東京オリンピック サウジアラビアvsブラジル 分析 ブラジル代表について

 こんにちは。馬目裕也です。

 今回はWindtoshさんの企画で、「東京オリンピックアーカイブ企画」をご紹介していただきました。

 自分は東京オリンピック グループD サウジアラビアvsブラジルを振り返り、ブラジル代表について分析してみたいと思います。
 ブラジル代表が各局面でどのように戦っていたのかをわかりやすく説明していきます。このブログを見てもらえれば、ブラジル代表がどのようなサッカーをしていたのかがわかるようになっています。

 今大会のブラジル代表ですが、グループDを2勝1分、勝ち点7で首位突破し見事優勝を果たしています。
 サウジアラビア戦は、結果は1-3でブラジルの勝利でした。
 14分にマテウス・クニャ(ブラジル)、26分にアル・アムリ(サウジアラビア)、76分にリシャルリソン(ブラジル)、90+3分にリシャルリソン(ブラジル)が得点しています。

 まずは両チームのスタメンから。 

今回はブラジルの各局面どのように戦っていたのかを

・ブラジルがどのように守備をして、そこからどのように攻めに転じたのか
・ブラジルのビルドアップ(DFラインから中盤まで)から、フィニッシュワーク(中盤からDFラインを越える)において

の流れで説明していくので、そのような局面のつながりをイメージしていただきたい。

1.守備からボール奪取からの攻撃について


1-1.守備について

・守備時のシステムと基準、見えた約束事
 守備(ボール非保持の時)の場面では、システムは4-4-2だった。
 守備にいく高さで2種類の守備を使い分けていた。中盤から高い位置での守備と、自陣に引いてからの守備である。
 守備の基準は、ボール状況を第一に守備をしていたように見え、最初から出るのではなく構えて守備を始めていた。
 そこからコンパクトにし選手間にパスを通されないという意識はそこまでなく、むしろ人を意識した守備に見えた。
 特に縦パスが入った時は、相手の体の向きもゴールに対して背中を向いている
ため、人(自分のマーカー)に対して強く出ていく場面が多かった。縦パスに強く出る、マーカーについていくというのは、チームの原則(約束事)としてあったのかもしれない。

・中盤から高い位置の守備
 相手がゴールキックやスローインといった低い位置でビルドアップする場合は高い位置からプレッシングを行なっていたが、基本はミドルゾーンで構える守備がベースだったのではないかと思う。上記の通りの人を意識した守備をする中で、最初から人に強く出るわけではない。
 ボール中心に立ちながら、そこからバックパスを合図にプレスをかけに出ていた。

・自陣での守備とSHのタスク
 前半は特に2トップも自陣まで下がり、自陣でブロックを組んだところから守備に入る場面が多かった。
 そこからここでもバックパスを合図にプレスにでて、最終ラインも上げて行った。ミドルゾーンでも自陣でもただ構えて引き込んで奪うだけでなく、前に出る守備も持ち合わせていた。


 また特徴的だったのは、SHのタスクだ。
 SHが相手の幅をとっている選手(WB)に対してボールが出たら戻り、SBを外に出さないようにしていた。そのためSBは内側に入る相手のシャドーを捕まえられるようになる。
 これによってSBが釣り出されて、SB裏を使われたりしてゴール前に人数が足らなくなることを防いでいたと思う。


1-2.ボールを奪ってからの攻撃について

・技術を活かした低い位置からの前進
 自陣での守備の時間も多く、上記の通りSHが戻る守備で深い位置まで前進はされる場面は少なかった。ただそういった守備だと自然とボールを奪う位置も低くなる
 そこからどのように攻撃に転じるかというところで、ロングカウンターではなく、低い位置から短くつないだり、ドリブルを交えながら前進を図っていた。序盤は奪ったところから蹴ってしまう場面もあったが、徐々に低い位置から短くつないで前進できたのは、ブラジルの選手の技術の高さがあってこそだと思う。相手はカウンタープレスで即時奪回しにくるが、奪われず相手を外しながら前進していく場面が増えた。

・守備にいく高さは、中盤からと自陣とで2種類あり、構えたところからボールを取りに出て行く守備も仕込んでいた。
・自陣ではSHを外に戻し、SBを出さないことでゴール前の人数を確保していた。
・奪ってからはロングカウンターではなく、技術を活かしてつなぎながら前進していた。

2.ブラジルのビルドアップからフィニッシュワークについて


2-1.相手が構えている場面でのビルドアップ

・配置について
 攻撃時(相手が守備の体制に入った際)のシステムは、4-2-2-2、4-2-4気味だった。
 ビルドアップではまず幅の取り方が変わっていた。
 右サイドは前半は、SHのアントニ(11)が幅をとり、SBのダニ・アウベス(13)  が内側に入っていた。後半からSHにマウコム(17)が入り、左利きでカットインするプレーが増えたため、13が外側をオーバーラップする場面が増えたと思う・
 左サイドは、低い位置ではビルドアップをサポートするように、SHのクラウジーニョ(20)が幅を取り、SBのギレリュメ・アラナ(6)が内側に入っていた。ボールが前進すると、20が内側に入り、6が外側を上がっていた。
 この辺は右も左も整理されているように見えた。

 2ボランチも縦関係になったり、斜めにずれたりすることはなく、基本2ボランチの横並びのままビルドアップする場面が多かった。
 また2トップも基本横の関係のままで2トップといえる配置、SHは上記の通り、幅をとったり内側に入ったりするが、2トップ同様高い位置まで入っていくことも多く、流動的だったと思う。
 4-2-2-2、4-2-4といえる、あまり可変を行わない配置だったのではないかと思う。


・中に入れ込む意識
 ビルドアップで特徴的だったのが、中に入れ込む意識が高かったことだ。
 サウジアラビアが守備時5-4-1であったが、1トップの裏のスペースを2ボランチが使っていた。ここに入れ込むことで相手も晒されるようになり、プレッシャーがかけにくくなり、ブラジルとしてはどこにでも展開できる。

 あまり可変を行わない配置から、簡単にサイドに回さず、中に入れ込み、1トップの裏のスペースを使うことで、敵陣に前進することができていた。

2-2.フィニッシュワークについて


 フィニッシュワークでは、3つの特徴があった。

・中に入れ込む意識
 ここでも中に入れ込むパスが多かった。簡単に浮き球のクロスを入れず、中でのコンビネーションを狙っていたり、もしくはサイドを変えるプレーがあった。中に入れ込むことはリスクはあるが、中に入れ込むことでより相手のズレを狙える。ここでも2トップ+2列目が絡み、技術の高さを見せていたと思う。

・フリーな選手ができてからの背後の動きだし
 もう一つは、2トップ+2列目のランニングである。中に入れ込んで、相手のDFラインの前(ライン間)でのプレーだけでなく、きれいに通った場面は少なかったが、ボール保持者が前を向いたら、特に相手の両脇のCBを動かすように、両脇のCBの背後、WBとの間から裏だったり斜めへの動き出しを狙っていた。

・シンプルなクロス
 これは最終局面で、深い位置まで進入できていない場面でも、ボックスの中に選手がある程度入ってきた場合は、さらに深い位置をとりにいくよりも、シンプルにクロスを上げている場面が多かった。
 ブラジルの選手も相手のDFラインが下がりボックスの中に入れる状況になったと見るや、クロスを受ける体勢を整えていたように感じたため、相手をボックス内に押し込んだら、シンプルにクロスをあげるのが共通認識であったのかもしれない。クロスをあげる方がさらに深い位置を取りにいくよりも、フィニッシュまでいかないリスクが少ない。

 ・攻撃時の配置は4-2-2-2、4-2-4気味。
 ・ビルドアップの配置は幅の取り方は両サイドとも整理されており、2ボランチも2トップも横並びのままで、あまり可変をさせない配置だった。
 ・中に入れ込む意識が強く、相手の1トップの裏のスペースを使っていて前進していた。
 ・フィニッシュワークでは、中に入れてからのコンビネーションとサイドチェンジ、2トップ+2列目の裏への動きだし、ゴール前に人数がいる時はシンプルにクロスを入れることが多い
 ことが特徴的だった。

 このような形でブラジル代表を振り返ってきました。いかがだったでしょうか。
 東京オリンピックにおいて優勝を果たしましたが、個人的には優勝するにふさわしいチームだったのではないかと思っています。
 この記事で書いたロジックの部分は意図を感じましたが、個人的に大きかったと思うのがそこまで緻密にしすぎていなかったことです。それによりブラジルの選手の技術の高さや良い意味での自由さを発揮していたのではないかと思います。
 対象的に準優勝のスペインは、緻密なサッカーでなんとなく皆さんも想像がつくと思います。それはそれで、これまでのスペインの文化やスペイン人の特性を活かしており正しいと思います。
 ですので緻密だからいいというわけではないなと思います。そこはサッカーをする選手の心理を考えてサッカーを組み立てていくことが必要だと感じました。そういう意味でブラジル代表は、ブラジル人の良さ+ロジックがいいバランスで噛み合ったからこその優勝だったのではないかと思います。
 以上です。ありがとうございました。

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