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加速器ってなんだ?(image: CERN)

(粒子)加速器は、電子や陽子などの小さな荷電粒子を、ほぼ同じ方向・エネルギーにそろえた粒子線ビームとして人工的に加速させる装置のことをいいます。

代表的な加速器として、スイス・ジュネーブにあるCERNが所有する大型ハドロン衝突型加速器(LHC; Large Hadron Collider)があります。

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https://mediaarchive.cern.ch/MediaArchive/Photo/Public/2005/0504028/0504028_01/0504028_01-A5-at-72-dpi.jpg

(image CERN)

写真にはトンネルの中にとても長い金属の筒が映っています。長さにしておおよそ 27 km あります。この筒の内部を、荷電粒子がものすごい速さで走らせるのが加速器という装置です。

ではなぜ、わざわざ電子や陽子などとても小さな粒子を加速させるのでしょうか。それには大きく分けて3つの目的があります。

一つ目は、加速されて大きなエネルギーを持つ粒子を止まっている標的にぶつける、または逆向きに加速させた粒子を正面からぶつけて、粒子を壊し、その中身を調べるというものです。

近年では、2013年ノーベル物理学賞があったヒッグス粒子が観測されました。ヒッグスは素粒子標準模型(スタンダードモデル)とよばれる枠組みのなかで一番最後まで、実験的にその存在が発見されなかった粒子でした。LHC では、その周の長さのためにより大きなエネルギーをもつ陽子どうしのビームを作ることができ、ヒッグスの観測に至りました。

ヒッグス以外にも素粒子原子核物理学分野における様々な実験のツールとして、加速器を用いた実験が行われています。その中には、宇宙の始まりを加速器の中で再現するような実験(クォークグルーオンプラズマ; QGP)などがあります。

二つ目は、加速させた粒子ビームを調べたいモノ(サンプル)にぶつけて、その反応を調べることによってサンプルの中身を調べるというものです。

例えば、ミューオンという電子に似たような粒子を集めて作ったビームを調べたいサンプルに照射し、そのスピンを測定することでサンプルが常磁性体か反磁性体を調べたりします(ミューオンスピン回転:μSR)。

また、粒子のエネルギーが大きいときには周囲に与えるエネルギーが小さく、停止するときに大きなエネルギーを周囲に与えるという特性を利用した加速器の医療用使用(放射線療法)のツールとしても使用されています。放射線療法はガンに対する治療法のひとつとなっています。

三つ目は、光速に近い速さまで加速した電子の軌道を曲げたときに放出される放射光を調べたいモノにぶつけて、その反応を調べることによってサンプルの中身を調べるというものです。

この放射光は波長がとても短く、ナノレベルの現象のメカニズムの解明や、タンパク質の構造解析に使用されます。その結果は、新たな効能を加えた医薬品の作成など創薬につながっていきます。

上に挙げたものは加速器の用途の一部ですが、様々な分野につながる最先端の装置であることが伝わりましたら幸いです。

今回はここまでです。お読みいただきありがとうございました。

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参考にしたWebページ

- 一般社団法人先端加速器科学技術推進協議会:http://aaa-sentan.org/
- 三菱重工|巨大な精密装置「加速器」:https://www.mhi.com/jp/expertise/showcase/column_0015.html
- 総研大:加速器科学専攻:加速器とは?(初級編):https://www2.kek.jp/accl/sokendai/kasokuki.html

画像元
CERN, LHC images gallery: https://home.cern/resources/image/accelerators/lhc-images-gallery

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