「オッドタクシー」 必見!頭ひとつ飛び抜けた良作アニメ - 考察ネタバレあり

※この記事はネタバレがあります。

概要

Amazon Prive Video で配信中の オッドタクシー 。
人物が動物のキャラクターとして登場する一見ほのぼのとした内容にみえたのですが、その実、骨太な群像サスペンス劇にどんどん引き込まれていく作品でした。

ボケとツッコミの掛け合いの妙

まずはじめの開幕の引きがとてもいいです。タクシーのラジオから流れる芸人さん(CV ダイアンのお二人) の軽快なやりとり。まるでほんとのラジオやっているようなトーンで現実感を感じさせてくれます。その後タクシーに乗っときたお客(樺沢)とボケとツッコミのやりとりをする主人公「小戸川」。小ボケに対して少し斜めの角度から突っ込むシュールな漫才が視聴者を物語に引き込んでいきます。その後もちょこちょこその掛け合いは出てきて、物語の緩急をつけていきます。作中でも何度もお笑いコンビ「ホモサピエンス」がお笑いのあり方について語ります。そのメタ的回答として、作中での漫才的掛け合いがあったことが面白かったです。

魅力的なヴィラン

ドブとヤノそして田中、基本的にはこの三つ巴で物語がうまく交差して進んでいきます。とくにドブとヤノはヤクザ的な立場でとてもカタギではないのですが、どこか憎めない魅力をもっています。たとえばドブは、ネットでやり玉にあげられ焦燥しきって、「正直ネットなめてた」などど弱音を吐きます。ついに自分を悪くいってた樺沢を捕まえたところで、ボコボコにするでもなく、「内省してみろ」と大人な対応で樺沢の歪みを更生させ、謝罪動画をあげさせます。ドブは悪いのですが、どこか大人なんです。ヤノも偽札を掴まされると、慌てた様子でついには韻を踏むことができなくなってしまいます。部下には「ヤノさん!韻が踏めていません!」なんて突っ込まれる始末で、可愛くて仕方ありません。ヤノがラップ口調でしゃべるのは、その頭の良さや余裕のあらわれだったのかもしれません。悪いけど、どこか憎めないこれらのヴィランが物語を読み魅力的にしてくれたのではないかと思いました。

怒涛の落ち

普通にストーリー展開が面白い上に、最終話でこれでもかというどんでん返しが押し寄せてきます。これによって、面白かった物語はグッと引き締められ、最高のストーリーへと昇華したと思います。次々とこれまでの伏線を回収しつつも視聴者に驚きを与えるその構成はお見事としか言いようがありません。

1. キャラクターが動物だったのは小戸川の事故の後遺症のせいだった

筆者は登場人物が動物モチーフの作品だと思いこんでいたのですが、実はそれは小戸川の事故の後遺症で周りの人間が動物に見えてしまう。というものでした。これにはやられたと思いました。動物を擬人化した作品「ズートピア」「しまじろう」「アグレッシブ烈子」「BEASTARS」などさまざまな物があり、そういった流れから動物ものキャラクターであることにまったく違和感を持たなくなっていました。また内容が骨太なサスペンスであることと見た目がかわいい動物であることのギャップが面白く、それ自体が作品の特徴であると思いこんでいました。なので、キャラクターが動物であることはメタ的な視点で自然なことで、そこになんの違和感ももっていなかったので、筆者にとって予想しない展開におどろき、やられた!と思いました。

様々なところで違和感はあった

見直してみると、序盤のシーンで

剛力「俺は何に見える?」
小戸川「ゴリラ」
白川「(クススと笑う)」
剛力「まあ、たしかにな。」

人間版の剛力もたしかにゴリラっぽい風貌をしています。小戸川は本当にただ見えるがままに「ゴリラ」と答えたのですが、まわりにとってはゴリラっぽい剛力にたいして、すこしブラックなジョークを言ったようにみえたわけです。また別のシーンでは

小戸川「この辺じゃ、アルパカはめずらしい」
白川「(すこし不思議におもいつつも、笑う )」

これも小戸川が冗談をいったんだろうと処理されたわけです。

小戸川の能力

中盤から小戸川に「一度顔をみると、後ろ姿やシルエットでもわかる」という能力をもってることがわかります。小戸川視点では人間が動物に見えるわけですから、アルパカな白川さんは後ろ姿でもアルパカのシルエットなら見分けがつくわけです。

ズーデン

動物が動物を集めるソーシャルゲームをプレイするのは違和感ありましたね。このように、自分たちを人だと思っていないと成り立たないシーンがあったように思えます。

2. 黒幕サイコキラー和田垣

実は登場人物は人間だったという衝撃で、三矢ゆきを殺害した犯人なんてどーでもよくなっていたころ、和田垣が三矢をロープで絞め殺す回想が入ります。「アイドルで成功するためならなんだってやる」その言葉を履き違えたモノホンのサイコキラー和田垣。これまで出てきた悪役は悪いことは悪いのですが、どこか可愛げがあり「人を殺さない」という一つのルールを守ってきました。しかし、その枠の外にいる和田垣がなんの罪悪感も抱かず、自分のためにあっさりと人を殺し、さらには他の邪魔な人間にも手をかけています。作品の最後のシーンでは、小戸川のタクシーに和田垣がにっこりと微笑むシーンで締めくくられます。これまでもハードな内容ではあったのですが、どこか安心して楽しめる内容で油断したころ、和田垣の登場によってその様相は一点し、たしかに殺人事件は起きて、人を殺した犯人がいたこと、それがまだ誰かわかっていなかったことの恐怖を、ゾッとさせるようなやり方で明かした見事なシーンでした。

総じて良質でどこを切っても中身がぎっしりな作品

人間が動物に見える仕掛け、最後の犯人のネタばらし、そこに至るまでのストーリー展開、合間合間にはいる漫才的な掛け合い、きっちりと伏線を回収する群像劇、どこのシーンをとっても弱点なく非常に楽しめる作品でした。昨今のアニメ作品の中でもあたま一つ飛び抜けて面白い作品でした。

フィジカルモンスター白川

13話でタクシーごと海に落ちた小戸川を服を着たまま海の底まで潜り、水圧で開かないドアを壊し、さらには泳いで小戸川を陸まで引き上げた白川には笑いました。間違いなく作中最強の人物です。

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