コロナ禍におけるエンタメ論。不要不急を愛する自由の話。

コロナ禍の自粛するしない問題で、エンタメは不要不急だからと活動を止めさせようとする人の多さに腹が立ったので、
エンタメ業界6丁目5番地くらいの末席にいた、中途半端に事情が分かるけど誰の顔色を伺う必要もない私が、好き勝手喋ってやろうと思ったのがこの記事の趣旨及び目的です。

重要ではないことですが、以下のうるさい文章の書き手の立ち位置から。
私は業界人ではありません。
過去に少しだけ音楽業界のアマチュアとセミプロの間にいたことがありますが、現在は全然違う仕事をしています。
一番好きなアーティストは安室奈美恵。
才能がなくて就職した、今は趣味で歌やダンスを続けながらライブやフェスに行くのを趣味にする一エンタメファンです。

納得して業界を離れて、今も各種エンタメが大好きでいられている身として、
「ライブやイベントの自粛なんてするな」
と、私は思っています。

アイドルやアーティストの寿命は大抵、とても短いです。

アイドルやアーティストは活動することで、多かれ少なかれファンがつきます。
尤も、そもそもファンが全然つかなくて早晩活動できなくなる人も多いです。
運良く活動が可能なくらいのファンに恵まれても、ファンの多くはずっとファンでい続けてはくれません。
ファンコミュニティに出入りしたり、エゴサしたりすると、
「現場上がるわ」「ヲタ卒するわ」
といって去る人は毎年かなりのペースでいます。
曲やパフォのクオリティが下がったり、スキャンダルで自爆したりしなくても、単純に飽きられることも多いですし、
家庭を持ったり、生活が忙しくなったりして、アーティストに関係のない要因で自然とライブに来なくなる人も多いです。
熱狂的なファンであっても、時が経つほどに熱が冷めるのは、冷たいことでも悪いことでもなく当然のことです。

だからアーティストはヒット曲を出して新規のファンを獲得しようとするし、
ヒット曲やタイアップ曲で認知度を獲得するとライブを行います。
ライブやファンクラブで満足度を高めて、ファンを離すまいともします。
活動はファンを飽きさせないためにも、新規ファンを取り込むためにも重要です。
他の仕事と同じで、音楽もビジネスですし、アーティスト本人も食べていくために色々考えて活動をしています。

それがコロナを理由として強制的に止められるのがどれほど厳しいことか。
これは業界経験がなくても、普通に分かると思います。

加えて、エンタメにおいては年齢が非常に重要な要素になります。
バンドもそうだし、アイドルは特に、1年や2年で勢力図がガラッと変わります。
年齢至上主義が良いかどうかは別として、アイドルなら17歳前後の勝負の年に精力的に活動できなくて、ファンを増やすチャンスを失う損失は計り知れないわけです。
大きなアイドルグループなら、ある一定の年齢以上になってしまえば、その下の世代のさらに若い子が推されますしね。

ここまで言うと、そんなん皮算用やん、本当に才能あるなら日の目を見るはずやん、どんなときでも売れる魅力がないのが悪い、と反論したくなる人も多いと思います。
それは正しいです。
が、芸能界でもその他の業界でも、
「『コロナを理由にした強制的な活動停止』で、彼ら彼女らのチャンスを外部から奪うことが、果たして許されてよいのか」
と、私は疑問に思います。

バンドがライブをやって、増えたファンにさらに新曲をリリースして、それがバズってヒットしたかもしれないなんて大抵は都合のよい妄想です。
握手会を数え切れないくらいやって、テレビや写真では魅力が伝わりきらない、神対応のアイドルが話題になって人気指標を上げたかもしれないなんて、皮算用もいいところです。

でも、そんな例は業界ではいくらでもあって、皮算用な機会をモノにすることで成功する人は多数派と言ってもいいです。
勿論、コロナ禍であれどなかれど、チャンスをもらえない人も多いです。
しかし、満足いく活動を社会とやらに奪われたまま年齢を重ねて、あったかもしれないチャンスが問答無用で失われることは、本人の納得や軌道修正等、その後の人生にも影を落とすことになると危惧しています。

正直、コロナであれ社会の潮目の変化であれ、今までのやり方でファンを獲得できなくなることや、市場規模が小さくなることは仕方ないと思います。
しかし、それが自然な変化ではなく、
「法的根拠すらない誰かの暴力による自粛という名の事実上の活動強制停止」
によるものである現状を、私は容認できないです。

そして、すでに見えていた利益と違い、自粛させられたことによる機会損失はどうやっても補償なんかできないという問題もあります。
なぜなら誰にも分からないからです。
お金の損失もですし、社会のために自粛しろと言われて従ったことで、エンタメに人生を賭けたい人の自由が奪われていることも、私は由々しきことだと考えています。

だから、精々2ヶ月程度の期間だけならまだしも、何の法的根拠もなく、半年以上もライブやイベントを止めるなんてあってはならないことだと思います。

エンターテインメントにおける年齢や機会の有限性は、一般人よりはるかにシビアです。
半年もライブやイベント、握手会ができなくて、その後の活動はどうなるのか。
勿論、色々な理由でファンを辞める、ヲタ卒する人がいるのと同じように、コロナを機に接触型、現場型のエンタメから足を洗う人が出てくるのは仕方ないと思います。
アーティスト自身が諦めてしまうこともあるでしょう。
それでもエンタメで生きていきたい人は、エンタメが大好きで大切なファンは、
自粛なんて絶対にしないで、大切なものを守らなければならないと思います。

エンタメは不要不急だとよく言われます。
勿論、そう思う人がいることは否定しません。
しかし、何もエンタメだけでなく、
世の中の大半の産業は誰かしらにとっては不要不急なわけで、エンタメなら活動の自由を奪ってもいいとジャッジするのは、明らかな差別であるとも思います。
私にとってエンタメは必要至急ですし、私なんかよりも余程強くそう考えている人が多いことを、私はよく知っています。
誰かの必要至急が私にとっての不要不急であることも、私の必要至急が誰かにとっての不要不急であることもあるという、当たり前の話です。
必要至急も不要不急も自分で選び取ればよいだけであり、お前のそれは不要不急だからやめろ!と言って奪う自由は誰にもないんです。

私はコロナを軽く考えることはできていません。
残念ながらちょっと我慢しただけで根絶できるものではないし、ワクチンも期待薄だと考えています。
だから、コロナのために、
アーティストやアイドルにもう二度とライブや握手会をやらせない社会か、
そのリスクを許容できる人たちだけで楽しむ社会か、
そのどちらかを選ばなければならないと思っています。

ライブや握手会は不要不急だからもうやるな、と言う権利が社会にあるのでしょうか。
私はないと考えています。
そうしたい人が多いなら、半年の間に法律を作ろうとくらいしましたよね。
現実には誰もそんなことしてません。
不要不急の産業は全部止めていいなんて法律を作ったらかなり多くの人が損をするし、
芸能や娯楽産業だけを止める理由をこじつけるのも、仮にも法律にするならそれなりに困難ですからね。

ライブにせよイベントにせよ、やりたい人と行きたい人だけで自由に楽しむ権利を奪われる理由はないんです。
だから私はライブが好きなら自粛はしてはいけないと思うし、一ファンとしても観に行き続けます。
不要不急を愛する自由を行使し続けたいと思います。

あらゆるエンターテインメントとクリエイター、表現者へ、応援と愛をこめて。
以上とします。

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