受験勉強

頭良い人が通う塾なら頭良くなれるだろう、と言う安易な考えで行くことを決めた塾には合わず、形振り構っていられない、と、流行りの塾へ移った。自分の成績に見合ったクラスに振り分けられる鶴丸予備校に通うことは少々勇気のいることで、可も不可も無く、中間くらいの成績だった私も、隣町の中学校や勉強を目的とした同級生の中では最下位に近いだろうと予測はしていて、現実を突きつけられることに立ち向かえるのか心配していた。想像通り一番下のA-3(通称雑魚)クラスからのスタート。

受験のために通っていると言うよりは、親に勉強しなさいと言われて渋々来て、高校受験も塾に行かなくても行けるところで良いんだと言うような人ばかり。悔しさすら覚え、中学2年生の春はじめて、勉強に向き合うことになった。

鶴丸予備校では、通常の塾としても知られているが、学期ごとにスクーリングが行われており、年間復習のために春のスクーリングだけ通う生徒や、成績がたまたま落ちて、冬のスクーリングだけ、なんてピンポイントで通う生徒もいた。雑魚クラスだけは春のスクーリングで卒業する、その一心で授業を真剣に受けていた。

「今日、予備校から電話あったよ」

母の声があまりに暗くて、知らない間に悪さするほど落ちぶれてしまったのかとさえ思った次の瞬間、

「真面目に勉強に取り組まれています。中学受験の時に見られなかったやる気がとてもあって、とても頑張っています。ってお褒めの電話だったよ」

祖父母に頭が悪い、子供の出来が悪いのは百合園の血のせいだと言われ続けた母。職員室に呼び出されたり、お菓子を持って謝りに行ったり、が日常茶飯事になってしまっていた母が、はじめて他人から、それも勉強のことで褒められたのが嬉しかったのだろう、声が高ぶっていた。

雑魚クラスを総合3位で卒業し、中学校3年生になる新学期からはA-2クラスへの在籍となった。両親から指定されていた高校へ余裕に合格するならTOP、合格ラインに近いならA-1。春と同じ勉強法ではA-1クラスまで上がれない、と、授業がなくても毎日塾に通い始めた。

切磋琢磨する友人もでき、その頃にはわからないことを分からない、と質問もできるようになっていたし、勉強が楽しいとさえ思っていた。

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