最終コーナーを回った競走馬はヤマボウシの実を落とす

ヤマボウシの実が
落ちている

まだ熟していない
朱い色をしている

ヤマボウシの
実を
手にとってみる

軽くもなく
重くもない

風が吹いている
強い南風だ

南の海で
生まれた風が
高気圧の縁を通って
秋雨前線に向かって
勢いよく飛び込んでいく

その様はまるで
最終コーナーを回った競走馬達が
ゴールを目指して
駆けていくよう

ゴールの前にある関東地方は
おかげで強い南風

紅くなる前の
未熟なヤマボウシを
掌で転がしながら

風の又三郎の話を思い出す

どっどど どどうど どどうど どどう

あの話は
二百十日前後の事で
季節で言えば
9月の頭の頃の
話だった気がする

風の又三郎なら
青いくるみやら
すっぱいかりんを
落としたのだろうが

競走馬は
ヤマボウシの実を
落としていった

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