「寂れた劇場」アーセナル×マンチェスター・ユナイテッド マッチレポート

 皆さんこんにちは、TDKです。今回も早速スタメンの確認からまいりましょう。

◎スタメン確認

 アーセナルは、前節のノースロンドンダービーと同じ陣形でスタメンを組みました。出場停止のジャカのポジションにはゲンドゥージが入ります。4枚の選択肢があったシャドーにはイウォビとラムジーが選ばれました。手応えがあった形ですので、継続を重視したのでしょう。
 一方のユナイテッドは、アーセナル対策として浸透しつつある3バックを採用しました。個人的には想定外でしたね。てっきり4バックで来るものだと思っていたので。両WBが怪我人の影響から見慣れない人選に。前線は嫌らしいですね。アーセナルファンの苦い記憶を呼び起こすような名前が並んでいます。
 試合の見どころとしては、前節一気に浸透した感のあるアーセナルの3バック攻撃をユナイテッドがどう防いで反撃するかといったところでしょうか。

◎試合開始~15分「好勝負の予感」

 試合が始まりました。まず良い入りを見せたのはユナイテッドの方でした。マンマーク気味のタフなアタックで、アーセナルの自由を奪おうとします。特にアーセナルの中盤以降に対しては相当な気合いでマークに来ていたように感じました。その結果、開始の10分~15分くらいまではユナイテッドの時間帯となりました。

 3バックの左右CBはビルドアップにおいて重要な役割を果たします。真ん中はある程度フリーにし、中盤及び左右CBへの警戒感が強かったという印象です。ここが開始点となっていたことを察したユナイテッド側が警戒するのも自然な流れです。

 それに対しアーセナルは、イウォビが左サイドの繋ぎ役として奮闘します。ユナイテッドのWB-CM間に積極的に顔を出し、攻撃の前進を図ります。これに呼応してコラシナクがダロトとのバトルになるシーンがこれ以降何度もありました。左サイドでの攻撃が魅力的なのはいつも通りといったところでしょうか。

◎15分~30分「暗雲」

 開始早々の勢いが早くも落ち着いたユナイテッドに対し、アーセナルが次第に主導権を取り返します。イウォビとラムジーが位置を入れ替えるなど、ユナイテッドの最終局面を崩そうと試行錯誤をしました。その中でも際立って輝いていたのがコラシナクでした。ダイナミズム溢れる圧倒的な走力で、左サイドを切り裂きます。この15分間だけでも、幾度となく敵陣深くへ進攻していたコラシナク。左サイドは大賑わいでした。その一方、右サイドの停滞は少し気になりました。トッテナム戦ではベジェリンも大きく輝いていたのですが、この試合ではそれと比べると控えめでした。
 そして迎えた25分過ぎ、その左サイドで得たコーナーキックからムスタフィがヘディングを叩き込んでアーセナルが先制に成功します。マークしていたスモーリングがもつれて倒れてしまい、ムスタフィがフリーになったことによる得点でした。
 ちなみにここでユナイテッドの動きで気になった点について触れると、マティッチをより深く・エレーラをやや浅くした3-3-2-2(もしくは5-1-2-2)のような形になるシーンがあったということです。この意図について考えてみました。まず2トップで3バックにある程度制限を掛ける。そして、2WB・2CMは対面マッチアップで警戒。そして、後ろの3+1で1人が適宜不穏な動き(例えば下りて引き出したり)を見せる前線選手にアタック可能という仮説が浮かびました。実際、CBの迎撃をマティッチがサポートするようなシーンはあったかと思います。成果はともかくとして興味深かったです。皆さんの意見が気になるところでした。募集。
 さて、相手の陣形に関心している場合ではありませんでした。ユナイテッドが同点に追い付きます。出来れば語りたくもないのですが。マルシャルがダイブします。ロホが狙います。エレーラがオフサイド地点から飛び出して折り返します。ダイブしたマルシャルが決めます。以上。

◎30分~前半終了「Theatre of Nightmare(物理)」

 こうして30分を終えて1-1という展開になりました。「さぁここから主導権争いだ」という場面でアーセナルに悪夢が襲い掛かります。左サイドに開いて持ち上がるホールディングに対してラッシュフォードが激しく寄せます。軸足の左脚を刈り取られた格好となったホールディングは、そのまま膝を押さえて倒れ込みます。まず打撃を受け、次に着地を刈られ(これは不可抗力かも)、最後に全体重が左脚に乗ってしまいました。そのままプレイ続行不可能となったホールディングは担架で運ばれて負傷交代。事の顛末は、最悪の事態と言っていい「左脚前十字靭帯断裂」という大怪我となってしまいました。1日も早い復帰を、心から祈っています。間違いなくアーセナルの将来を背負って立つ選手です。こんなところで終わるはずがありません。きっと今より強くなって戻ってきます。彼なら。信じて待ちましょう。

 さて、戦局という点で考えるとビルドアップの貢献度が非常に高いホールディングの欠落は痛恨以外の何物でもありません。慌てずにボールを扱え、サイドに開いてコラシナクを押し上げる役割も果たし、逆サイドのベジェリンへのフィードも効いていました。この3バックが成熟する上で外せない人材でした。
 そんなホールディングと入れ替わりでリヒトシュタイナーが投入され、右からリヒトシュタイナー・ムスタフィ・ソクラティスが並ぶ形になりました。
 ここから前半終了まで、試合は荒れ模様になります。残念ながら物理的に。ここまでの間にファールやカードを出すべきところを流してしまったため、選手たちが判断基準を失っていたように思えました。リアルタイム観戦中は、もう怪我の心配ばかりで正直試合内容はあまり頭に入ってこない状態でした。そんな中、ボールの即時奪回を狙って脚を伸ばしたラムジーまで負傷してしまいました。完全に負の連鎖です。前半の間はプレイを続行していたものの、どう見ても厳しそうでした。
 少しは内容について触れると、この時間帯はどちらの主導権かと断定出来る感じではなかったです。何かフワフワしたまま終わってしまいました。ハーフタイムを挟み、後半は腰を据えて臨みたいです。

◎後半開始~60分「落ち着き」

 色々なことがあった前半を経て、後半が始まりました。アーセナルは負傷したラムジーが退き、ムヒタリアンが投入されました。この時間帯は、前半15分までと似たような雰囲気。再びユナイテッドが主導権を握ったような形になりました。3バックの陣容に変化があったアーセナルは、ややぎこちなさが目立ちました。前半途中から得た勢いは、影を潜めていました。ユナイテッドは多少配置が変化しても、トレイラとゲンドゥージを自由にしないという鉄則が徹底したように思います。ここで詰まってしまったので、アーセナルが主導権を握れなかったのでしょう。
 とは言え、アーセナルに光明がなかったという訳ではありません。前半は中々厳しい出来栄えだったゲンドゥージが、徐々に試合に入れるようになりました。いなして運んで捌くという本来の働きが出来るようになってきました。
 ユナイテッドで厄介だったのが、バイリーの躍動でした。ある程度自由を得られる3バック体制の下、アーセナルの前線に対して積極的なアタックを仕掛けていました。強くて速いという印象のバイリー、この試合だけ見るとなぜ重用されないのか少し不思議に思いました。動きすぎるという指摘があるそうで、それが影響しているのでしょうか。

◎60分~75分「門戸開放」

 主導権こそ握られていた感のあったアーセナルですが、決して致命的なピンチを招いていたわけでもありませんでした。上手く受け止めつつ、反攻の機会を伺っていたのが60分前後という時間帯でした。引き続きコラシナクが奮闘し、チャンスは左サイドから気配が漂っていました。
 63分過ぎにルカクとラカゼットが投入されたものの、両チームとも大元の仕組みは継続していたように思います。ジリジリとした睨み合いの中、どのように試合が動くのでしょうか。
 そして迎えた67分、アーセナルが勝ち越しに成功します。ムヒタリアンがロホに対してタイトなプレッシングを仕掛け、パスミスを誘発します。それを拾ったラカゼットがムヒタリアンとのワンツーで抜け出し、キーパーと1対1に。その結果、背後からラカゼットを削ったロホにボールが当たり、ボールはそのままゴール左隅へと転がっていきました。このタックルで、ロホには2枚目のイエローが提示・・・されませんでした。なんで?(威圧)結果としてゴールに繋がったものの、明らかな決定機阻止ですし、危険なタックルでした。
 そのゴールからのリスタート。ロホが生き残ったことで歴史が大きく動いたのですから皮肉なものです。後方でボールを持ったロホが、最前線のルカク目掛けてロングボールを供給、目の前にこぼれてきたボールの処理をコラシナクが誤ります。レノとコラシナクの間に転がったルーズボールをリンガードが蹴り込んで同点。わずか13秒の出来事でした。この試合幾度となく攻撃面で貢献してきたコラシナクのミスは、余りにも残酷な運命です。ミスはミスですが、気落ちしてほしくはないところですね。
 その直後に、ユナイテッドはロホに代えてフェライニを投入します。本当にズルくないですか?2~3回退場していてもおかしくはなかったロホがピッチに影響力を持ち続けていたことは、個人的には非常に不満に思います。
 試合の方はと言うと、さすがに疲労もあってか、オープンな展開になり始めました。そういった中で、デヘアがノってきたのはアーセナルにとっての鬼門でした。

◎75分~試合終了「終幕」

 両者さすがに疲労の色が濃くなり、高い強度のプレッシングは鳴りを潜めるようになります。ユナイテッドはリンガードを下げてポグバを投入し、「力こそパワー」な布陣に。4-4-2ベース。
 ユナイテッド側は、保持している時間もそこそこあったのですが決定機はありませんでした。最後のアイデア不足はこの試合通して感じられる部分でしたね。放り込みもしなかったですし。アーセナル側は、ユナイテッドの4-4-2に対してWBから仕掛けるという定石通りの形。惜しいチャンスも作りましたが、残念そこはデヘア。
 このように次第に引き分け濃厚な雰囲気で推移していった試合でしたが、そこに暗い影を落としたのがフェライニの蛮行でした。

世間ではネタ扱いされていますが、冗談ではありません。退場はおろか、カードすら無し。主審の目の前だったので、追加制裁も当然無し。やってられませんね。ロホとフェライニの愚行で、ユナイテッドの品位は下がる一方でしょう。早く放出して立て直した方がいいと思います。あ、監督も一緒にどうぞ。
 そうして4分あった追加タイムも消化し、2-2のドローという結果に終わりました。一切の感情を排除すれば、オールド・トラッフォードでのドロー、それも相手と渡り合った上でのものであれば及第点なのでしょう。しかし、勝ち点以上に失ったものが大きすぎます。これから先の戦いが思いやられます。負傷者たちが1日でも早く帰って来てくれることを切に願っています。

 今回の記事は以上になります。ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。それではまた!

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