待ってよ、春

頼んでもいないのに春が来る
気がつくとそこにいて
さも当然なような顔をしている
憎たらしい


出会いと別れの同居する
何とも落ち着かない季節
嫌いだ

通学路の途中の垣根に
白いマンサクの花が咲き始めると
春がやってきたんだと
あきらめる

別れがあるから
新しい出会いがあるんだよ
なんて
無責任に言わないでほしい
別れのない
新しい出会いだってあるハズ

立ち止まっていたい私と
立ち止まっている余裕のない春

大人になんなきゃ
って常套句は聞き飽きた
大人になる勇気のない私は
大人になる勇気のない私の足は
ここにとどまろうと踏ん張っている
なのに
春はグイグイと
背中を押してくる

待ってよ

ちょっと待ってよ

まだ心の準備が

あっ!

春に背中を押され
私は春に飛び出す

まぶしい

桜の花が
こんなにも
悲しい色だなんて
知らなかった


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