2019/2/23 J11節 鹿島vs大分 レビュー

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・鹿島のプレッシング
 鹿島は、SHの遠藤、安部が高いポジションから、大分の3バックの両脇のCB(29、6)に対してのアプローチを、前からのプレッシングのスイッチ(始まり)とした。2トップは、相手のボランチ(32、44)へのコースを切るポジションから、主に伊藤が5に対しアプローチする。相手のWB(7、23)へは、SBがアプローチし、大分のビルドアップに対し制限をかけた。

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・大分の狙い①
 前からのプレッシングに対し、GKも含めてボールをつないでくる。前から行った分当然後ろが空く。大分はシステムのミスマッチを活かし、シャドーの伊藤、小塚がWBに出ていった鹿島のSBの裏などサイドに動く。鹿島はミスマッチ上伊藤に対しては基本は永木、小塚に対しては基本は犬飼が見ており、19:29~のシーンでは永木を中央から引っ張り出した。鹿島は前プレをはめようとするには数的不利のため、主にレオシルバがボランチを捕まえに行くため、ライン間(MF-DFの間、バイタル)にスペースを作ってしまう(下図)。

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また7:29~のシーンでは、小塚がSB裏に流れ、犬飼を引張り藤本が楔を受けている。失点シーンを考えたら危ないといえる場面だった(下図)。

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・大分の狙い②
  上記で示した19:29~のシーンと似ているが、大分は「縦のオーバーロード」により、何度もボールを前進→チャンスを作って見せた。
「縦のオーバーロード」とは、「意図的に相手の前プレを誘発させ、中盤の選手を前に引張りだし、ライン間(バイタル)もしくはCB裏にスペースを作り出す」戦術です。マンチェスターシティー、チェルシー、バルセロナなどボールを大事にするチームが主にとっていますが、大分もこの日、明確な相手の前プレを「どのように」回避するか、ボールの出口を示していました。
 10:18~のシーンでは、その前から鹿島がSHがプレスのスイッチをかけ、GKまでプレスをかけ切ってくる。その際ボランチの前田、ティティパンが下がりボールに寄ることで、レオシルバが前に出てきたためライン間にスペースができ、そこを小塚が使おうとした。ボールは藤本に入ったが、後方にも大きなスペースができており、実際入れ替わり決定機となった(下図)。

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 2失点目も同じように、大分のゴールキックから相手の前プレさせ、ライン間にスペースを作り、GKがしっかり狙ってそこに蹴っている。スンヒョンもハーフエーラインを越えて迎撃したが、入れ替わり失点につながった。
 このように大分はシステムのミスマッチを活かし、全員が同じ絵を描いて前プレではめられた際の、プレス回避を明確に持っていた。鹿島の方はビルドアップ時にはめられた際、なんとなくや苦し紛れのボールが多く、明確なボールの出口が見えなかった。

・鹿島の問題(守備)
 上記の図の場面や他の場面でも見られたが、大きく空いたライン間に入る選手に対し、CBがハーフエーラインを越えて人につくのは、チームの原則(約束事)に見える。上記の10:18~のシーンでも、犬飼は原則に従ってついていき、スンヒョンが入れ替わったが、スンヒョンの対応や犬飼の判断がどう、の前に、裏への対応が優れる選手がいない鹿島にとってその原則がはたしてチームに適しているのか。

・先制点を振り返る
 先制点は、ロングボールのこぼれを拾われボランチの間を通され、スンヒョンが出ていったスペースを突かれた失点だった。相手が1トップ2シャドーで、鹿島が2CBのためミスマッチが起きている。
 鹿島は人(相手)を見るのが原則で、プレーする上で何を最初に認知しようとするか、鹿島の場合相手だ。
この場面では、スンヒョンがライン間で受けた伊藤に対し出ていく。その後犬飼は目の前の小塚に対し意識がいき、体の向きも小塚のほうを向き、背中(スンヒョンが空けたスペース)をとられ藤本に使われ、安西も中への判断が遅れ、スンヒョンが出ていったスペースを埋める意識がなかった。
これもDFの対応が、の前に、選手は原則を基準にプレーした結果であって、言及するなら選手の判断の大元にある原則がどうなのかを考えるべきだと個人的には思っている。このやり方だと、ミスマッチを作られたり、川崎などのようにパス&ゴーを繰り返し、「スペースを作って、使って」くる相手に対し後手を踏むのは過去の試合でも起こっていた。

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 失点シーンや上記の10:18~のシーンのように、鹿島は前からプレッシングに行く形は持って入った。しかしずっと前プレではめ続けるのはほぼ無理で、
・前プレに対し相手が前線にハイボールを蹴ってきたとき
・前プレをはがされたあとの撤退守備
・非カウンターのリスク管理
これらが「なんとなく」人に対応する形になってしまっていた。
442を続けるのなら、そういった場面の守り方を見直す必要があるのではないか。

・鹿島の問題(攻撃)
 鹿島は「サイドを起点に」がチームのコンセプトのようなものになっており、この日も2トップの一枚やSBが、ペナの脇といったサイドをとることで相手のCB(29、6)をつり出していた。
 個人的に5バックをどう崩すかは、「5バックの外から2番目のCB(29、6)を手前に引っ張るか、外にはじき出す」だど考えています。誰かがしっかり幅を取り、WBを引き出し、その裏(ペナの脇)を取ることで外から2番目のCBを外へ弾くことができ、またMFとDFの間にポジションをとりCBをつり出し、そのCBを空けたスペースを使うことが重要だと思ってます。
 40:33~のシーンでは、遠藤がWBを引き出し、山本が流れの中でその裏に入り、岩田(29)を引っ張りだした。しかしこれによりできた、29と5(3CBの中央)との間のスペースを使えていなかった。

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 60:40~のシーンでは、相手のWBとCBの距離が空き、スペースができていたが使う選手はおらず、「なんとなく」攻撃している感じだった。

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 上記した「出来たスペース」を使っていた場面もあったが、それは個人の判断によるものに個人的には見えた。チームとして「誰が」「どこを」「何のために」が共有されておらず、再現性がなかった。終盤は相手もラインを下げスペースが狭くなった中、より「同じビジョンを持つ」ことが重要だと考えている。

・伊藤翔(+セルジーニョとの関係)
 伊藤は(ボールのないところで)頻繁にDFラインと駆け引きしており、深さを作りDFを下げさせるプレーをしていた。これによりできるライン間を今後うまく使っていきたいところ。本人も裏に抜ける選手が少ないとコメントしていたように、去年は2トップ2枚とも手前に下がったり、外に流れたりと、深さを作れる選手が少ないと感じていた。伊藤が裏を狙いセルジーニョが手前に降りるや、サイドに流れた際も片方は中央で駆け引きしており2トップの関係性は良く見えた。

・おわりに
 呼んでくださった方、ありがとうございました。なかなかのボリュームになってしまいましたが、今後もできる限り鹿島についても書いていきたいと思います。チームとして「同じ絵を持っていない」、個々が個人の判断でプレーし一つの生き物になっていないことがすべてです。
 相手に対しこうするといった「戦術」も大事ですが、チームとして基本はこう戦うといったことを、より細かく具体化(こういう場面では基本はこうする)といったチームの原則(約束事)を考え直すことが必要なのではないかというのが個人的な意見です。

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