「モノクロ」
数年前、年上の女性とお酒を飲んだ時の話。
お酒も入り恋愛の話になったので軽いノリで
「僕とかどうですか?」
「弟にしか見えへん」
一蹴された。
こんな質問しなければ良かった。
正式に告白をしていないのにフラれた気分に苛まれた。
私の恋愛戦績手帳を取り上げられ、勝手に黒星を付けられたような感覚だった。
すぐに忘れ去りたかった私は手帳に記されたばかりの黒星を消し去ることを試みた。
しかし、油性ペンで色濃く記されていた。
時すでに遅し。
今でも脳裏に深く刻まれている。
今後も忘れることはないだろう。
「恋愛対象として見ていない」
と一方的に突き放されたが、私だって恋愛対象として見ていない。
もっと言うと
(お姉ちゃんみたい)
とすら思ったことがない。
「弟にしか見えへん」
同じ扶養に入った覚えは一度もない。
赤の他人だ。
飲みの席での軽いノリを真に受けて頑なに拒まないでいただきたい。
様子見で軽くジャブを打っただけなのに、仕返しでがっつりボディブローを打たれた様な感覚だった。
リングにひれ伏す私。
(立て、立つんだユソン!)
名セリフのオマージュで自らを鼓舞するユソン。
ひれ伏したユソンを俯瞰で見ているユソン。
リング上に突如現れたユソンのマトリョーシカ。
マトリョーシカなのに結局立ち上がることは出来ず敗戦を喫した。
完膚なきまでに叩きのめされ黒星を喫した私の頭の中は真っ白になった。
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