ルオー賛歌

モノクロームばかり撮ると色が欲しくなる
心が荒むと色が欲しくてたまらなくなる
硬く握りしめた拳を震えながら解くとき
きっとルオーが慰撫してくれた

荒々しくも優しく、
粗相として美しい
偽善者の版画ですら
愚かなピエロですら
かなしく温かいのだ

熊谷才一、浜口陽三はぼくの写真に導を
もたらしてくれたが、ルオーこそ、彼こそが
ぼくの何かを揺さぶりつづける

古い美術誌が届いた。
1950年代のものだ。
開けることが出来ない。しない。
焦りはない。今は表紙を見つめるだけだ。
いつかこれが触媒となりぼくに何かを書かせるだろう。そのときを待つ。

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