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ある大企業がかつて使った「院落ち作戦」

先日、とある会社の人事の偉い人とご一緒しました。
50代に入ったばかりのその男性が昔やった
ゲリラ採用の手法が、大変興味深いものだったのでご紹介します。

ある年、秋になっても採用人数が予定の水準に達しておらず、
人事部みんなで頭をひねっていたときに出たアイデアだそうです。
その手法はのちに、「院落ち作戦」と名付けられることになります。

手順はこうです。
まず、目星をつけた大学の大学院試験の日程を調べます。
院試の結果が出るその日、学内に張り出される受験番号の
書かれた紙の前で、若い人事マンが待機し、
結果を見てうなだれている学生に
「どうしたの?」とやさしく声をかけます。
院試に落ちて目の前が真っ暗になっていることを確かめ、
「大変だったね。あっちの喫茶店に人生相談できる
おじさんが胸に赤いスカーフを差して座っているから、
たずねてごらん?」とうながし……。

あとはもう、わかりますよね。
そのまま面接をして、いい人材だったら、
すぐに内定を出してしまうのだそうです。

院試の結果が張り出されなくなったので
ほとんど使えなくなってしまった手法だそうですが、
効率のいい、極めてすぐれた採用手法だと思いました

学生は気が動転して判断力が落ち、
「親になんて言おう」というので
頭がいっぱいの状態だと思われます。
「落ちたのでもう1年お願いします……!」と言うのと、
「落ちたけど●●の内定もらったよ!」と報告するのとでは、
精神的ハードルが全く違います。
きっと簡単に入社を承諾してくれるでしょう。

また、院試を受けているぐらいだから、
他の会社の内定をもらっていることもないと思われます。
他社と取り合いになってコストがかかることもありません。

何より、ふたりが1日、大学に張りつけば出来て、
どこにも広告を打たなくていいのがすごいです。
この手法なら、超低コストかつ短スパンで、
狙った大学の人材を獲得できてしまいます。

ちょっと「あくどさ」すら感じてしまう作戦ですが、
どんな分野でも、常識にとらわれずアイデアを出し、
それを実行に移せば、解決できない課題などないのだと、
感じさせてくれる話でした。