【試算】高コスト投信から低コスト投信に乗り換えないほうが良い場合もある

昔買った投資信託。最近の投信に比べるとコストが高い。
 「じゃあ、最近の低コスト投信に乗り換えよう!」
長期で考えるならば大抵は正しい選択となるが、場合によっては乗り換えないほうが良いこともある。

何故か?

乗り換えの際に通常発生する税金がその後の運用成果に影響するからだ。
乗り換えなかった場合、払うはずだった税金がさらに利益を生み出すことになる。
その利益は、
 乗り換え時点の含み益 × 税率 × 今後の運用利益率 × ( 1 - 税率 )
となる。
乗り換え時における含み益や今後期待される運用利益率が大きいほど乗り換えないほうが良いということになる。

模式図:課税を先延ばしにすることで稼げる利益

保有している投信を乗り換える場合、そのタイミングで税金(C)が発生する。
乗り換えずに運用を継続するとこの先延ばしにした税額(C)が運用益を生み続けることになる。
乗り換えないことによるアドバンテージは、先延ばしにした税額(C)が生む利益から税を控除した額(D)である。
これが乗り換えることにより期待される利益を上回るならば投信を乗り換えずにそのまま保有しておくほうが良いということになる。

以下、本年の時点ですでに含み益が生じている投信について、乗り換える【ケース1】と乗り換えない【ケース2】のそれぞれについて、X年後の運用における税引き後の成果を計算式で示す。

【ケース1】投信を乗り換える
手持ちの投信を一旦売却する際に税金(C)が発生し、乗り換え後は元本(A)+税引き後利益(B)で運用することになる。
X年後の運用成果は(A')+(B')となる(これに対してまた税金が生じる)
【ケース2】乗り換えずに運用を継続する
乗り換えずに運用を続けた場合、X年後の運用成果は(A')+(B')+(C')となる。
(A')+(B')に対する税金は【ケース1】と同じで、かつ、繰り延べしていた税金(C)も課せられる。(C)が生んだ利益に対しても税金(E)が生じる。
残る税引き後の利益(D)が【ケース1】に対するアドバンテージとなる。

「本年」時点でのリターン率をPとする。
つまり、(A) + (B) + (C) = (A) × P  となり、
(B), (C)は
(B) = (A) × (P-1) × ( 1 - 税率 )
(C) = (A) × (P-1) × 税率 と計算される。
ここで、
( (B) + (C) ) × 税率 = (C)
つまり
(B) × 税率 = (C) × ( 1 - 税率 ) である。

本年からX年後までのリターン率をQとする。
つまり、(A') = (A) × Q ,  (B') = (B) × Q ,  (C') = (C) × Q
以下、X年後の運用成果(税引き後)を計算する。

【ケース1】
税引き前成果 = (A') + (B') = ( (A) + (B) ) × Q
課税対象利益 = ( (A) + (B) ) × ( Q - 1 )
税引き後運用成果 = ( (A) + (B) ) × ( Q - ( Q - 1 ) × 税率 )

【ケース2】
税引き前成果 =  (A') + (B') + (C') = ( (A) + (B) ) × Q + (C) × Q
課税対象利益 =  (A') + (B') + (C') - (A)
      = ( (A) + (B) ) × (Q - 1 ) + (B) + (C) × Q
税引き後運用成果 = ( (A) + (B) ) × ( Q - ( Q - 1 ) × 税率 )
                  + (C) × Q × ( 1 - 税率 ) - (B) × 税率

つまり、ケース2のケース1に対するアドバンテージVは
V = (C) × Q × ( 1 - 税率 ) - (B) × 税率
   = (C) × Q × ( 1 - 税率 ) - (C) × ( 1 - 税率 )
   = (C) × ( Q - 1 ) × ( 1 - 税率 )
となる。
これは、納税を先延ばしにした税額(C)がX年間で生みだす運用利益から税を控除した額に等しい。冒頭に示した模式図における(D)に相当する。

すなわち、
投資信託を乗り換えることによって得られる利益がこの(D)を上回ることができるか?(期待できるか?)
が、乗り換えるべきかどうかを判断するポイントとなる。

以上、投信を乗り換えないことによるアドバンテージを式で示した。

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