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ねぴふぁび完全版に寄せて〜ござござした感想文


 これは、2022年4月29日に開催された「NEO PIANO Far Beyond 」通称「ねぴふぁび」というピアノイベントのアーカイブ配信が始まったことを機に、2022年11月30日にnoteにTwitterをまとめていたものです。
 と言っても、わたしは音楽関係者ではありません。文筆業でも音楽に詳しいわけでもない、一般人に過ぎず、このときは現地に行っていない後ろめたさがあります。しかしながら、ござさんの煌めくような才能を書き残したいという一心で書いています。

 もともとTwitterだったためほぼござさんのことしか呟いておらず、他の出演者様に失礼に当たるのではないかと思い、そのまま「Twitterまとめ」という体にしていましたが、2023年8月現在、そのTwitterの動向が分からず、文章化しました。また、ござさんのこのところのご活躍を見るにつけ、私的にでもコンサート記録を残しておいて、新規(でも新規でなくても)ござさんファンに楽しんでいただけたら… あわよくば、アーカイブ終了前に配信を見ていただけたら…と思ったものです。
 間違いや記憶違い、現場で見ていらした方からの追加情報等がありましたら、優しく教えていただけますと幸いです。

 追記: この「NEO PIANO Far Beyond 完全版」(以下「ねぴふぁび」) アーカイブ配信は2023年11月22日まで。コンサートだけではなく、出演者の後語り(アフタートーク)もあり、お得感満載。イープラス様で有料配信中ですので、もしご興味があればぜひ(関係者ではありませんけど一応)。

1 Jacob Kollor&ござ「クレオパトラの夢」

 クレオパトラの夢。
 ジェイコブさんとの初コラボ曲。ジェイコブさんに呼ばれてござさんが登場。下手から登場し下手にいるジェイコブさんの前を通るのに頭を低くしながら舞台を横切る腰の低さ。
 ベージュで、前立てがワインとの比翼仕立てになってるシャツに、同じくベージュのパンツ。髪はウェーブにして、ニコニコ登場したのがうれしい。
 「ござさんとのコラボを楽しみにしていた」というジェイコブさんの言葉は真実味がある。その証拠に、コラボ曲はジェイコブさん曰く「コテコテのジャズ」(どこでそんな単語を覚えるの!というくらいの日本語力がまずすごいし、事実コテコテのJAZZ)だった。
 言葉数多くない2人だけど、椅子に座った瞬間の最初の一音から持っていかれるめちゃくちゃかっこいいすばらしいJAZZ2台ピアノ!!!このコンサートにご出演の方はみなさまそうだが、音楽を通じて意思疎通できる2人なのだろう。

 テーマはござさんから。音色が4人4色、と本公演中にMCでおっしゃっていたけど、それを味わえる1曲。
 ござさんの音はぱっと華やぎがありつつ、一音一音くっきり硬質な音。セカンドピアノのはずなのに、ござさんが弾くと素晴らしく低音が響いてくる。ホールで聴いたら本当素晴らしかっただろうなぁと思わせられるようなグルーヴ感。
 この日はとんでもない大雨の日で、代わりに行ってもらった友人は、みんなだいぶ濡れてたよと教えてくれたけど、この熱いステージは、濡れそぼった観客を自家発電であっためるような勢いがあったのではないだろうか。
 代わったジェイコブさんは、繊細で軽やかにテーマをスタート。2人の演奏スタイルの印象がわりと真逆だったので面白かった。そこから徐々にテンションを上げ、ダイナミクスコントロールの効いた壮大なテーマ。ジェイコブさんのアルバムでも聴いたけど、それとはまるで違うアレンジ。「夢」と聞いて、dreamを想像していたら、実は野望(ambition)だったのかと誤読しそうな「クレオパトラの夢」だ(笑)
 その間ござさんの下のベース音が心地よく力強く響いてくるの本当尊い…

 ござさんのアドリブパートは、あの細い体から出ているとは思えないほどの自由で力強い音の厚み。裏拍を縫っての軽快でラテンな情熱的な夢世界が展開される。
 というか、こんな疾走感あるクレオパトラの夢聞いた事ない(経験少ないだけ)。ともかくラテンのリズムが心地いい。
 さらにすごかったのは、ラストに向けてそもそもめちゃくちゃ速弾きな上、すごく短いスパンで上下入れ替わる掛け合い。16小節くらい?でグリッサンドして、プリモとセカンドの上下が替わる。2台ピアノでの上下の早入れ替わり?こんなのあるの?という息ぴったりのアレンジ。2人のアイディアなのだと思うが、すばらしいものを見せてもらって満足!
(筆者注:2023年8月現在、ござさんによる2台ピアノのプリモとセカンドの早入替が見られるのはこの「クレオパトラの夢」だけ。その後、菊池亮太さんとの「ファランドール」でも披露されたが、いつかアーカイブ配信されることを切に望んでいます)

 戻ったジェイコブさんのテーマ、メロウで美しい…からの速弾き&またしても入れ替わり合戦!!!ともかくもジャズの面白さが満載の異次元アレンジで、ござさんの多彩な手の動きに見惚れて口開けてるうち終わるから、何回見直したかわからない。
 この曲、わりとグルーヴ感難しいというか表拍刻みがちな演奏が多い気がする中で(個人の感想です)、疾走感あるラテンのリズムが繰り返され、新鮮で大好きなアレンジ。
(素人の感想なので、全然違うかも…有識者の方間違いあればご指摘をお願いします🙏)

2  ござさんソロ「花」

 ござさんのターン。曲紹介の後、ご自分の1stアルバム『EnVision』にも所収の、滝廉太郎作曲の「花」。このゆったりとしたテンポ感…グルーヴたっぷりのJAZZの楽曲から、この日本的楽曲のはっとするような温度差がござさんならでは。
 ござさんは、努めて?なのか、ほかの人との明確な差の一つとして日本の楽曲(童謡や民謡や演歌などまで)をコンサートの選曲の一つに入れ込むことが多い。
 今や、ござさんの代名詞にすらなりそうな初回の「ねぴらぼ」における「ソーラン節」は言うまでもなく、オリジナル1stアルバム『EnVision』所収のこの「花」も極めて理知的に再構成されたすてきなアレンジの楽曲に生まれ変わっているのである。
 サビのクレッシェンドの中で和音が移り変わるのが、時間が移ろっていくのを表現していて心地よい。なだらかな川のきらめきまで感じて心つかまれる。

 「花」に心掴まれてる方がわたしのTLでは多いし、実はわたし自身もそうだったが、もるさま(@morurina0 )が「演奏の度に違う」と書いてらして、ああそうだなと過去の自分のツイを追いかけてみた。

これnote初出ではTwitterそのまま貼り付けていたのですが、今後Twitterの動向が読めないので画像で貼り付けます。以下同じ。
EnVision発売当時のツイート。
これも画像なのほんともったいない。ござさんの「夏は来ぬ」大好きなの…
2021年当時はTwitterでさらに長々語っていました。
変わって2022年ござの日感想ツイート。

 自分の感想をここまで振り返ってきたとき、ねぴふぁび版「花」の魅力の輪郭がくっきりした。
 クラシック、キエフの大門という重めのテーマ、懐メロJAZZ、クレオパトラの夢…という流れを受けてのソロパートの1曲目「花」は、邦楽の可能性を示してみせたのかも、と。
  7/8拍子という変拍子のひねりは残しつつ、CDに比べてテンポをグッと落としてゆったりと弾いてらっしゃる。1番は、わりと右手をシンプルに、滝廉太郎さんの曲の美しさがそのまま味わえて、日本の美と作曲家へのリスペクトを示してる。
 2番では、保続音を右手の親指?でずっと弾きながら、メロディのリハモにもしていてCD版に近い、ゆったりふくよかな「花」。
 間奏では、徐々にテンポが早まる。川の早瀬の飛沫のような速弾き!観客の期待がときめきに変わり、鼓動も早くなる。3番。またテンポが戻ってゆっくりになるんだけど、このあたりもすごい。観客もご自分も鼓動が早まっているわけだから、そんな中でテンポをコントロールできるのがほんと神!右手のメロディに内声を入れて、複雑な美しさ。ソロピアノの可能性を充分に感じる「花」…これは心打たれるはずだ。
 「花」や「Danny boy」は、コンサート毎にアレンジや編成が違うから、常に一期一会。だけど、この #ねぴふぁび ver.は間違いなくわたしのフェイバリットに入る。

ねぴふぁび完全版アフタートークより。

3 ござさんソロ「Danny boy」

 Danny boy。キラキラ増しのイントロ。オルゴールを聴いているかのような夢の中にいるような、印象的で優しいスタート。ジャジーで跳ねる軽やかな1周目。
 間奏は、抑制の効いた心地よいウォーキングベース。2周目はテンポを落とし転調。全体的にノスタルジーを感じるシンプルな演奏。
 ねぴふぁびのソロピアノのDanny boyは、作曲者不明のこの曲のメロディの美しさをキラキラふりかけで引き出すことと、アドリブの展開のおもしろさに集中している気がする。音そのものを楽しむかのような演奏だと思う。
 実はダニボを選曲したことについては、ござの日2022のツイでめちゃくちゃ語っていたので、それを貼り付けておく。

これもnote初出ではツイートをそのまま貼り付けてリンクを辿れるようにしていたが、画像で添付します
ござの日2022は、ダニボの後に「そして鐘が鳴る」だった。含みのある選曲に泣いた。

 2022年は、2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、世の中はコロナ蔓延…そんな中「今演奏するなら」とござの日の冒頭で語っていたござさんの言葉に、いろいろな解釈をしてツイートしたのが上の画像。

 一方、今回のねぴふぁびver.はレトロな雰囲気を宿していて、素朴。この素朴さは、原曲の親心を否が応でも思い出させる気がする。出兵する我が子を思う親心だ。楽曲。だから、2022年のコンサートにDanny boyは常にセットされていたんじゃないかとわたしには思える。
 菊池さんの「キエフの大門」と対の、「Danny boy」の仕掛けオルゴールのような構成に、ござさんの深い思考を見る。


4 ござさん×ストリングス隊「小フーガト短調」

 ここで、「秘密」に進められていたストリングス隊が舞台に登場。ストリングス8人と指揮者が入っての2曲は、「小フーガト短調」と「清新の風」。ストリングスの皆さんとは当日合わせただけというから、まずござさんの冒険心と胆力に拍手を送りたい。
 9人が入り雰囲気が変わる。ジャズからのクラシックへの切り替えスマート。ござさんって、チューニングというか相手に合わせ呼吸を読みながらその時の最高の音楽を仕上げていくセンスが抜群にいいのだと思う。こころに音叉があるみたい。
 ストリングスが重層的にフーガを積み上げていく中に、ハッとするPf.の音。ござさんのピアノ、硬質で確かな存在感。弦とピアノが馴染んで、とても気持ちよさそうに演奏してるのを見てこの選曲抜群だと思った。
 最後のキメ?の前、ちらっと指揮者を見るところに、吹部だったござ少年の面影が見えたのも最高だし、最後、クラシックだと全楽器でGをジャーンと鳴らすのに、その半拍前にポンとベース音入れるの、なんというか音楽センスの塊じゃない?「ここにこの音ほしい」と思う音を全部弾いてる気がする。

5 ござさん×ストリングス隊「清新の風」

 そして「清新の風」。観客がどよめくのを「あっ、ありがとうございます!」とうれしそう。
 出だし、Pf.にストリングスが重なるだけで、そのエモさにうるっとくる。弦楽の音を響かせるために普段より少しゆっくりなテンポでの船出。
当たり前だけど、ござさんこれ1st vnからcelloまでの譜面作ったんだよね、この1日のために。こういう贅沢をする作曲家エモい…
 ストリングスが入ることで「清新の風」という曲のもつ奥行き、内包する底力を感じることができた。ケルティックな雰囲気だけでなく物語性があるのだ。
 ストリングス隊、ちょっと間違いもあったけれども、そこにすぐ即応して、2周目にちょっと飛び出した時はちらっと目で合図しているあたりも、吹部のコンマスやってたんだろうなぁと思わせられ、指揮者との一体感もあって惚れ惚れする。
 間奏部分では、風にたなびく帆を思わせるようなストリングスのなめらかさに、ござさんのピアノがまるでパーカッションのカスタネットのような硬質なリズムを刻んで心地よかった。
「いやー気持ちいい!」「幸せな瞬間でございました」は本心なんだろうなあ…
 ござさんの潜在能力の高さをあらためて感じる競演だった!

6 ござさん×菊池亮太さん「ユーモレスク」

 菊池さんとの「ユーモレスク」。クライスラーの編曲のおかげで弦楽のイメージが強い楽曲だが、もともとはピアノの譜面。ひとつのフレーズのなかでレガートと跳ねる音の遊び(humor)があるから、弦楽奏向けのように思えるけれど、ござさんと菊池さんの遊び心いっぱいの「ユーモレスク」はこの曲のアレンジの可能性を広げた気がする。
 「クラシカルな様相を呈してきましたので」とのことで選ばれた曲。
 ござさんの「1、2、123!」の掛け声から、思わぬ軽やかな(でも曲名通りの)「ユーモレスク」がスタートする。スタートはござさんが上で、菊池さんがベースラインを担当。出だしは軽やかなスイング調。アドリブも明るくて、ござさんの弦楽奏とコラボした楽しさそのままが曲になったみたいで、ござさんとしては珍しく指が回りすぎてるのが逆に嬉しかったりするターンだ。
 攻守交代で、ござさんがベースになり、菊池さんのアドリブのターンになると、菊池さんはクラシカルなアレンジでグリッサンドも軽やか。ござさんのベースは通奏低音だったのか、Bメロで2人ぴったり息のあったバロック調になるところが本当にすごい見所の一つ。この後のトークで、菊池さんが
「バロック調になるなんて聞いてないですよー」
ご「こっちこそ聞いてないですよー」
とお互いの即興の妙について褒め合うトークがあったが、…とすると、このBメロの阿吽の呼吸ぶりは、やはりござさんのベースが通奏低音となり菊池さんのバロックを引き出したと言うことなのだろうか… 何か些細なフレーズやリックで、2人には通じ合うということなのだろう。いずれにしてもキメがビッタビタに合って心地いい「ユーモレスク」であった。
 菊池さんは少し弾き足りないような素振りだったが、ござさんは自分が上のターンの時にリズムを抑え終了のフレーズを入れ込み、半ば強引に(笑)終わらせた感があったが、きっとそうしなければ永遠にアドリブ合戦をしてしまう2人なのだろうと思う。

(以下またそのうちに書きます…汗)

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