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沖縄、3日目(石垣島攻略チャンネル)

 

やけにシュウマイが美味かった

 今日はツアーの3日目、各人の自由行動日なため石垣島の有名な箇所を抑えて回る流れに。
 初めに訪れたのは平久保崎灯台である。ここは石垣島の最北端に位置する。灯台なため、当然周囲にはその光輝を遮るものがない。故に風通しも良く、というか良すぎて午前中にしてセットした髪の毛がおじゃんになってしまった。

 次にパンケーキショップに立ち寄るのだが、そこに行き着くまでに車内で流れていたラジオ、その番組内の選曲が記憶に濃い。1970〜80年代のロックバンドの特集をしていたらしく、「The House of the Rising Sun」というアニマルズの曲が流れていた。その年代の海外のロックバンドまで守備範囲なわけでは当然無く、「perfect days」という役所広司主演の映画の劇中歌として流れていたため聞き覚えがあったのだ。ヤシの木に挟まれた道をレンタカーで走りながら、古臭いロックミュージックを聞く。心地の良い時間だった。  
 そして、パンケーキショップだ。かなり辺境にあり入店した際は客もそこまでおらず、マイナーなのかなと思いきや、正午を過ぎたあたりから外国人やら若い女性やらがゾロゾロと入店してきたため、多分SNS上で話題なのだと思う。実際、パンケーキは美味しかったし、店内の雰囲気も良かったのだが、食事が出てくるまでに30分かかるしバナナパンケーキを頼んだはずなのにマンゴーパンケーキが出てきたりと不満な点もあった。回転率が悪い店だったので、正午前に入店できたのは正解だった。

味は良かった

 そして、次に訪れたのは石垣やいま村。ここはリスザルとの交流と、伝統的な民家の数々、希少種の動物や、島特有の植物の見学ができる場所だ。
 猿との邂逅。サイズは小さく、動きは俊敏、木々を自在に移動し、気を抜くと人間の身体に乗り移ってくる。私は動物が苦手なので、この場にいるだけでかなり精神をすり減らした。足元を走っていく彼らに一々ビビり、木の枝をくぐる際には彼らが離れているタイミングを見計らう。エサをあげなくても近付いてくるのだ。彼らはこの世に生を受けた時から人といるため、警戒心というものが皆無。エサをあげようがもんなら、身体中に何匹も飛び乗り、キャットタワーならぬ人間サルタワーが完成してしまっていた。人間も生物種としてはサルなのだから、ただのサルの密集地帯であった。
 

見ている分にはかわいい

 飼育員が入ってくると、猿以外に近付いてくる奴らがいた。カラスである。終末か?というくらいバサバサと群がってくる。低空飛行部隊と通常部隊に別れており、一瞬にして飼育員の周囲を囲っていた。それを目にして、私はその場を離れた。ここは私には早かった。
 次に訪れたのは石垣島鍾乳洞。記憶が正しければ実際に目にするのは初めてで、その規模の大きさと自然に煌めくそれに夢中になっていた。というか、夢中にならざるを得なかった。私は閉所恐怖症なため本来ならこのような閉じていて、かつ暗い空間を好まない。今自分が置かれている状況を冷静に分析してみると、鼓動が早まってしまう。戦略的に意識を鍾乳洞へと向けていた。そのお陰で集中して見れた側面もあるし、結果的には良かったのだが、サルといい閉所といい、3日目はボスラッシュである。そして、それはまだ続く。
 
 

夕食、親の金じゃないと絶対に頼めない値段をしていた

 そして問題の時間である。のんびり星見クルーズ、それが当初の予定だったはずだ。スポットへ向かう前に通話相手らに呑気にそう告げていたのを覚えているのだが、実際は異なる。というか、予定をねじ曲げられたのだ。
 歪曲の海人(うみんちゅ)の出現である。彼は20歳前半くらいの決して身体を鍛えているでもなさそうな青年。標準語も余裕で操る接しやすそうな男、と見えた。語尾に「スねっ!」を付けるチャラい態度の割に、スポットに向かうまでの車内では様々な物や動物についての博識さを見せ、態度や外見から見せる印象とは裏腹にやるじゃん!と思った。例えるなれば、武井壮に性質は近いのかもしれない。ある分野にだけ知識が強い的な。
 雲行きが怪しくなったのは、車を走らせて20分ほどして彼の店に到着した際である。「あー、今日曇ってて星見えないかもッスねっ!ジャングルツアーに変更しますか!」と一言。驚いてる暇もなく、ジャングルに入るための装備として長靴と手袋を持ってきた彼は、行き先を見晴らしのいい丘から山の中のジャングルに変更し車を走らせた。2度目になるが、私は動物が苦手である。ジャングルツアーに変更してからの彼は島に住む危険生物の話をしてくれた。基本的に大丈夫ッスね!と彼は言うが、私が例外になる可能性を考えているのは伝わっていなさそうであった。というか、ビビる奴は大抵自分のことを例外だと思っている。島に住み、それを生業としているお前には分かるまい。
  心の準備が出来ないまま到着。車外に出ると「みゃー」と何かの鳴き声が聞こえた。あ、猫さんかな?と私が和んでいると、「野生の孔雀ッスねぇ!」と。クジャクってミャーって鳴くんだ。ってか野生の孔雀!? 魔境すぎる。
 

ジャングルへの入口

 そもそも22時過ぎから森に入るの怖すぎるという話で、星を見るならいいけども予定変更が入ったせいで……。
 とりあえずガイドの指示に従い森へ。手すり代わりと思しきロープは5メートルしか無かった。ガジュマルの枝を階段代わりにして降下していく。道行く間に出会う生物の解説を交えてくれるのは助かるのだが、危険かどうかは配慮で黙っていても良かったのではないか。デカい蜘蛛の死亡率とか言わなくても良かったのではないか。
 目的はヤシガニ探し、デカい個体になると体長2メートルのものもいると言う。ヤシガニのハサミに挟まれたが最後、骨と肉をいっぺんに断たれるという話だ。幸い、動きがありえないくらいトロい、かつこちらから手を出さなければ敵対行動をすることもないらしいのでそこは少し安心した。

発見したヤシガニ

 その後イノシシやらハブやらにも会ったのだが、ビビった以外の感想が無い。イノシシは4人家族でほっこりした。
 3日目は個人的なボスラッシュで体力的にも精神的にも摩耗した。でもたまには冒険も悪くないと思ったし、後から思い返してみる分には良い体験だったなと思う。

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