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『自分を羨む。』



1.『エセ大学生』


真上の電線にいるすずめも
見上げて右側の木の上にいる大量のカラスも
まだ歓声をあげていない朝、
1日がはじまる。



大学生。

それは最後の学生生活で
勉学にも遊びにも最高に充実している
人のことを呼ぶ。

熾烈な受験戦争を終え、一呼吸を置く暇もなく
始まった大学生活。
この期間で人は大きく変わるらしい。
らしい? 
らしい。



僕は八王子市の大学に通う1年生。
毎朝片道
映画一本分の時間をかけて
大学に通っている。

趣味はサッカーと少々のポーカー。
ということもあり
体育会サッカー部に所属している。

体育会サッカー部。
大学全体から集めたサッカー大好き小僧の
巣窟である。

週5の活動で行われる
練習、試合、
緻密に練られた戦術ミーティング、
今の生活の中でサッカーは
8等分したショートケーキの
12切れ分くらいを占めている。

大学のテスト期間なんて関係ない。
テスト前日も当日も当然のようにある部活。

今回の期末は数学のテストが7コあるなんて
なんぞやと言わんばかりにハードな練習。


そしてモンスターを片手に徹夜する朝方。

からの電車でバインダーでルーズリーフを
ばちっと挟んで
テイラー展開をする通学時間。

テストの次の日は倒れるように寝る。
こんな日々を過ごしているのである。



2. 『華の大学生』というパワーワードと現実



華の大学生。
大学デビュー。

そんな言葉があるのは知っているだろうか。
高校の時まで勉強付けだった人たちが
大学に入っておしゃれや遊ぶことに目覚める
ことをいう。

高校の頃の仲の良い友達は
金髪メッシュのツイストパーマのセンター分け。
みたいな子が多くを占めた。

久しぶりにご飯を食べに集まった時に
鏡に映った自分を見ると
すこし寂しい気持ちになった。

今まで同じところに立っていたはずなのに
斜め上を走り抜けるような、
隣にいるのに遠くにいるかのような、
感覚に陥った。 


話を聞くと
彼らの生活は
飲み会と合コンとバイトで
毎日が忙しい日々だった。
あと、大学の授業と。


大学に通っている。

それ以外彼らとの共有点もなく
なにか別の星に来たかのような
楽しい話をたくさん聞いた。


それに対し、面白い話を話すことができない
自分が悔しかった。

そんな自分はたわいもない
部活に明け暮れている話を
なにも盛ったり隠すことなく全て話した。

すると彼らはとても羨ましがった。
羨ましいのはこっちだというのに。


なぜだろう…。

不思議に思ったまま
1人夜道を
黒い海に浮かぶ上弦の月を
見上げながら
ゆったりと歩いた。

3.『あなたが私で私があなた』

家に着く少し前に
ブランコひとつしかない
小さな公園がある。

時計台はちょうど0時を回ったところだった。
そこで少し疲れた僕は
ブランコに一度座った。

目を瞑り、
座ったままブランコを思い切り
漕いだ。
30秒経った頃には
ブランコを止め、ため息を吐きながら
うつむいた。



話を聞いているときは
羨ましかった。

昨年までは同じところにいたのに、
と妬んだ。

ぼーっとしながら
そこでもしそんな生活だったらなと考えた。


よーく
一緒に話したことを思い出した。


『俺今月10万稼いだわ』
これに対しそんな稼げたらな、と思っていた。

しかし
時給が仮に一千円だと仮定すると
1ヶ月で百時間働いているわけである。

これは絶対大変だし、
膨大な時間である。
笑って楽しいところを多く話していると
気がつかなかったが、
その陰に努力があるのである。

さらに彼の指には
絆創膏がしてあった。

イタリアンレストランでバイトしている彼は
料理で指を切ってしまったらしい。
今ならわかるが
あの絆創膏一枚が彼の努力の結晶である。


他人から羨ましがられ、
周りからよく見えるようにふるまってはいるが
彼自身大変なことも多くあるだろう。


そこで目を開けた。
そして自分が話したことも思い出した。


バイトは週一の4時間。
未だに親のすねをかじっている。

そして筋トレや走りのトレーニングで
毎日が筋肉痛のような状態で
必死にサッカーの練習についていき、
友達と
今日もしんどかったな、と笑いながら
帰る。

大学も都会のところに通っている
皆とは違い全部対面授業。
少数精鋭の学科のみんなとも
仲良くなり、
部活の練習後は
数学合宿と名付け、
一人暮らしの友の家で一晩中数学をやる。

電車でスマホをいじる周りを横目に
バインダーに紙を挟み
ペンを進める。


忘れていた。
この道に進んだ理由。
体育会の部活という厳しい世界で
戦っているわけ。


理解ができた。
彼らが羨ましがった理由。

その瞬間、
彼らとは別の 
僕の星がなによりも光り始めた。


4.『あなた』は素晴らしい

Instagramのストーリーズをみる。
皆楽しそうだ。
あーディズニーに行っているのか、
カラオケ楽しそう…。


そんな中自分があげている投稿は
楽しそうに見せている
懸命に考えた10秒の動画。

閲覧者が増えることだけを
確認してすぐにアプリを閉じる。

そして他の人に嫉妬する日々である。
共感できる人もいるだろう。


今のあなたならわかるだろう。
皆同じだ。
あなたと同じで周りに見せたい。

自分が幸せでいいだろ〜!
羨ましいだろ〜!
との気持ちで。


実際蓋を開けてみたら
そんなことはない。

皆同じだ。
もちろん楽しいこともたくさんある。
でもその陰で、インスタには
決してあげない裏で辛いこともたくさんある。

あなたのインスタをみて
羨ましがっている人もいる。

結局他人を羨むことは
自分を羨むことと同値なのかもしれない。
それに気がつかないだけである。


あなたの人生。
僕が羨ましがっている。

僕の人生。
皆に羨ましがられている。


自分の人生。
自分で羨ましがれ。


それに気がつくと、
暗闇の公園で1人、
拳を上にあげた。

そして月夜に照らされながら
1人全力で走った。




5.あとがき

今の世の中は自分が思ったことを
気軽に周りに伝えられ、
情報を発信できる時代である。
それゆえに周りに流されやすい。

そしてたわいもない周りの人の
ことが気になり、
時間だけが過ぎていることが多いだろう。

実際あなたが思っている以上に
周りの人だけ
幸せということはない。

他人の幸福を羨むのではなく、
自分の『今』が大切で楽しいことに
気がつくことが
本作の伝えたい本質である。


さいごに
これは読みやすさを重視して
かなり端的に書いている。
この作品のロングverが書けることを願っている。


そして読んでくれてありがとう。










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