僕は君たちに武器を配りたい

著 瀧本哲史

最近は、今の社会でどのように生きれば奴隷にならないか、かつ、それなりに充実度を得られるかに興味がある。そこで資本主義社会への理解度を上げてハックするために、この本を読んだ。結果的に内容はクリティカルで、良い本を読んだ時の一気に読んでしまう夢中感や、読んだ後の少し希望が満ちてポジティブになる感が得られてよかった。それだけで終わらせてはダメだが。

この本のキーワードは、スペシャリティ、コモディティで、どのような人材が資本主義社会において買い叩かれないか、をそれぞれマーケター、イノベーター、リーダー、投資家の4種類でまとめられている。これらはどれか一つになれば良いというものではなく、適材適所でそれぞれの能力を発揮することを求められている。

マーケターは、顧客の再定義を行い(新しい市場の発見)、今まで価値と捉えられてなかった既存の要素に価値をつける能力、イノベーターは、既存のものや概念を結合させることで、全く新しい価値を生み出す能力、リーダーは、多様な人を結集させて労働させる能力、投資家は、市場の歪みを発見して出資したり、金銭的な意味に限らず自身に長期的なリターンを見て投資できる能力、とされている。

また、儲ける能力としては他にも、利ざやを発見して移動させるトレーダーや、高い専門性をもつエキスパートがあげられているが、トレーダーは模倣可能性が高く、インターネットの普及によって利ざやが発生しにくくなっていること、エキスパートは、技術の発展速度の向上によりその専門性が必要なくなったり、需要の高い分野の移り変わりが早くなること、などの理由で推奨されていない。

各章を跨いで、情報を鵜呑みにしないこと、自分から新鮮な情報を取得すること、情報を咀嚼して理解し自分の考えと照らし合わせられる素養としてのリベラルアーツの重要性が語られていた。

感想としては、どの能力が差異を生むかを、4つのフォーマットに落とし込んで再利用しやすい形で理解させてくれたのが良かった。内容的にも、例が散りばめられていたりそもそも説明が上手で理解しやすく、ビジネス本にあるあるのビジネスのための食い物としての読者、という感じが無く信頼性がある。著者は数年前に急逝されていたのは記憶に新しいが、もしご生存であったならばこの方からさらにたくさんのエッセンスを頂きたかった。残念。

以上。

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