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Hungry Beast

コントラバスを弾いているその大きな手を見るのが好きだ。

華奢で骨張っているその指が弦の上を滑るたびに、躰がゾクゾクと震えているのがわかった。

ーーその手に、その指に、抱かれたい…

ゴクリ…とツバを飲み込んだら、その音が思った以上に大きくて目の前にいる彼に聞こえてしまったのではないかと思って怖くなった。

彼は聞こえていないのか、コントラバスを弾き続けていた。

ーーよかった、聞こえていなかった…。

心の中でホッと胸をなで下ろしたら、彼はそれまで弾いていた手を止めた。

「どうしたの?」

私がそう聞いたら、
「気分が変わったんだ」

彼はそう言ってコントラバスをケースの中に片づけた。

それから私の方に視線を向けると、
「イイコトしないか?」
と、彼は手を差し出してきた。

それが何を意味するのかはわかっている。

ゾクゾクと震えそうになる躰と高くなる熱を感じながら、私は彼の手に自分の手を重ねた。


*あとがき
「密フェチ」って言う企画があって、それのために書き下ろしたショートストーリーを思い出して書いてみました。
原型はもう削除してしまったのでわからないけれど、こんな感じだったと思う…。
タイトルはスカパラの曲です(その時に聞いていた曲をつけたとも言う)