ハイワイヤ2025年度夏公演出演者オーディション公募に際してのご挨拶文


高畑裕太です。
この度、2025年7月末に劇団ハイワイヤの第二回公演を行う運びとなりました。
その出演者オーディション公募に際してご挨拶文を書いたのですが、
さすがに応募フォームに記載するには長すぎたので以下に掲載いたします。
わざわざnoteに分けた理由はその一つだけです。
またオーディションを受けていただく際に必ずしも読んでおかなければならないものではありません。前回公演を観てくださった方や、これから新しく出会う方に、今の私が漠然考えていることを共有出来ればと考えて記載いたしました。あと自分で言うのもアレだけど、変なところで生真面目な部分を発揮してしまう性格ですので、あくまでそのくらいの認識でいてくださると幸いです。

今回の作品ではとある「家族介護」をテーマに物語を執筆いたします。
また完全オリジナルの作品となりますので、今頭の中にある物語や、人物設定、タイトルなども、これから変更する可能性があり、出演人数を[未定]とさせて頂きました。

劇団を始めて数年が経ちましたが、まだまだ公演実績も少なくてド新人です。
ただありがたいことに諸先輩方の創作現場に立ち合わせて頂いた機会も沢山あったおかげで一歩ずつ成長を実感出来る瞬間もございます。

前作では公演名に「新作公演」と表題いたしましたが、本公演も今の自分たちの精一杯に力で、新しい作品作りに臨んでいきたいと感じております。どなた様も是非ご参加頂ければ幸いです。


〜以下、挨拶文〜


最近、自分自身の老いや人生の終わりについて考える機会が増えました。
30代になってからどんどん忙しくなって、親や、兄弟、友人と会って話す頻度も極端に減りました。趣味だった旅行や、山登り、カメラも、前ほど頻繁にやらなくなってしまいました。あんまり気力が起きなくて。
今年は特にやりたいお仕事を好き放題やらせて頂いたし、プライベートを満たすよりも有意義な時間を過ごせたかと思ったりもするのですが、そういえば結婚もしてないし、金銭面の問題でもまだまだ苦労が耐えません。
…もしこのままの状態で時間がどんどん過ぎていったとして、自分の人生が終わる頃に俺は一体何を残せているのだろうか…?息を引き取る最後の瞬間に「あなたに出会えて良かった。」と言ってくれる人なんているのだろうか…生まれてきて良かったと心から思えるのだろうか…?今のままで???
といった事を割とずっと考えています。そして当たり前のようにその場で答えなど出るはずがなくて「いいから黙って働け!」と心の中で一喝しつつ、遠い過去で元気良く走り回ってる若々しい自分に想いを馳せながら、
「今、俺はゆるやかに死に近付いていっているのだ。」と感じたりしています。

一応言っておくとメンタルの状態が悪いわけではないので本当に大丈夫です。
というか割と誰でもこのような事を考える時期は何度か訪れるのではないでしょうか。でもそうなってくると自らの心身だけではなくて文化,政治への興味や、まるで生活そのものが老い衰えていくような不安を覚える事があるかと思います。
そしてそうなってくるとつくづく人間は、希望や、尊厳などの生きるエネルギーを絶やさずに生き続ける事が難しい生き物なのではないかと考えました。
例えるならば、子供、パートナー、仕事における成功、趣味、今の私だったら「演劇」の存在も当てはまりますが、きっとそれぞれの人が自身の人生における財産とも呼べるようなものを持ち合わせているかと思います。
しかしそれらはずっと色褪せずにいてくれるのだろうか?この目まぐるしいスピードで変貌を遂げていく社会の中で、いずれそれらの価値の普遍性を信じられなくなったり、まるで突然事故に遭ったかのように、生きる指針を唐突に見失ってしまう人も、この現代においては少なくないのではないかと考えています。

今回の企画を発足するにあたって、昔介護施設で働いていた時にとある利用者さんの訃報を受けて、ご遺体に手を合わせた時のことを思い返しました。
当時の私は働き始めてからまだ間もない新米ヘルパーで、お亡くなりになった方が施設の利用者さんの中でもとてもお世話になった方だったので、管理者の計らいでご自宅へ同行させて頂けることになりました。
玄関を開けるとご家族様が迎えに来られて「今まで本当にありがとうございました。母も幸せだったと思います。」と私たちに深々と頭を下げられました。その言葉の内容にもかなり驚かされたことを覚えています。
その後お悔やみのご挨拶を終えて、奥の部屋に案内されてから、介助ベッドの上に安らかに眠るご遺体にしばらく無言で手を合わせました。
そして最後に私の上司がその場に膝を下ろして、涙を浮かべながら「〇〇さん、よくがんばったね。」と耳元に声をかけていました。

今振り返っても印象的な光景だったように思えます。
そしてその時の私にとってその方の人生の最後の瞬間はとても豊かなものだったように思えました。
また施設で働いていた期間は想像以上にエピソードや、人間の営みと社会への学びに溢れていたので、劇団を旗揚げした当初からいつかハイワイヤで「介護」をテーマにした作品を上演したいと考えていました。
今回の『墓場までのかえりみち、ゆりかごからのブランコで。(仮)』では今の自分が考える「死生観」をヒントに、年々超高齢化社会の加速化が進んで、引きこもりや、孤独死、または子供部屋おじさんといったネットスラングまで話題となっている日本で、どれくらいの人たちが幸せな逝き方に辿り着けるか?もし育ててくれた親が認知症になったとしたら?という漠然とした未来への答えに繋げられるような演劇作品を描きたいと考えています。

前回公演では劇団のサポートメンバーや、キャスト・スタッフの皆様にも、大きく支えられた公演になりました。
かなり多くのお客様にご来場頂けた事も含めて劇団の第一回公演としては本当に素敵な公演になれたと考えています。
終了したらすぐに次のステップに移ろう!などと鼻息荒く意気込んではいましたが気持ちばかりが浮ついて「2作目…2作目……」と心の中でブツブツと呟きながら、気付いたら1年経っていました。早い。早すぎる。
ありがたい事に2024年に突入して現在約6本の公演に携わらせて頂いたので、圧倒的に時間がなかった事もございますが(年末にもう一本ございます)参加した一つ一つの公演で学ばせて頂いたことや、今の自分のベストを実行していきたいです。

今のところ2年に一回とマイペースすぎる頻度ではございますが、
前回公演よりもステップアップした姿を皆様にお見せ出来るように、
より良質で安全な創作環境の下、
豊かな公演となれるよう誠心誠意尽力いたします。

ハイワイヤ主宰・作・演出 高畑裕太


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※現在HPのリニューアル進めているため、こちらに掲載されている情報は最新版ではございません。前回公演までのアーカイブはご覧いただけます。今しばらくお待ちくださいませ。

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