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ラポール10:なぜ、これまで「巻き込まれ」の定義がなかったのか?
木之下:それにしても不思議に思いませんか?
円山:何が、ですか?
木之下:多くの研究者が巻き込まれの定義をしてこなかったことです。
円山:そうですね。
橘:論理的に解釈できなかったのでしょう。
木之下:では、どうして解釈できなかったのでしょうか?
橘:私には分かりません。
木之下:巻き込み、巻き込まれのマトリックスで、言葉が変化するからかもしれません。
橘:言われている意味がサッパリ分かりません。
木之下:では、マトリックスを示します。
2 × 2 のマトリックスで、思考を整理するのに役立ちます。
これから、何回か、この手法を使います。
この手法で、巻き込まれの例を考えていきます。
人が能動的で期待できる活動を行う時があります。その発信者であり、他者を先導していく人をリーダーといいます。リーダーとは、新しいことを成し遂げていくための先導者です。
さて、そのリーダーに触発されて、共に期待を持って巻き込まれていく人は、どういう心理状態になりやすいですか?
円山:期待する、楽しみになる。場合によっては、感動したり、興奮したりするかもしれません。
木之下:つまり、この場合は、喜びを伴う巻き込まれとなります。
ここで、大切なことは、「喜びを伴う巻き込まれ」は、共感や同調という言葉に置き換えられます。
喜びを伴う場面では、巻き込まれたとは言わず、その言葉は消えて、別の言葉になってしますのです。
橘:なるほど。論理的には巻き込まれた状態なのに、表現する言葉が変わってくるのですね。
木之下:そうです。
問題となるのは、巻き込む人が苦しみや悲観的な感情を持っている場合、それから、助けてほしいと依頼する場合です。この時、助けを求められた人は、気持ちの重さや圧迫感、ゆううつ感などを感じやすくなります。
マトリックスの中で、第IV領域の部分だけが、「巻き込まれる」と呼ばれます。これが、曰く言い難し、という宙ぶらりんで曖昧になっていた理由なのかもしれません。
円山:言葉が置き換わることが盲点になっていたのですね。
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考察:同じ現象でも言葉が変わると、別の概念のように感じてしまう。
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