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【編集部取材】 コロナ禍で疲弊した宿泊業界を救うのは、ワーケーション・福利厚生・保養・療養・多拠点居住など「非観光系」の宿泊需要か。 東京都江東区

2022.10.03

2022年9月22日~25日の4日間、公益社団法人日本観光振興協会・一般社団法人日本旅行業協会・日本政府観光局の主催により「ツーリズムEXPOジャパン2022」が東京ビックサイト(東京都江東区)で開催された。

4年ぶりに東京で開催された同イベントでは、世界78の国と地域から1,018の企業・団体が出展し、パンデミック後を見据えた新しい時代の観光など、従来の観光とは一線を画す最新の旅を提案。

延べ12万2,000人が来場し、好評のうちに閉幕した。

今回のテーマは、「新しい時代へのチャレンジ~ReStart~」。

コロナ禍で大きく棄損した観光業界を「再生」「復活」すべく、会場では、地域ごとに区分されたエリアに加え、「ワーケーション」「ドライブツーリズム」「星空ツーリズム」「スポーツツーリズム」など、新たなテーマでのエリアも設定された。

ただ、ホテルや旅館など、観光産業の心臓部とも言える宿泊産業からの出展は、日本国内で展開している事業者に限ると12社のみに留まっている。

今回は、同イベント2日目の9月23日(来場は業界関係者のみ)、主要なホテルチェーンを展開する4社について、あえて「非観光系の宿泊」に関する取り組みや現状などについて取材した(後日の個別取材を含む)。

「観光系」の宿泊か、「非観光系」の宿泊か。

今回の同イベントに関して言えば、出展者側・来場者側とも、前提としているのは、ほぼ前者であろう。

しかし、いわゆる「ワーケーション」といった新たな行動が認知されつつある中、両者の境界線はかつてより曖昧になってきている。

もっとも、宿泊を伴う会議や学会、宿泊を伴う研修など、概ね「非観光系」とされてきた行動であっても、それにエクスカーション(体験型の見学会)が伴えば、その行動は限りなく「観光系」に近い。

一方、企業・団体などが福利厚生の一環として行っている保養所の設置・運営や、福利厚生サービス事業者等を介した宿泊施設との提携は、企業・団体からすれば、生産性の向上を目的とした業務のひとつということになり、「非観光系」ということになる。

また、今回のコロナ禍であらためて明らかになった点のひとつが、病院(ホスピタル)と宿泊施設(ホテル)が、ハード的にもソフト的にも、実はかなり近い存在だったという点だ。

2022年9月30日現在、新型コロナウィルス感染症の療養施設となっているホテルの客室数は、東京都だけで9,300室。

もちろん、医療行為そのものではないにせよ、日本には湯治場が古くからあったし、保養という行動自体、療養に近い意味合いを含んでいる。

さらに、国民宿舎や国民休暇村、かつての厚生年金休暇センターなども、拡大解釈すれば、疲労を回復し、健康を維持するという点では「非観光系」の宿泊施設と言えなくもない。

もちろん、今回の同イベントの領域はあくまでも「観光」である。

しかしそれでも、宿泊施設に限れば「非観光系」の需要を掘り起こし、成長させることが「再生」「復活」の鍵となるはずだ。

<目次>

目的は、ワーケーションよりもリフレッシュ。

寮・社宅から福利厚生サービスへ。

半年間で850室の利用、利用者は法人よりも個人。

コロナ禍で都市型ホテルが生み出した、新たな需要。

限りなく病院に近いホテル、そして多拠点居住。

「保養」「療養」への財政出動は、リターンの大きい国民への投資。

  (1)ワーケーション
  (2)福利厚生
  (3)保養
  (4)療養
  (5)多拠点居住
  (6)おわりに 財政出動に期待


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