「狼男の退治法は・・・」アーセナル×ウォルヴァーハンプトン マッチレポート

 皆さんこんにちは、TDKです。
 ぼちぼち前口上にも飽きた方が多いと思うので、サクッと内容に入ります。

◎スタメン確認

 アーセナルはいつもの4-2-3-1。前節ムヒタリアンが入っていた右サイドハーフにはイウォビが起用されました。その他はいつも通り。ソクラティスは連戦回避でしょうし、CBの序列はまだまだ測りかねます。
 ウルヴズの方も、いつも通りの3-4-3でしょうか。創造性豊かな中盤と、クセの強いシャドーストライカーが怖いですね。特にコスタは、その名前のせいもあって(?)恐れていた方が多いのではないでしょうか。コスタ姓は怖いんですよ、ホント。

◎試合開始~15分「狼男の急襲」

 試合開始です。始まったと思ったらもうイウォビが中に絞っています。いくらなんでも早すぎませんか(笑)これ、試合前から決まっていたタスクだと思って間違いないですね。左を固めて(コラシナク・オーバメヤン・ジャカ・エジル)右はベジェリンが孤立した位置を取る、イウォビはその間を繋ぐリンクマンとして動いていたというイメージでしょうか。
 ビルドアップはCB+CM4枚で行うアーセナル。ウルヴズの前線3枚に対する数的優位性を確保したかった形。3トップ相手にはこういった形になりますよね。今季何度か目にしている形。従って、両ボランチの位置は低くなりがち。補佐役としてエジルやイウォビが降りてくるシーンが散見されました。このビルドアップがなんかイマイチ。上手く運べず、浮き球を蹴らされる場面もありました。時折エジルが深い位置から持ち運べることがありましたが、可能性があったのはそれくらい。この停滞感の源泉は一体どこなのでしょうか。

 概略図くんの出番です。まず目立つのは相手両シャドーの厄介さ。特にコスタによるジャカへのアタックは効いていました。この辺りはカバレイロが少し落ちた5-3-2型でも同じで、ヒメネスがトレイラを牽制していました。高い位置を取るコラシナクとベジェリンに対しては、WBが睨みを利かせます。この裏はエジルなどが上手く使えているシーンもありました。そのエジルとイウォビがダブルトップ下のような形になる中盤は、幸か不幸か噛み合わせが発生します。エジルはそれでもスペースに顔を出していましたが、イウォビの方はさらに左に押し込まれてしまったような印象です。結果としてこの2人が噛み合わせを嫌って降りるようなシーンも結構ありました。とにかく、上の図だと事が上手く運ぶイメージがあまり浮かびません。実際、どこか重たいビルドアップでした。

 こうして「何か上手くいかないなぁ」と感じていた矢先、よもやの先制点を奪われてしまいます。ここまで停滞感こそあれど、相手に決定機は作らせていなかったと言ってもいいアーセナル。しかし、蟻の一穴とも言える細かな綻びから大きな代償を支払うことになりました。

 一見するとジャカの大ポカで失点しました、で済んでしまいそうなシーンです。しかし、精査すると見えてくるものがいくつかあります。それに加えて、この時のジャカの心境についても考えていきます。ちなみに以下の解説は、私の良き友人であるあくあさん(@aqua____18)が70%担当しています。私はそれを集約して形にしたにすぎません。ご協力ありがとうございました。

 まずはジャカにボールが出る少し前のシーン。ここがすでに蟻の一穴でした。ホールディングがコースを作ろうと動きますが、ヒメネスがしっかりコースを消しに掛かります。出せるところはジャカしか残っていません。これは露骨に誘導されているわけなのですが、コラシナクは素直に出してしまいます。ここで取り得たその他の選択肢について。
①無理にでもホールディングに渡す。
②ムスタフィに浮き球を通す。
③レノまでかっ飛ばす。

いずれもビルドアップのリセットを意味し、積極的には採用しにくい択です。そこで、ジャカに展開を託すことになりました。

 コラシナクがジャカへ出す瞬間。明らかにジャカを狙ったかのように動き出すウルヴズの選手たち。ここからは推測なのですが、恐らくジャカは自身が追い込まれていることに気が付いていたんだと思います。ジャカからすれば、「おいおい俺に出しても詰まって終わりやぞ」と言いたかったでしょう。

 ジャカ「ははーん、分かったで。俺の背後にいるムスタフィが本命やな?そういうことならちゃんとスルーするで…ってアレ!?!?!?」
 恐らくジャカの脳内はこんな感じであったと思われます。もっとも、ジャカのミスが大きな原因であることには変わりはありません。相手7番カバレイロの位置を把握していなかったために、偽りの選択肢を掴まされてしまいました。ここで最悪の未来を回避するために出来たことは何があるのでしょうか。
①逆足で上手くトレイラに付ける。
左足側は切られているため、身体を開きつつ右足で縦に流せれば局面打開に繋がったか。難易度高め。
②背負って素早くムスタフィかレノに渡す。
1タッチ目で背後を向き、そのままやり直すパターン。比較的無難であるが、敵を背負ったプレーを不得手とするジャカが好む展開ではない。
③前にかっ飛ばす。
そのまんま東。盛大なビルドアップ放棄であるため、言うは易しって感じ。精度を無視すれば難易度は低め。
 ジャカの頭の中には「自分を飛ばしてムスタフィに通す」という選択肢があり、コラシナクがそれを選択したと解釈したのでしょう。実際、強くインスイングで出せばカバレイロのプレスよりも前にムスタフィに届いていたでしょう(結果はむしろアウト回転で綺麗にカバレイロの足元へ通りました)。ただ、それでも次はムスタフィが詰まります。恐らくレノに下げるしか選択肢はありません。ウルヴスは巧みにアーセナル後方の酸素を奪っていました。もちろん、ジャカの失策は手痛いです。しかし、ここでの失点要因は決してそれだけではなかったということが窺い知れました。
 はい!超長い!まだ前半15分だって!ウソでしょ!

◎15分~30分「苦闘」

 最初のピンチできっちり失点してしまったアーセナル。巻き返しを図りたい時間帯でしたが、どうも上手くいきません。主にエジルとイウォビが局面打開を狙うというのはここでも変わらないのですが、特にイウォビに対するカバレイロのマークが執拗で、中々自由を得ることが出来ませんでした。トレイラへのマークも担当していたカバレイロでしたが、5-3-2の3として1列落ちることがありました。その際はヒメネスがトレイラを監視し、カバレイロがイウォビに付くという仕組みでした。
 そんな中、21分過ぎには多くのリソースを割いた左サイドを崩し、ラカゼットが惜しいシュートを放ちます。しかし、その後の流れで1点もののカウンターを浴びます。ホールディングのチャレンジが不発に終わり、1対2になりかけました。ここはベジェリンとトレイラが戻ることで何とかパスコースを消しましたが、本当に危なかったです。
 アーセナルは両CBが自由を得ているのですが、そこからの配球コースが限られていたという印象です。ボランチもSBも相手の監視が強く、そこを経由して前進を図るのは容易ではありませんでした。そこを飛ばした配球をムスタフィが狙ったりしていましたが、意図は良かったと思います。依然として窮屈で、相手の懐に刃を突き付けられない展開が続いた時間帯でした。

◎30分~前半終了「硬い皮膚」

 中が非常に堅く、ブロックの外へ外へと追い出される展開のアーセナル。特にベジェリンへの横パスがカットされるシーンはここまで何度も見られた光景でした。エジルもイウォビも左~中央にご執心で、右の孤立が悪い方に出ていました。当然ベジェリンへの距離が遠くなり、パスカットのリスクは高くなっていました。
 方やウルヴズの守備陣形は、非常に統率されていてコンパクトでした。主にカバレイロが上下動することによる5-2-3と5-3-2の移行もスムーズで、誰かが出れば誰かが埋めるという意識も徹底されていました。したがって、相手のライン間、特に2列目と3列目の間でボールを受けられる機会が少なくなってしまいました。そこに進入して前を向けないと、中々チャンスには繋がりません。実際、時折そこに通せた際にはゴールに迫ることもありました。その機会が少なかったという意味では、ウルヴズの守備は讃えられるべきものであったと思います。

◎後半開始~60分「殴り方を変えてみよう!」

 後半が始まりました。アーセナルは後半頭からイウォビに代えてゲンドゥージを投入、4-3-1-2へと陣形を変化させました。ジャカがアンカー、ゲンドゥージはとトレイラが左右のインサイドハーフという位置でしたが、この辺りは流動的でした。前半もそうだったのですが、後半は特に左サイドに多くの選手を配する場面が目立ちました。

 これまたザックリとこんな感じ。左はこの4人で圧力を掛けていました。コラシナクがそれはもう高い位置に常駐するものですから、ベジェリンは舵取りが大変だったのではないでしょうか。時折ラカゼットとエジルが右に出張することもありましたが、構造は左とほぼ同じ。
 一方ウルヴズはと言うと、前半よりも両シャドーの位置が下がって5-4-1のような形になっていました。それに伴ってアーセナルの中盤が前掛かりになりましたが、監視の役割自体はそれほど変わっていなかったのではないでしょうか。
 さて、こんな感じで後半に臨んだ両軍。アーセナルは形の上ではサイドハーフの選手がいなくなりました。しかし、ボール保持時においては結局ゲンドゥージやトレイラが低い位置で開くシーンも散見され、サイドハーフが守備的になった程度の変化だったように思いました。走力がある選手がいれば、SBを上図インサイドハーフのところに配置し、素直にサイドハーフが幅取りする形の方が良かったのかなぁなんて感じたり。この辺はまだ自分の頭じゃクリアにならないですね。色んな人と話したい部分(笑)また長くなりそうなので、また最後にでも語りましょうかね。個人的には相当ツッコミどころ満載なので・・・。

◎60分~75分「ジリ貧」

 というわけで早く試合を最後まで見てしまいましょう。結局配置をいじっても効果的な攻撃を繰り出せないアーセナル。中央を厚くする布陣を敷いたのにも関わらず、エジルやインサイドハーフの2人はサイドへ追いやられるシーンが目立ちました。中央が空きがちになり、崩しの局面で引っ掛けてしまうシーンが多かったために被カウンターの脅威が上がっていたかと感じました。
 そして迎えた70分、ようやく左サイドを崩しました。エジル・コラシナクと渡ったボールをジャカがエリア内深い位置で引き出します。そこから放たれた鋭いグラウンダーのクロスに合わせたのはベジェリン。決まった!!!・・・はずもなく。なぜならシュートは左足。ゴール前ではどうしても左からのボールに合わせるシーンが多くなるベジェリン。そうなると逆足の精度が少し寂しくなります。きっと練習は積んでいるはずです。温かい目で見守ってあげましょう。
 この決定機で目が覚めたのか、心なしかウルヴズの圧力が強まりました。しかし、直後にその逆手を取るようにジャカが放ったアーリークロスからオーバメヤンに決定機。エリア手前で収めたトレイラから右を上がったベジェリンに送られ、鋭いクロスにオーバメヤンが合わせました。完璧と言っていいシーンでしょう。シュートがポストを叩かなければ。10月はシュート5本で5点を取ったオーバメヤン、こういう時もあります。次は頼みます。
 そして迎えた74分には両チームが交代カードを切ります。ウルヴズはコスタに代わって黄色い悪魔ことアダマ・トラオレを投入。多くのグーナーが咽び泣く声が聞こえてきました。一方のアーセナルはエジルとコラシナクを下げてムヒタリアンとラムジーを投入。再びジャカを左SBに回します。しれっとオプションとして成立した感のある左SBジャカ。起用の幅は広がりましたね、一応。

◎75分~試合終了「一矢」

 交代枠も使い切り、なんとかして点を取りたいアーセナル。ムヒタリアンは左サイドを担当し、ラムジーは縦横無尽に動き回ります。ウルヴズは人間兵器A-TORAOREが最前線に居座り、虎視眈々とカウンターの機会を伺います。ちなみにバルサのカンテラ出身のA-TORAORE、一体どんな教育を受けて育ったのかが気になります。バルサのバの字もないその奔放なプレースタイルは、見る者を存分に楽しませてくれます。
 そうこうしているうちに、より一層前掛かりになったアーセナル。レノに全てを託すような展開になります。本当に心臓がいくつあっても足りませんでした。
 迎えた86分、反撃の狼煙は突然上がります。ショートコーナーの流れから、ムヒタリアンがシュート性の際どいクロスを供給。これが誰にも触れることなくゴールマウスに吸い込まれました。キーパーが出るに出られない素晴らしいボールでした。ウルヴズがアーセナルのサイドを見切って中を固めることに労力を割いていたことも遠因でしょう。
 さて、当然1点で満足することはないアーセナル。引き続き前重心で戦います。その結果、レノの見せ場だけが増えました。書いていて悲しいですね。A-TORAOREとギブス・ホワイトがそれぞれ決定機を迎えますが、なんとかして凌ぎました。凌いだというか完全に相手頼みでしたね。見返していても変な汗が出ました。
 負傷による治療が結構あったにも関わらず、追加タイムはたったの5分。あっという間に過ぎ去って試合は終了しました。アーセナルはこれでリーグ戦3試合連続の引き分け。負け試合が増えてきました。乗り越えていきましょう。

◎あとがたり「蛇足」

 後半に陣形の変更を行ったアーセナルですが、結果としては不発だったと言わざるを得ません。エメリさんの施策がいつもピタリとハマるはずもないので、そこも経験として後に活かしてもらいましょう。
 さて、争点はこの4-3-1-2という形について。個人的には中央を厚くしてガチンコ勝負に臨むのかと思っていましたが、発露した事象はそれとは程遠いもの。結局左サイド偏重は変わらず、前半からの改善点は乏しかったと考えています。イウォビが中央から左サイドにかけて出張しているシーンがありましたが、それが常態化していたようなイメージでしょうか。サイドでどうにかするのであれば、ゲンドゥージではなくムヒタリアンを投入する選択肢もあったかもしれません。やはり、サイドで開いて仕事をするタイプの選手が少なすぎますね。イウォビですら中で振る舞いたいタイプ。したがって、その仕事をアーセナルはSBに一任しています。その結果、ある種歪んだ人員配置が発生しているのではないでしょうか。また、サイドの攻略法が俗に言う「数的優位」しかないため、アンバランスな攻め方になっているとも思います。左サイドへの人員の偏りがそれに当たります。この際右サイドのベジェリンはフリーになっていますが、独力で仕掛けられるタイプではないベジェリンが孤立していても恩恵は少ないでしょう。結局WG補強の必要性を感じさせるような展開になり、実際そう思われた方も多いでしょう。このチームのやり方にハマる逸材の獲得に期待したいですね。ミスリンタートさん、きっとめっちゃ働いている最中です。出来れば冬の市場で実現してほしいですが、まぁ気長に待ちましょう。金が余っているクラブではありませんし。エメリさんの更なる適応と進化にも期待出来ますしね!
 ・・・とこんな風に書き付けたわけですが、本当にとっちらかりすぎて、中々言葉がまとまりません(笑)後半の形について、皆さんはどう感じましたかね?是非ともご意見を賜りたいです。よろしければガンガンリプライでも飛ばしてください。「あんな意図があったんじゃないか?」とか「なんか変だった」とかそんな感じで全く問題ないです。私自身上手く咀嚼出来ていないので・・・。

 この辺りにしておきましょうかね。また随分と長くなってしまいました。代表ウィークということで、マッチレポートは少しのお休み。また何かしらの更新はする予定なので、その時はまたよろしくお願いします。
 ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。それではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?