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うどん屋ののれんと、スキの無いふるまい

毎日通る道に、おいしそうなうどん屋がある。

自転車通勤の途中にあるその店は、本格派をうたい、清潔感も申し分ない。店頭に飾られているパネルには、つややかなうどんに、黄色というよりはオレンジの黄身をたずさえた半熟卵が、トロリと重ねられている。ガチャガチャとかき回してかきこめば、口の中に少なくない幸せが広がるだろう。

しかし何度お店の前を通っても、食べてみる気になれない。なぜか。本来「営業中」をあらわすはずの「のれん」が出しっぱなしなのだ。開店前からとか、閉店直後とか、そんな中途半端な話ではない。営業時間は11時〜20時ぐらいなのに、24時間、常にのれんがかかっているのである。

こまかい? こまかいですよね? でも気になるんです。

嵐が来たらどうするんだろうとか、修行した店ものれんをしまわなかったのだろうかとか、そもそもなにをあらわしているつもりなのだろうか、とかとかとか。なんかもうこの一点だけで、このお店にはたいしたこだわりもサービス精神も気配りもないんじゃないかと、そう判断してしまう自分がいる。大好きなうどん屋、神保町「丸香」ののれんが、すごく大事に扱われているのを見ているからなおさら。

ひるがえって、自分はどうか。自分の会社はどうか。

ぼくにとっての「のれんの出しっぱなし」が、誰かの場合は「メールの誤字」かもしれないし、「レベルの低いつぶやき」かもしれないし「シャツのしわ」かもしれない。何がきっかけで「こいつの作るものは大した事がないな」、「こいつはきっと仕事が甘い」と思われてしまうかわからないので、文字どおり一挙手一投足に手が抜けない。抜けないけど、すべてを完璧にと気をはっていては心がもたない……。

結局「ベストを尽くす」しかないという、何の示唆もない結論に達するわけなのですが、ひとつでも「こいつらはしょもない」と思われる可能性のある要素を減らすため、現在絶賛会社の公式サイトリニューアル中です。できあがったら、ここで自慢させてください。