的に」でないように、選手に原則を与えるのが必要ではないか。
 鹿島はリスク管理が徹底されていると思うし、両SBが高い位置をとるので、どうリスク管理をし、引いた相手にどうビルドアップするのかは今後も見ていきたいと思います。

・その後の展開
 湘南は依然と、相手ボールになったらまずラインを低くし、鹿島は、特に中盤が2枚のサイドからは前進はできている。ペナの脇へボールを進めるが、そこからどのようにするのかが見えてこなかった。
 鹿島がボールを失うと、鹿島もラインを低くし、中を閉め、大外をあける守備をしていた。外を開けているので、外から前進されクロスを入れられてはいたが、しっかり戻れてはいたので、スペースは狭く、選手間の距離も短いのでシュートブロックをして「跳ね返しつづける」という守備をしていた。

・おわりに
 呼んでくださった方ありがとうございました。鹿島は今後も今日のような戦い方に安定すると思ってます。
・ミドルゾーンでブロックを作り、中を閉め、外回りにさせる
・前線が5枚気味で、4バックの間にポジションを取ってくる相手には、ボランチがさがる
といった形で戦うのではないかと思います。
また前も書きましたが、鹿島の守備は「全体でというより、個人が局面で頑張る守備」なので、ミドルゾーンで引っ掛けてカウンターというよりかは、特にボールをつないで相手を動かしてくる相手には押し込まれながらのロングカウンターが多くなるかと思います。jリーグにも5レーンを意識したチームが増えてきました。川崎戦のように「割り切る」だけでは、鹿島の目指す順位にはどうなのと思うところはあります。
また今回は数的優位に助けられましたが、相手が引いたとき、または鹿島にあえて相手がボールを持たせてきたときにどうするのか。今後も注目していきたいと思います。

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