日本馬が凱旋門賞で勝つ作戦を考えてみた
凱旋門賞2022を終えて
日本から4頭が参戦した2022年の凱旋門賞。とりわけ現役最強馬のタイトルホルダー、今年のダービーを制したドウデュースに注目が集まりましたが、終わってみれば、日本馬すべてが二ケタ着順に沈むという悲しい結果に。
個人的にはタイトルホルダー以外、通用しないと見ていたので、「やはりこういう結末だったか」という気持ちが強いのですが、それでも日本馬が4頭も参戦し、すべてが見せ場なく二ケタ着順に沈むという事実には寂しいものがありました。
勝利を収めたのは目下G1・5連勝中だった▲アルピニスタ。6番ゲートという好枠を引けたのもありましたが、勢いそのままといった勝利でしたね。昨年のトルカータータッソ同様、ドイツでG1勝ちがあり、雨が叩きつけられたロンシャンの深い芝への適性を感じさせる走りでした。
馬の適性はもちろん、鞍上のモリス騎手のエスコートもお見事。直線に入っても馬上の上でじっと我慢して焦らず、ラスト1ハロンから追い出したのは素晴らしかったです。一見、楽に勝ったように見えますが、早めに動き出していたらオルフェーヴルのように最後に差されていたかもしれません。
内枠から逃げ馬の後ろをロスなく立ち回り、直線で逃げ馬を交わすだけという流れはスプリンターズステークスのジャンダルムそのもの。レース後、ジャパンカップも選択肢のひとつという報道がありましたが、本馬が大谷翔平レベルの二刀流でない限り、1円もいらないでしょう。
2着に好走したのはフランスのダービー馬◎ヴァデニ。道中は「ベストのポジションではなくても、内枠を味方に良い位置につけた」と思ったので、道中~フォルスストレート~直線とワクワクしながら見ていました。直線に入ってからはスペース十分で、アタマまでありそうな雰囲気でしたが、前にいた勝ち馬がしぶとかったですね。本命を打っていた立場としてはこれ以上、望めない競馬だったと思います。
3着は昨年の覇者・×トルカータータッソ。1~7着馬のうち二ケタ馬番(しかも18番ゲート)を引いていたのは本馬のみで、枠順とコース取りを考えると、一番強い競馬をしていたと言えるのではないでしょうか。アルピニスタ(6番ゲート)かヴァデニ(2番ゲート)と枠順が逆だったら連覇のチャンスは大いにあったという意味で、関係者としては悔しい結果と言えるかもしれません。
着順以上に内容があったタイトルホルダー(11着)
スタートから出してハナを奪うまでは良かったものの、ドウデュースと同一馬主のブルームが終始プレッシャーをかけてきたため、息を入れられる場面がなかったのが痛かったですね。道中から「これは止まってしまう…」と思いながら見ていたのですが、直線は案の定という走り。それでも急激に止まったわけではなく、最後まで走り切っていたので、結果だけ見ると完敗ですが、ブルームの絡みがなければ、もう少し見せ場を作れた気がします。個人的には馬場がもう少し乾くか、展開に恵まれていれば、面白い競馬になった可能性はあると思います。
枠順に泣かされたステイフーリッシュ(14着)
不利な20番ゲートからのスタート。ルメール騎手は特に東京芝の中長距離戦で大外枠を引くと、スタートからコースロスを抑えるため、位置を取りに行く傾向があり、この凱旋門賞でも逃げるタイトルホルダーの外目2、3番手を取りに行くと読んでいましたが、スタートからそこまで無理をせず、馬のリズム重視での騎乗でした。これはおそらく、ロンシャン競馬場を知り尽くしている上、この手の道悪で序盤に無理をすると、最後に止まってしまうことが身体に染み付いていたのではないでしょうか。道中は内に潜り込むことができず、終始外々を回されれる形に。最初から最後まで大外枠というハンデが重くのしかかったレースでした。
自分の競馬に徹したディープボンド(18着)
タイトルホルダー同様、スタートからやや促していき、道中は4番手を確保。ディープボンドらしい、川田騎手らしいレース運びでしたが、直線に入る手前ですでに手応えが悪くなり、そのままズルズルと後退。日本ではスピード不足ゆえ、タフな馬場や展開でこそのイメージがありますが、凱旋門賞で2年連続で二ケタ着順に沈んでしまい、ロンシャンの道悪には適性がなかったと言うことでしょう。
必然の大敗だったドウデュース(19着)
国内オッズでは3番人気に推されていましたが、個人的に真っ先に消したのが同馬。レース予想記事で
と書いた通り、ロンシャンの芝への適性、レース戦法のどちらをとっても、凱旋門賞で通用するとは思えず、こういう結果に終わったのはある意味で必然だったと思います。東京芝2400mを2分21秒9で走った馬が、2分35秒71の決着の凱旋門賞で力を出せるわけがないというのがすべてなのではないでしょうか。
凱旋門賞には牝馬を連れて行くべき
アメリカ、ドバイ、香港所属馬が凱旋門賞には1頭も出走させないように、日本馬も野球選手がクリケットの試合に出るくらい違う凱旋門賞に固執せず、力を発揮しやすいサウジアラビア、ドバイ、アメリカ、オーストラリア、香港の競馬に集中した方がいいのでは?と思うのが本音ですが、ここまで来たら後に引けないという崖っぷちのダメなギャンブラー的なマインドに支配されている面があり、それでも挑戦し続ける選択をするのであれば、
牝馬を連れて行こう
ということを声を大にして言いたいです。
これは人間でもそうですが、男より女の方が環境への適応力が総じて高く、それは動物、馬にも共通すること。もちろんオスでも精神的にタフな馬はいますが、総論で言えば、メスの方が異なる環境に置かれても力を発揮しやすい傾向があります。
実際、日本では一流馬の域ではなかったディアドラがイギリスのナッソーステークスを制したほか、海外G1を連戦して活躍できたのも、馬自身の適性に加え、牝馬としてのタフネスさもひとつの要因だったと言えること思います。
そもそも凱旋門賞は牝馬の活躍が目立っており(今年は牝馬が2頭出走し、1、5着)、古馬の牡馬メインに挑戦するスタイルがそもそも間違っている気がします。ダービーを勝ったら、宝塚記念で古馬の頂点に立ったら…ではなく、適性ベースに考えるべきでしょう。
日本から凱旋門賞に挑戦した牝馬はこれまで3頭のみで、
ハープスター(8着)
ディアドラ(8着)
クロノジェネシス(7着)
と結果は出ていないものの、ハープスターは直線で絶望的なほど大外ぶん回しで、実走着差的な観点で言えば、実質好勝負していたはずで、クロノジェネシスは15頭立ての14番ゲートから終始外々を回りながらもラスト1ハロンまで2番手をキープ。どちらも馬自身は馬場を苦にせずに走り切っており、むしろ牡馬の方がすぐに諦めてしまうシーンが多いように見えます。
現役馬で言えば、ユーバーレーベンなんか勝ち負けはともかく、今年の4頭よりは見せ場を作れたのでは?という気がします。
コーヒー代に使わせて頂きます。お気持ちだけでも嬉しいです。