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noteのマガジン機能は、パッケージ型メディアの逆襲になるか?

本日角川アスキー総合研究所で開催されたイベント「個人向けメディアプラットフォーム「note」から見るメディアの未来」に参加してきました。ピースオブケイク加藤さんに加えて橘川幸夫さん・アスキー遠藤さんと気になる方が3人も揃ったら、飲み会1回分のチケットも惜しくないわけです。

第一部は加藤さんによる基調講演。加藤さんは2000年にアスキーに入社して「アスキー.PC」編集に携わったとのことで、今日は当時の大島編集長もみえてました(懐かしい!)。アスキーの後はダイヤモンド社で書籍編集に関わり、「もしドラ」を270万部/電子書籍も17万部(Kindleがない時代に)売り上げたそうな。雑誌(がネットに駆逐されるプロセス)・単行本・電子書籍の発行にかかわった経験が、今のcakes/noteに活きていることが伝わってきました。曰く、“面白いものを書けばクリエイターが報われるアーキテクチャが作りたいんです”

以下、印象的な発言を箇条書きで(間違いなどあれば突っ込み歓迎)

・いま電車の車内風景を見れば、出版業界の課題がわかる。皆スマホを見ていて、新聞を読んでいる人などいない。音楽業界は、10年前にデジタルの洗礼を受けていた。iPodが出て以来CDの売り上げは落ち続けているが、JASRACの売り上げは落ちていない。なぜか?音楽と接するスタイルが変わったから。CD → Web(ストリーミングなど)+リアル(フェス・グッズ・カラオケなど)。出版もWebとリアルで勝負すべきではないか。電子書籍はマーケティング手段がAppStoreのランキングしかないので、最終的に値下げ・最低価格へ向かわざるをえない。

・cakesを立ち上げて、連載媒体としてWebを使いつつ、書籍として出版するスキームが出来上がってきている。「統計学が最強の学問である」「(堀江さんの)ゼロ」は、cakesの連載から出た本。

・noteはcakesと逆にオープン化して誰でも参加できるソーシャルメディアプラットフォームとして開発した。特徴は1)かんたんに記事が作れる 2)かんたんに売買できる 3)ファンとつながることができるの3点。3)は書籍では困難。1度売れた筆者でも、次回はまたゼロからファン開拓しなければならない。

・noteの立ち上がりは、1ヶ月で2000万PV/100万UU。女性比率は現段階で45%。年代は若い世代(20代〜30代)が中心。

・noteでやろうとしていることは、コミュニケーションとマーケティングとクリエイティブの一体化

・noteの方針(常識を疑う)として、「ランキング」機能はつけない。ランキングがあるとアクセスが上位に集中して、コンテンツの多様性が失われるから。また「カテゴリ」分類もつけたくない。(有償会員制度で成功しているクックパッド・食べログが共にランキングを売りにしているので、これはちょっと驚きました)

・今後リリースする「マガジン」機能では、作成したノートを束ねることが可能になる。自分のコンテンツを束ねれば販売できるし、他人のコンテンツを束ねればキュレーションになる。また作った「マガジン」はフォローすることができ、継続的な課金購読ができるようになる。

・コンテンツビジネスの価値の源泉は、いままでデータをパッケージして流通することにあった。それが今ネット時代になってビジネスが揺らいでいる(コンテンツのアンバンドルのことか?)。コンテンツビジネスの未来は、コミュニケーションと体験に価値がシフトするのではないか。

間もなく登場するマガジン機能は、ここ数年ネットによって分断されたコンテンツをネットの力で再パッケージ化し、減衰した価値を引き上げる試みだと感じました。それがうまくいくかどうかは、(著名人だけに頼らない)新たな魅力をもつ無名クリエイターの発掘に長けたキュレイター/編集者の力に依るのではないかとも思いました。

最後に加藤さんが広告についてどう思っているのか気になったので、Q&Aタイムに聞いてみました。意外に、noteで企業が情報発信すること自体は「アリ」とのこと。ただし企業発であってもコンテンツが主体であることには変わりがないので、LINEのように企業側をコンサルティングしてコミュニケーション齟齬が起きないようにするビジネスが参考になるのではないかとのことでした。


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