呼吸不全に対する挿管戦略〜one of “HOp physiologic killers”

HOpとは?

挿管困難(喉頭展開困難)LEMONと、換気困難MOANSを予想するのは重要。
そんななか、病態困難HOpを考えることも大事。挿管前後で心停止する危険性が高い!ということ。
HOpは、Hypotensionショック、Oxygenation呼吸不全、pH重度アシドーシス。生理学的異常に注目した、physiologic killersである。

O of HOp;Hypoxema kills ; 呼吸不全に対する挿管戦略

Hypoxemia kills への対策のキーワードは、Preoxygenation。
Preoxygenationが達成(SpO2 > 100)されにくいことが問題。
対策は、①Head-elevated、②ダブル酸素、③DSI、④意識下挿管
酸素化が達成されれば、RSIは恐れすぎない。それほどに、RSIの初回成功率は高い。ただ、挿管後呼吸管理のために、筋弛緩状態はまずい場合は、やはり筋弛緩を使うRSI/DSIは避ける。

①Head-elevated position

呼吸不全でなくても酸素が上がりにくいとき、20°ヘッドアップするとSpO2が改善する。Sniffing positionの成功にもつながるのであらゆる患者に推奨。特に肥満患者や呼吸不全の患者。

究極は半座位での挿管。心不全などで高度の呼吸性アシドーシスがある患者では、仰臥位にすると劇的に病状が悪化するので、座位のまま挿管することもある。AWSを使用し、足台を使い頭側から、または患者の右側に立ち向かい合って(対面挿管)。

②経鼻×マスク、ダブル酸素

リザーバーマスクに加え、ネーザルカニュラをつけておきそちらも15L/minの酸素を流しておく。筋弛緩してマスクを外した後も、ネーザルからの酸素投与は継続(Apnic oxygenation 無呼吸酸素化)。
HFNCでもいい。こらならマスクいらないことも。

③PEEPによる酸素化

①②でSpO2改善しないときは、シャントが疑われ、PEEPが必要になる。
ジャクソンリースやNIVを装着し酸素化を目指す。ただ、それほどの低酸素の患者は不穏であることも多く、下記のDSIが必要になる。

④DSI Delayed sequence intubation

方法;呼吸を抑制しないが体動がなくなる程度の鎮静薬を先行投与→酸素化目標の達成→本格的な鎮静+筋弛緩→通常のRSIと同じ。RSIは「鎮静と同時に筋弛緩し換気しないで挿管する」先行投与する鎮静薬は呼吸を抑制しにくいものがよい。ケタミンやデクスメデトミジンが適している。

対象;低酸素による不穏があり、酸素化目標が達成されないがリザーバーマスクやNIVが受け入れられないとき。

⑤意識下挿管

方法;深い鎮静や筋弛緩せずに、フェンタニル+αによる浅い鎮静と咽喉頭麻酔で患者と対話しながら挿管する。

対象;重度の低酸素で、どんな方法でもPreoxygenationが成功しない。重度の呼吸性アシドーシスであり、自発呼吸によりギリギリpHが保たれている。これらはどちらも、深い鎮静や筋弛緩で呼吸が増悪し、心停止する可能性が高い。

フェンタニル;25〜100mcgをまず投与。高齢者はこれだけでかなり鎮静もされる。

咽頭喉頭麻酔;4%キシロカインと噴霧用シリンジを使用。説明しながら、舌根・後咽頭→声門と徐々に深めながら麻酔する。

必要あれば、浅い鎮静;ケタミンやデクスメデトミジンが使いやすい。心不全ではケタミンは避けたい。ミダゾラムやプロポフォールの少量でもいいが、呼吸をおとさないように。

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