見出し画像

ひとり旅が好きな理由がわかった夜の話 20200129

 ひとり旅が好きだ。それは昔からで、大学生の頃も18切符やフェリーで安くふらりと旅に出ていた。当時は18切符で乗れる夜行列車も沢山あって、安い鉄道旅がしやすい環境だった。
逆に今はアプリ一つで宿が検索できて予約できるし、あらゆる乗り物の予約もできる。ルートも全て検索できるから、違う面で旅のしやすい環境になったなと思う。
 よく「ひとり旅って寂しくない?」と聞かれることもあるのだけど正直全く寂しくない。もちろん友達との旅も楽しいし好きだけど、大人になるとなかなか都合を合わせるのも大変だし、行きたい場所があればとりあえず行くを優先させるので、結果ひとり旅となる。
 でも、ここ数年は「一人でふらりとどこかに行きたい」とひとり旅が結果ではなく目的になる事が多くなってきた。特に鉄道に乗ってぼーっとするのが好きで、車窓をずっと見ていても飽きないし、うとうとするのも気持ちいいし、好きな電車に乗って本を読みながら車窓を見上げる瞬間もいい。鉄道日帰り旅の場合、とにかく「乗りたい路線に乗る」が目的なので、疲れたら予定変更して帰ればいいとか、何かをしないといけないという制約がないのがとても気楽で楽しい。
名物を食べることもなく、やたらとNEWDAYSのおにぎりを食べたり。

10年近く使っている鉄道塗り潰し帳↓

 この年始、とにかく北関東のひとり日帰り旅を繰り返した。しかもDQウォークという旅と親和性の高いゲームにどハマりしているので、「18切符最高!」と思いながら、茨城の海や群馬方面など行きまくっていた。体は疲れたりするのだけど、とにかく心がどんどん軽くなる感じがあって、それはなんでなんだろうとぼんやり考えていた。その答えが思わぬところでわかった。

 かれこれ、14年ほどファンでいる渋谷すばる。彼が関ジャニ∞を抜けて、ソロでスタートをするまで二年以上、生歌が聴けなかった。ようやく幕張メッセで生歌が聴けることになり、一体どういうライブになるのか、自分はどんな気持ちになるのか、少し緊張しながらライブへ行った。スタートから彼の思いがストレートにぶつかってくる『ぼくのうた』を歌い始めてステージで光を浴びる姿を見た瞬間にこみ上げてくるものが止まらなかった。それからずっとライブに浸っていたのだけれど、ある曲になって心と身体がピタリと止まった、というか完全に吸い寄せられた。

なんにもないな』この曲と共に、すばるが主に海外を旅している映像、鉄道に乗ってキラキラした眼で車窓を眺めたり、白い息を吐きながら寒い街を歩く姿の映像が流れた。アルバムを聴いて、この曲も何度も聴いていたけれど旅する映像を観ながら生歌を聴いて自分の中の答えが溢れてきた。

 私は居ても居なくても良い存在になりたかったんだなと思った。これは全然悪い意味ではなくて。
多分、休職するまでずっと私は仕事で「必要とされる人間じゃないといけない」と思い続けて、なんか自分の居場所を仕事の中に見つけるというか爪痕を残すことに躍起になっていたと思う。
でも、本来その人がそこにいればそれが居場所で、その人が自分の仕事を自分なりにどう頑張るかの話であって、それを必要思われたいから躍起になっていたら、それは病むなと思った。何かすごく焦燥感があったし、辛かった。自分が仕事でなりたい自分と現状の差をどうにか埋めたくて、自分の中に「こう思われたい」とか「こう見せたい」と何層にもそういうものを抱えていたことにやっと気づいた。
 なんで気づいたかと言うと、18切符で知らない場所に一人で行って、周りも誰も知らないし、自分が風景の一部みたいに居ても居なくてもわからないと思われる感覚がすごく楽だった。何にも取り繕ってない姿でいられることがすごく心地よかった。仕事もそういう感覚で自分がやるべき事をやるという距離感を意識した方が、私の場合うまくいくのかもしれないと思えた。仕事をしてそこにいるんだから、自分がいるところが自分の居場所で意味があるということを理解してる前提で。
そう思えてきたら、この数年繰り返し芽生えていた消えたいとか、そういう気持ちがなくなりそうな気がした。
風景の一部になるイメージをするとすごく楽になって、風景の一部でも私はそこにいるし消えない。生きている。
 
 この感覚まだぼんやりしたものだから、身体と心に沁みわたるまでもう少し時間はかかると思う。でも、自分がこれから再生していくのにとても必要な感覚のかけらを掴んだし、「なんにもない」と「生きてる」という歌詞、そして旅の映像を観ながら流した涙で自分の心の中の澱のようなものが流れ出た気がした。文章にすると今も心が疼くような不安定な感覚がある。
 この感覚をもう少し実感して、日常生活を送れるようにまた少し旅をする。
 これからも感覚が薄れそうになったり気持ちが彷徨ったら、とにかく電車に乗って降りたことのない街に行って風景に溶けこんでみよう。

 「私は消えないし、生きてる」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?