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ひとよばな

 
 
 
一夜(ひとよ)なんて贅沢は言わない
 
一度きりでいい
 

 
咲き誇るなんて高望みはしない
 
ひっそりと開けばそれでいいから
 

 
今だけでいい
 
その身のすべてを委ねて欲しい
 

 
この時だけでいい
 
この身のすべてを奪って欲しい
 

 
何故、もっと早く
 
何故、あのときに
 

 
どうして、今になって
 
どうして、あのときに
 
 
 

 
 
 
ひっそりと心の奥底に閉じ込めていた
 
長く長く燻っていた想い
 
 
気づいた時には傍らにいた存在に
 
いつしか抱いた別の想い
 
 
兄妹のようにと思っていたはずなのに
 
ひとりになった今になって甦る想い
 
 
 
━あの時
 
伝えることが出来なかった弱さは
 
 
貫けなかった想いより
 
押し切れなかった柵より
 
 
そのどちらより
 
あまりにも無力で
 
 
 
開かれた心の扉からは
 
激流のように溢れ出す想いが二人を押し流す
 
 
 
触れ合う肌が
 
混じり会う汗が
 
 
二人の空白を重ね
 
 
 
溶け合う吐息が
 
重なり合う鼓動が
 
 
二人の想いを交わえる
 
 
 
━やがて
 
 
震える身体が
 
乱れて止まる呼吸が
 
 
流れる一筋の滴となり
 
 
二人の年月を押し流した
 
 
 

 
 
 
このとき限りに咲く一輪の花が
 
ひっそりと見守る宵のひと時に
 
 
 
 
 
 
 

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