死兆星と呼ばれた男

エピソード2  虚の揺り籠

女性の声『教授ーー?あ、またこんなに散らかして何度も片付けて下さいって言ってるのに!!今回は論文は出来そうなんですかー?えーと、何でしたっけ?確か、人類の何とかかんとか、、、。』

助手の声で深い眠りから目を醒ます。
辺りはレポートと書類の山、いつもの私の仕事場だ。

私『人類のルーツとその未知の可能性だよ。三葉君、いつも悪いねぇ(笑)今日は何のようだい?論文はまだ出来てないのだけれども。』

私がそう言いつつ、書類の山を片手間でかき分けて彼女の顔を覗き込む。
すると彼女は少しだけ困った顔をしつつ微笑む。

三葉『もう、ただでさえ変人だの変わり者だのと回りからは言われたい放題なんですから、今回の論文はちゃんとした物なんですか?前回は確か、、そう。超能力を人が手にする方法とか言うしょうもない論文だったし。評価も最低だったんですから、、。私がどれだけ恥ずかしい思いをしてその場に居たと、、、、。まあ、良いですけど、今回こそ真面目な物ですよね?』

そう彼女は少しだけ不機嫌そうに言う。
私は困った顔をしつつ、彼女に今回の論文のテーマを丁寧に説明する事にした。
私が今回テーマにしたのは[人間のルーツとその未知の可能性]だ。
内容は主に歴史に登場した数多の英雄や変人、狂人、奇人それら歴史の節々に突如として現れては偉大な功績や奇跡を起こした人達。
彼らは突如として人間の歴史に現れては特殊な能力を発揮して当時の歴史にその名を刻み付けた。
例えば、天候を予測し人々を天災から守り導いたと言われる卑弥呼だ。
彼女は占いや空の様子を予測し、その人間離れした直感で未来予測に近い能力を発揮した。
その他にも似た力を扱った者、例を挙げるとすれば有名な所で、平安時代にその特殊な能力を発揮したとされる安倍晴明だ。
彼もまた、陰陽道や天文道と言う人間離れした超常的な力を使い人々を助けたと言う逸話が現代にも伝わっている。
海外でも、例を挙げるとすれば死から蘇ったと逸話の残るイエス·キリストや数多の兵を薙ぎ倒し人間を凌駕する圧倒的な武力を持って居たと言われる呂布、その美しさは人を狂わすと言われたクレオパトラなど、その他数多のこの世界の特異点とも言える人間離れした超常的な何かを持った者達が混沌とした時代に必ず登場している。
そんな彼らを私は敬意や畏怖を込めてこう言おう、人の枠組みを越えた先にいる者達、そう超越者と。
そして、そんな彼らは何故、突如としてそんな力を手に出来たのか。
また、何故彼らだったのか。
そもそも、彼らも元は同じ人間だ。
だったら私達にもその力が眠っていてもおかしくないと言うのが今回の論文のテーマ。
そう、人間の可能性である。
そして、その可能性を何故私達、凡人には手にする事が叶わなかったのか。
彼ら超越者と私達凡人の違いとは?
そこまで言うと彼女は難しい顔を更に渋い顔にしてこちらを見てくる。

三葉『うーん、、、。で?結局、教授は何を言いたいんですか?面白い考えだと思いはしますけど、、、。』

私はそんな彼女に溜め息を吐くと。

私『、、、、要するにだ!。彼らが持っていたその力は私達がもつ本来の力の一端で、それら全ての力を使いこなせる人間がもし現れたらそれは歴史的にも私達のルーツを知る事に繋がるんじゃないかと言う事だよ。』

そう私は熱く彼女に語ってみせた。
すると、彼女はまた困った顔をして首を捻ると。

三葉『、、、、ハイハイ。それで?まーた、怪しい事考えて。今回は人間のルーツは神様だったとか言い出すつもりですか?何でも出来て、何でもある。そんな存在が居たら今頃この世界はとんでもない事になってますよ(笑)アニメや漫画、オカルトじゃあるまいし。』

そう言うと彼女は笑いながら呆れた様子で研究室を出ていってしまった。
取り残された私はまた一人天井を見上げつつ一人言を呟いた。


人間のルーツが神様かぁ、、、あながち間違って無いとしたら、、、。


そこまで言うと、顎に手を当てて私はまた深い思考の海へと沈んで行った。
今回の論文はまた同僚や他の者達から笑われるそんなお伽噺なのかも知れない。
でも、もし、この世界にそんな存在が生まれてきたとしたらその彼、彼女は何をするのだろう?そんな事を考えつつ私はまた目蓋を閉じた。

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