オペレーションZ

日本国の借金が1000兆円に上るという事実は多くの人が耳にしたことがあると思う。でもなんとなく現実離れしすぎて、

「そうなんだー」「すごい額だな」「どうやって返すんだろ」

みたいなどこか他人事のような感想を抱き、

「まあきっとどうにかなるんだろう」

という楽観的な考えで、それ以上調べたり考えたりすることはなくなる。

「これはまずいぞ、今すぐ行動しないと自分にも大変なことが降りかかってくる」

と思って何かを始める人は、ほぼいないだろう。かくいう自分もこの手の話を聞いたときは、自分事として捉えることができなかった。

そんなある日、「国家予算を半減せよ」という帯の文字を見て興味をそそられ読んで見たのがオペレーションZである。

この小説は、生命保険会社の取りつけ騒ぎをきっかけに日本国債暴落の危機に直面した総理大臣と、その総理から特命任務を指示された財務官僚たちが財政健全化のため国家予算の半減を目指して奮闘する物語である。

この小説の面白さは、圧倒的なリアリティ。物語の中で発生する出来事や、閣僚たちの振る舞いなど、ノンフィクションかのようにリアルに描かれている。

財務大臣が国益よりも自分の保身に心血を注ぐ描写などは、きっと現実の大臣もこんな感じなんだろうなと思ってしまうし、こういうネット記事をみた気がしてしまうような、妙なリアルさである。

また物語の中で、ロシアが日本国債を買い集めて外交の道具にしようとしている、という話も出てくるが、私のような素人にはそんなことが可能なのか、また国債を売り浴びせられた時に、日本が全てを買い支えられるのかどうかはわからない。が、1つの究極的な外交手段として全く無くは無さそうだと感じる。またここではロシアではあったが、現実問題としては機関投資家がなんらかの出来事をきっかけに国債を売り浴びせた結果、国債暴落やハイパーインフレに繋がるというストーリーは、いつ実現してもおかしくないように感じる。

このようなリアルさが、日本の財政破綻はすぐそこに実在するのではないか、と読者に感じさせる要因でもある。

ではこの財政問題は、どうすれば解決されるのか。物語中では、本の帯にも書いてあったように国家予算を半減するために策を練るわけではあるが、国家予算の半減とは、社会保障費と地方交付税交付金をゼロにすることとほぼ等しいということで、どう考えても不可能なミッションである。このことからも日本の財政はもう手の施しようがないレベルに至っていると感じられるであろう。

本書は、私のような財政問題の素人に危機意識を植え付けるのには充分であると思うし、読み終える頃には万が一の時に備えてどのような準備をしておかなければならないのか、について調べるいいきっかけになるだろう。また、こんな大問題をフィクションではあるがどのように解決する方法があるのか、気になって思わず読み進めてしまい、一気に読み終えてしまうくらい面白い一冊であった。

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