緊急自動車 法令関係(消防Ver.

道路交通法39条では、緊急自動車を「消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう。」と定義しており、詳しくは政令(道路交通法施行令)に定義されている。

法第39条第1項の政令で定める自動車は、次に掲げる自動車で、その自動車を使用する者の申請に基づき公安委員会が指定したもの(第1号又は第1号の2に掲げる自動車についてはその自動車を使用する者が公安委員会に届け出たもの)とする。

1. 消防機関その他の者が消防のための出動に使用する消防用自動車のうち、消防のために必要な特別の構造又は装置を有するもの

1の3. 消防機関が消防のための出動に使用する消防用自動車(第1号に掲げるものを除く。)

1の5. 医療機関が、傷病者の緊急搬送をしようとする都道府県又は市町村の要請を受けて、当該傷病者が医療機関に緊急搬送をされるまでの間における応急の治療を行う医師を当該傷病者の所在する場所にまで運搬するために使用する自動車(2008年6月本号追加)1の6. 医療機関(重度の傷病者でその居宅において療養しているものについていつでも必要な往診をすることができる体制を確保しているものとして国家公安委員会が定める基準に該当するものに限る。)が、当該傷病者について必要な緊急の往診を行う医師を当該傷病者の居宅にまで搬送するために使用する自動車

届出(特定の消防用、救急用)の場合も同様で、都道府県公安委員会に届出を行い、受理を示す書面により登録手続をした後、自動車検査証の写しを提出して緊急自動車届出確認書の交付を受け、該当車両に備え付ける。

指定を受ける自動車の多くは特種用途車両の要件を満たしており、8ナンバー(現在は800ナンバー、軽自動車にあっては880ナンバー、かつては80ナンバー)を交付される。ただし、現在、いわゆる覆面パトカーについては、警光灯が格納式や着脱式となっているため特種用途自動車(警察車)の要件を満たさず、3ナンバー・5ナンバーのものがほとんどとなっている[10]。また、医師派遣用のドクターカー(患者を乗せず、医師が現場に駆けつけるために使用するタイプのもの)も3ナンバー・5ナンバーのものが多い。消防用の緊急自動車のうち大型特殊自動車に分類されるものは9ナンバーとなる。

警光灯 - 前方300メートルの距離から点灯を確認できる赤色のもの

サイレンの音の大きさ - 前方20メートルの位置において90デシベル以上120デシベル以下であること(後略)(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第231条2号)。

車体の塗色 - 消防自動車は朱色とし、その他の緊急自動車は白色。ただし、例外規定により、この制約を受けない緊急自動車も数多く存在する。

消防用車両とは「消防用自動車以外の消防の用に供する車両で、消防用務のため、政令で定めるところにより、運転中のもの」をいう(道路交通法41条の2)。緊急用務に運用可能な消防用自動車以外の車両が該当する。具体的には消防用の原動機付自転車、自転車、リヤカー等の軽車両、被牽引車、トロリーバスなどが挙げられる。

一部地域で、消防団が使用する動力消防ポンプを積載したリヤカーに手回しサイレンを搭載したものが存在する。基本的に緊急走行中の取り扱いは緊急自動車と同様であるが、自動車では無いことから、一般車両の避譲方法が異なり、適用除外となる項目が異なる。

緊急自動車の通行区分等
追越しをするためその他やむを得ない必要があるときは、第17条第四項の規定にかかわらず、道路の右側部分にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。

法令の規定により停止しなければならない場合においても、停止することを要しない。この場合においては、他の交通に注意して徐行しなければならない。

とあり、状況に応じて道路の右側にはみ出して走行(逆走)ができる。また、交通信号機の信号ほか法令の規定により停止すべき場合(進行妨害となる場合、横断等のため歩道等に進入する直前、停留中の路面電車後方、踏切の直前、横断歩道等の直前、横断歩道等付近に停止中の車両の側方通過時、一時停止の標識、交差点等進入禁止など)にも停止しないことができるが、その場合は他の交通に注意して徐行しなければならないとされている。また、シートベルトの着用義務も免除される。

緊急自動車の優先

道路交通法第40条により、軽車両を含む緊急自動車以外の一般車両は、緊急自動車の進行を妨げないよう進路を譲らなければならない。より具体的には、交差点やその付近では交差点を避けたうえで道路の左側(一方通行の道路で、左に寄せることが緊急自動車の妨害となる場合は道路の右側)に寄せたうえで停車し、それ以外の場所では左側に寄せなければならない。路面電車は交差点を避けなければならない。怠った場合は道交法違反「緊急車妨害等」となる。

また、多くの緊急自動車は公務として運転中であるため、これを故意に妨害すると、歩行者を含め公務執行妨害罪で検挙される場合もある。

緊急自動車等の特例

道路交通法第41条により、次に挙げる同法の各条の適用が除外される。

第八条第一項(通行の禁止等)

第十七条(通行区分)第六項(通行禁止部分)

第十八条(左側寄り通行等)

第二十条(車両通行帯)第一項及び第二項

第二十条の二(路線バス等優先通行帯)

第二十五条(道路外に出る場合の方法)第一項及び第二項

第二十五条の二(横断等の禁止)第二項(指定横断等禁止)

第二十六条の二(進路の変更の禁止)第三項(道路標示)

第二十九条(追越しを禁止する場合、二重追越し)

第三十条(追越しを禁止する場所)

第三十四条(左折又は右折)第一項、第二項及び第四項

第三十五条(指定通行区分)第一項

第三十八条(横断歩道等における歩行者等の優先)第一項前段及び第三項(横断歩道等に接近する場合の減速、手前での追抜き禁止)

最高速度の適用も一般車両より緩和されて、緊急走行時の最高速度は時速80キロメートル(令12条3項)、高速自動車国道の本線車道のうち、対面通行でない区間は時速100キロメートル(令27条2項)である。

交通違反取締のための緊急走行は、最高速度を超える違反の場合に当該違反車両と速度を同等の速度で走行して速度を計測する必要があるため、この限りではない(法41条2項)。警察庁は、この際、赤色灯を点灯させることを推奨している。

また、赤信号や一時停止標識の前では停止しなくてよいものの、その代わり、徐行して安全確認を行う義務があるなど、緊急走行だからといって、あらゆる交通規則の適用から除外されるわけではなく、緊急自動車運転者はむしろ更に高度な安全運転を義務づけられていると解釈される。道路交通法および同施行令の適用除外事項が同法に定められており、緊急自動車の種別によって異なる。

駐車

道路交通法で緊急自動車とはあくまで「運転中のもの」と定義されており、駐車している場合の規定はない。このため、各都道府県では条例により駐車禁止の除外を定めている(パトロールカーが駐停車禁止に抵触し、運転者の警察官が反則金告知を受けた実例が多数ある)。

ほとんどの都道府県公安委員会規則において、「緊急自動車だから」と言う理由ではなく「刑事捜査や交通取締り、消防活動、水防活動、人命救助、公共インフラに関わる緊急の活動をしている」という理由で駐車禁止から除外される。そのため、駐車中に赤灯を点灯させておく必要はなく、そもそも緊急自動車の要件を満たす必要もないので、駐車違反とはならない。

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