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「出来た!」を積み重ねる

〈2022年10月に私の教室の会員の皆さん向けに書いたコラムです〉

さて今回の内容は、いくつかの教室でお話ししましたので、最近聞いた覚えがあるな…と思われる方が多いかもしれません。この話をしようと思ったきっかけは、心身統一合氣道の創始者:藤平光一先生の著書『氣の実在』を読んで感じたことからです。この本は、藤平光一先生の直筆の生の言葉で書かれた、心身統一合氣道の原典のような書籍で、大変お薦めです。私自身、何度も何度も繰り返し読んでいるのですが、何十回目かで読んでいるのに、こうしてまた改めて氣づきが生まれます。是非、多くの皆さんに手に取って読んでいただきたいと思っております。

そこで書かれた内容は、実は目新しいことでも何でもなく、私自身も皆さんに何度もお伝えしている「折れない腕」の氣のテストです。こどもクラスの保護者の方など、ご存じない方にも分かる様に説明します。テストされる方が、立ち姿で片手を前に出します。テストする人は、この腕を両手で、肘関節で曲がるように力一杯曲げます。この時テストされる人が、曲げられまいと力んだり、虚脱状態でいると、片腕に対して両手で曲げますので、簡単に曲げられてしまいます。しかし、土台の姿勢がしっかり安定した状態で、指先から遠くへ水がほとばしり出ているようなイメージでいると、力んでいないのに、驚くほど強い腕になります。大人がこどもに両手で腕を曲げにいっても、ビクともしないほど強くなります。これが「氣を出す」という状態です。これが出来るためには、「自分の氣が出ている」と信ずれば良いだけです。私の教室の現在の会員の方、ご年配の方から幼稚園児まで、全員出来ます。これが、「折れない腕」です。肉体的な力だけでなく、心の力をしっかり使うことが、これほど強いのだ、ということを知っていただける実験方法です。

例えば講演会の様な、合氣道教室とは違って、初めてお会いするような人が集まる場でこれを実演して見せ、皆さんにやっていただくことがあります。ほとんどの方は、順を追って説明すると、その場で出来る様になります。それぐらい、当たり前なことです。しかし、時折ですが、これがなかなかうまくいかない人がおられます。そういう人は、心の中で、「そんな簡単に出来るわけがない」、とか、「みんなが出来ても私には無理だ」、なんて考えている方が多いようです。しかし、先ほど書いた様に、これは幼稚園児でも出来るぐらい、簡単なことで、本当はその人にも出来ます。実際に、少しアプローチを変えてみたり、実際に手で触れて修正したりすると、そういう人も必ず出来る様になります。「出来ない」と思っていたのが、「出来そう」と変わり、実際にやってみて「出来た」となるわけです。一度コツをつかめば、もう大丈夫です。

このように、「折れない腕」は、熟練の技でもなければ、名人芸でもなく、誰もが持っている人間本来の力です。しかし、皆さんこれに氣づくと、「自分にはこんなすごい力があったのか」と驚きます。心身統一合氣道の稽古の中には、こういうことがたくさんたくさんあり、何度も行ってそれを確認・検証して、潜在意識レベルでこれを理解する、つまり信念となっていきます。

こうして、会員の皆さんには当たり前に出来ることである「折れない腕」、なぜ出来るかというと、「出来る」と思っている、信じているからですよね。先ほど出てきた、講演会などで時々おられる、なかなか出来ない人は、「出来ない」と思ってしまっているから「出来ない」わけです。このことの「差」が、私にはとんでもなく大きくて、そして大事なことだと思えています。

何か新しいことに直面した時に、「いやこれは無理だ」と考えて、実践することが出来なければ、それは一生「出来ない」ことのままになります。しかし、「まあそのうち出来るかな」とか、「わからんけど、とりあえずやってみよ」、と思える人は、まず実践してみます。分からないことがあれば、どうしたら出来るのか、出来る人に訊いてみたり、調べてみたりして、何とか出来る様になるために必要な努力をすることが出来ます。「いずれ出来るだろ」、そう思えていれば、失敗した時には、「ではどうすれば良いのだろう?」と疑問を持って、それを解決するために必要な行動をとることが出来ます。「無理だ」という考え方が強い人だと、ちょっとやってみてうまくいかなければ、「やっぱりこれは私には無理だ」と考えて、やめてしまいます。つまり、「出来ない」が確定するんです。
「出来ないからやらない」と決めている状態、「出来ると思って努力しているけど、今はまだ出来ていない」という状態。
どちらも、現時点では「出来ない」という同じ状態です。しかし、後者の場合は、努力を続けますので、正しい努力を見つければ、いずれ「出来る」に反転します。
この両者の差は、はじめに「出来る」と思ったか、「無理だ」と思ったか、の違いです。プラスのイメージを持つか、マイナスのイメージを持つか、の違いです。とてつもなく大きな差異を生むものだとは思いませんか?

別にこれが、あえて直面する必要のないもの、例えば私にとって、今から鉄棒の大車輪をやる、というような課題であれば、「出来ない」と思って放っておいても、人生に恐らく何の影響もないことでしょう。(多分。。。)しかし、仕事であるとか、家事や子育てであるとか、健康を保つことであるとか、といった、生きていく上でどうしても直面せざるを得ないことであればどうでしょうか。「私には無理」と思って、「出来ない」を固定化させておいて良いものでしょうか?

難しいからやらない、そう言って放置するわけにはいかないこと、誰にでも直面することはありますよね。そんな時に、「まあ知らんけど、とりあえずやってみたら、何とか出来るんじゃない?」と思えること、とても大事なことです。「あ、私なんかには無理です」なんて、逃げるわけにはいかない場面ってありますよね。
ここで大切なのが、過去の経験で「やってみて、出来た」ということを積み重ねていることです。「出来た!」をどれだけ積み重ねてきたか、ということが、自分に自信を持つことにつながり、そういう人は未知の領域にでも、プラスの心で取り組んでいけるでしょう。「出来る方法はある」「出来る様にするために、何とかする」というマインドで物事に臨むから、実際にそれは何とかすることが出来るものです。

私は特にこども達にこのことを伝えたいと、改めて感じております。心身統一合氣道の稽古では、「折れない腕」や「持ち上がらない身体」など、他にもたくさんの方法で、一見出来なそうなスゴいことが、自分にも出来る、という体験をしてもらいます。これは、大人でも同じです。「自分にはこんなスゴい能力があったのか!」という氣づきがたくさんあります。技や受け身でもそうです。外の人が見たらびっくりする様なスゴい動きが、稽古を続けているうちに色々と出来る様になっていきます。
「出来た!」を積み重ねることで、潜在意識に「やれば出来る」をたくさんインプットする。これを続けていくうちに、プラスの心が溢れ出してきて、それは周りの人たちにも伝染していく。
中年になってから合氣道を本格的に始めた私自身が、これを体験してきています。今もまだその真っ只中です。もうすぐ50歳ですが、進化が続いているのを実感出来ています。大人の皆さん、まだまだ全然遅くはありませんっっ!!

稽古を通じて、是非皆さんの中に「出来た!」を積み重ねていってください。そして「やれば出来る!」を信念レベルに育てていきましょう。「心が身体を動かす(マインド オーバー マター)」です。マインドが変われば、マター(事実・現実)が変わります。自分や周りの皆さんの潜在意識をプラスでいっぱいにしていくこと。これからも稽古の中で、心がけて参ります。是非、皆さんご一緒に、そんな世界を作っていきましょう!

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